「片足だけ腫れてきたけれど、血栓でしょうか?」
「足の血管に沿って赤く硬いしこりがあります。これは同じ血栓ですか?」
足の血栓を調べると、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、エコノミークラス症候群など、似た言葉がたくさん出てきます。
足の血栓で大切なのは、血栓がどの静脈にできたかです。皮膚に近い浅い静脈の血栓と、筋肉の中を通る深い静脈の血栓では、症状も確認することも異なります。
この記事では、足の血栓の種類、代表的な症状、原因やリスク、予防、医療機関で確認する目安まで、全体像を整理します。
- 血管に沿う赤い・硬いしこり:表在静脈血栓症のことがある
- 片足全体の急な腫れや痛み:深部静脈血栓症を含めて考える
- 息苦しさや胸痛を伴う:無理をせず、速やかに医療機関へ相談する
足の血栓は、できた場所で分けて考えます

血栓とは、血管の中で血液が固まってできる「血のかたまり」です。足の静脈にできる主な血栓は、次の2つです。
- 表在静脈血栓症(血栓性静脈炎):皮膚に近い浅い静脈の血栓
- 深部静脈血栓症(DVT):筋肉の中を通る深い静脈の血栓
表在静脈血栓症では、血管に沿った赤み、痛み、硬いしこりがみられることがあります。多くは深部静脈血栓症とは異なる経過をとりますが、位置や広がりによって対応が変わるため、必要に応じて超音波で確認します。
深部静脈血栓症では、片足の急な腫れや痛みがみられることがあります。深い静脈の血栓が肺へ移動すると、肺塞栓症になることがあります。
赤く硬いしこりについて詳しく知りたい方へ
表在静脈血栓症の症状、検査、治療については、以下の記事で詳しく説明しています。

下肢静脈瘤とDVTの関係を知りたい方へ
「静脈瘤があると深部静脈血栓症になるのか」「血栓が脳や心臓へ飛ぶのか」という疑問は、以下の記事で詳しく説明しています。

深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症

足の深い静脈に血栓ができた状態を、深部静脈血栓症(DVT)といいます。その血栓の一部が血流に乗って肺の血管を詰まらせた状態が、肺塞栓症です。
DVTでは片足の腫れや痛み、肺塞栓症では息苦しさや胸の痛みなどがみられることがあります。ただし、症状だけで判断できない場合もあります。
エコノミークラス症候群について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

深部静脈血栓症は太もも・ヒラメ静脈にもできる?
血栓は、太ももの大腿静脈や、ふくらはぎの筋肉内にあるヒラメ静脈(ヒラメ筋静脈)にもできます。できた場所や広がりで確認する内容や治療が変わるため、痛む場所だけで判断せず、超音波検査などで血栓の位置を確認します。[1]
すねの前側の痛みは、血栓が原因ですか?
すねの前側の痛みだけでは、血栓が原因かどうかは判断できません。運動量を増やした後や、同じ動作を繰り返した後の痛みでは、疲労骨折なども考えます。[3]片足の腫れや痛みの出方、手術や長時間動かなかったことなども合わせて確認します。[1]
ホーマンズ徴候で深部静脈血栓症は分かる?
ホーマンズ徴候は、ふくらはぎの痛みの反応をみる診察所見の一つですが、これだけで深部静脈血栓症を確かめたり、否定したりすることはできません。自己チェックの方法として使わず、症状やこれまでの経過を医師に伝え、必要な検査を受けることが大切です。[1,2]
深部静脈血栓症の治し方|治療はどう決める?
深部静脈血栓症では、血液を固まりにくくして血栓が大きくなるのを防ぐ「抗凝固薬」を使うことがあります。血栓の場所や広がり、症状、出血の危険性などによって方法が変わるため、治療を担当する医師が判断します。[1]
血栓が疑われる症状があるときの相談先は、後半の「症状に合わせて、相談先を選びます」で説明しています。
下肢静脈瘤の方によくある血栓の誤解
下肢静脈瘤で血栓が起こることはありますが、多くは皮膚に近い浅い静脈の血栓(表在静脈血栓症)です。
痛みを伴うことは多いものの、深い静脈にできるDVTとは異なる経過をとることが一般的です。血栓の位置や広がりによって確認する内容が変わります。
下肢静脈瘤とDVTの関係、血栓が脳や心臓へ飛ぶのかという疑問は、上の記事で詳しく説明しています。

深部静脈血栓症は、長時間動かない状態、手術や入院、けが、妊娠、薬剤、がん、過去の血栓症など、複数の要因が重なって起こることがあります。
長時間座り続ける場面では、時々足を動かす、水分を摂るなどが基本になります。弾性ストッキングは、すべての方が自己判断で履けばよいものではありません。血栓症の既往やほかの病気がある方は、使用する種類や圧について医師へ確認した方がよい場合があります。
ここでは、長時間同じ姿勢が続く場合と、ピルなどの薬剤に関連するリスクを中心に説明します。
長時間同じ姿勢(デスクワーク 在宅勤務 エコノミークラス等)のリスクと予防
長時間の座位などで下肢静脈の血流が滞ることは、血栓発症のリスクに関係することがあります。
予防の基本は、同じ姿勢を続けない、足首やふくらはぎを動かす、水分を摂ることです。弾性ストッキングについては、必要性や種類を医師へ確認した方がよい場合があります。
在宅勤務や長時間の移動で気を付けるポイントは、以下の記事で詳しく説明しています。

ピルを服用している方へ 血栓リスクはほかの条件も含めて考えます
「ピルを飲んでいるだけで、血栓ができるのではないか」と心配される方もいらっしゃると思います。
配合ピルでは、服用していない場合に比べて、静脈血栓症のリスクが概ね3〜4倍になると報告されています。[4]ただし、もともとの発症頻度は高くないため、ピルを服用した方の多くに血栓ができるという意味ではありません。
片足だけが急に腫れた、ふくらはぎの痛みが急に出た、息苦しさや胸の痛みがある場合は、ピルの副作用かどうかを自分で判断せず、医療機関へ相談を検討していいかと思います。
一方、症状はないものの血栓が心配という場合は、ピルを自己判断で中止せず、まずは処方した医師へ相談するとよいでしょう。
ピルと血栓症の関係、注意した方がよい症状については、以下の記事で詳しく解説しています。

補足 類似疾患(モンドール病、足の甲のしこり等)について

ここでは、下肢静脈瘤と似た症状を示すことがある「モンドール病」と「足の甲のしこり」などについて説明します。
「下肢静脈瘤のような症状はないけれど、足以外に違和感がある」という方は参考にしてください。
体幹(胸やお腹)に血管が浮き出る・索状のしこりがある モンドール病
モンドール病は皮下の静脈に血栓ができる「血栓性静脈炎の一種」です。
通常は自然に治癒することが多いですが、症状が長引く場合は精査が必要になることがあるため、一度は医師へ相談することが望ましいです。
モンドール病について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

足の甲が浮き出ている、しこり・痛み・痒みがある場合
足の甲の症状には、次のように複数の原因が考えられます。
- ガングリオン
- 静脈炎
- 腱鞘炎
- 外反母趾など
超音波検査で、ある程度は鑑別がつくことがあります。
足の甲のしこりや痛みがあっても、それだけで血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)が必要になるわけではありません。血栓があるか、ある場合には場所や広がりなどを確認し、必要性を判断します。[1]
足の甲の症状が気になる方は、以下の記事を参考にしてみてください。

症状に合わせて、相談先を選びます

血栓は種類によって対応する医療機関が異なります。
- 息苦しさ、胸の痛み、失神などを伴う場合:無理をせず、速やかに救急外来などへ相談
- 片足だけが急に強く腫れた、急なふくらはぎ痛がある場合:静脈瘤だけの症状と自己判断せず、DVTの検査や治療に対応できる総合病院などへ相談を検討する
- 下肢静脈瘤の血管に沿って赤み、痛み、硬いしこりがある場合:表在静脈血栓症について、静脈瘤を診る医療機関へ相談できる
胸やお腹の索状のしこり、足の甲のしこりなどは、血栓以外の原因もあります。症状が続き、判断が難しい場合は、該当する診療科で相談を検討してもよいでしょう。
参考文献・出典
[1] Kakkos SK, Gohel M, Baekgaard N, et al. Editor’s Choice – European Society for Vascular Surgery (ESVS) 2021 Clinical Practice Guidelines on the Management of Venous Thrombosis. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2021;61(1):9–82. doi:10.1016/j.ejvs.2020.09.023. https://doi.org/10.1016/j.ejvs.2020.09.023
[2] Ambesh P, Obiagwu C, Shetty V. Homan’s sign for deep vein thrombosis: A grain of salt? Indian Heart J. 2017;69(3):418–419. doi:10.1016/j.ihj.2017.01.013. https://doi.org/10.1016/j.ihj.2017.01.013
[3] Patel DS, Roth M, Kapil N. Stress Fractures: Diagnosis, Treatment, and Prevention. Am Fam Physician. 2011;83(1):39–46. https://www.aafp.org/afp/2011/0101/p39
[4] Stegeman BH, de Bastos M, Rosendaal FR, et al. Different combined oral contraceptives and the risk of venous thrombosis: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2013;347:f5298. doi:10.1136/bmj.f5298. 原文・出典
まとめ 足の血栓は、できる場所で対応が変わります
足の血栓は、皮膚に近い浅い静脈にできるものと、筋肉の中を通る深い静脈にできるものに分けて考えます。
赤く硬いしこりがある場合、片足全体が急に腫れた場合、息苦しさや胸の痛みを伴う場合では、考える病気も相談先も異なります。すべてを「静脈瘤の血栓」とまとめず、症状に合う医療機関を選ぶことが大切です。
下肢静脈瘤に沿う赤みや硬いしこりがある方へ
当院では、下肢静脈瘤のある血管に沿った赤み、痛み、硬いしこりなどについて、足の状態を診察し、超音波検査で静脈の逆流や血栓の有無・位置を確認します。
検査結果を踏まえて、静脈瘤に伴う浅い血栓が考えられるのか、経過を見る場合の注意点や治療についてご説明します。


