「ふくらはぎの血管がボコボコとしていて気になる」
そんな症状でお悩みではありませんか?
もしかすると、それは下肢静脈瘤かもしれません。
この記事では、下肢静脈瘤の種類や症状、最新の治療法について詳しく説明します。
下肢静脈瘤(バリックス)とは
はじめに、下肢静脈瘤について説明します。
下肢静脈瘤の読み方
下肢静脈瘤の読み方は「かしじょうみゃくりゅう」です。
また、バリックスと呼ばれることもあります。
下肢静脈瘤の症状|血管がコブ状になる
下肢静脈瘤は、静脈の瘤(コブ)と書くように足の太ももやすね、ふくらはぎ上の静脈が浮き出てボコボコとしたコブ状(ボコボコ血管)となり、曲がりくねる状態を指します。
進行した方では、ふくらはぎの一部にへこみがあるように見えることもあるものです。
症状としては足のだるさ、こむら返りが代表的ですが、実際には非常に多くの症状を起こします。
詳しくはこちらの記事↓をご覧ください。
下肢静脈瘤になる原因
下肢静脈瘤は、足の静脈の中にある逆流防止弁が壊れることで、本来であれば血液を足から心臓に運べていたものができなくなってしまい、血液が逆流している状態が原因で起こるものです。
次のようなものが原因となることが知られています。
下肢静脈瘤の種類|症状と適切な治療法や対処法
ここからは、下肢静脈瘤の種類について紹介します。
下肢静脈瘤の種類は、おもに以下の5種類です。
それぞれ説明します。
伏在型静脈瘤(ふくざいがたじょうみゃくりゅう)
伏在型静脈瘤は、大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)もしくは小伏在静脈(しょうふくざいじょうみゃく)が拡張して血液が逆流することで生じます。
もっとも典型的な静脈瘤の1つで、脚の内側から大腿部、もしくは下腿後面、ふくらはぎにかけて見られるものです。
放置すると皮膚炎や色素沈着、硬化(皮膚が硬くなる)、皮膚潰瘍(ひふかいよう 皮膚に穴があくこと)を引き起こすことがありますので、静脈内の逆流がはっきりと認められ、症状がある場合はカテーテル治療を検討します。
側枝型静脈瘤(そくしがたじょうみゃくりゅう)
側枝型静脈瘤は、大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)や小伏在静脈(しょうふくざいじょうみゃく)から枝分かれした血管で起こる静脈瘤です。
血液の逆流量はそれほど多くなく、症状はそれほど重篤にならないことがよくあります。
カテーテル治療でなく、硬化療法や弾性ストッキング(着圧ソックス)での治療を検討します。
網目状静脈瘤(あみめじょうじょうみゃくりゅう)
網目状静脈瘤は、直径が3ミリ以下の静脈が拡張したもので、青く浮き出た静脈が網目状に透けて見えます。
症状の重い方では足の太ももやふくらはぎ、くるぶしが紫色に見えることもあります。
なぜ紫色に見えるかというと、青や赤の血管が沢山集まることで、その色が混ざり合うためです。
初期は見た目の問題として認識されますが、時にふくらはぎなどの皮膚がチクチク、ジンジン、ピリピリする場合や、灼熱感(熱くなる)をもつこともあります。
蜘蛛巣状静脈瘤(くものすじょうじょうみゃくりゅう)
蜘蛛巣状静脈瘤は、直径が1ミリ以下の非常に細い毛細血管が拡張し浮き出てきたもの(足の毛細血管拡張症)で、赤い糸のように透けて見えます。
こちらも通常、初期は見た目の問題として扱われることが多いですが、皮膚のピリピリ感や灼熱感(熱くなる)をともなうことがあるものです。
陰部静脈瘤(いんぶじょうみゃくりゅう)
子宮や卵巣の血管から発生する静脈瘤で、女性特有のものです。
普通の静脈瘤と違って、お腹の中の卵巣や子宮周囲から発生するため、生理で卵巣や子宮にいく血液が増えると症状が強くなります。
このため、生理中に足の浮腫み(むくみ)や足・太ももの血管が痛いなどの疼痛が出現することが多いのが特徴です。
布団の中で温まると症状が出現することもあり、布団に入ると痛みや痒みを自覚することもあります。
典型的には太ももの後ろに見られることが多く、自分では気づかないケースも多々あり、マッサージや整体などで初めて指摘されて受診にいたることも多いです。
血管が曲がりくねっているケースが多く、太ももの後ろの血管に血栓ができる、あるいは繰り返すこともよくあります。
他には、寝ている時に太ももの裏側がつる症状が見られることもあるようです。
妊娠中に発生するケースでは陰部(いんぶ おまたのこと)、足の付け根の血管が膨らみ、陰部に湿疹やしこり、腫れぼったい症状が出てくることがあります。
ほとんどの症例で硬化療法が有効です。
なお「陰部潰瘍が治らない」と受診される方がときどきいらっしゃいますが、陰部静脈瘤では通常、潰瘍が起こることはありません。そのため、ベーチェット病や梅毒など他疾患の可能性を考えます。
下肢静脈瘤の治療方法|メリット・デメリットもご紹介
下肢静脈瘤の治療には、以下の方法があります。
それぞれメリットやデメリットがありますので、最適な治療方法を選択する必要があります。
ストリッピング手術
「ストリッピング」とは「抜去する」という意味で、静脈の中に細いストリッパーというワイヤーを入れて、静脈と糸で結び、静脈を抜き取る手術のことをストリッピング手術といいます。
静脈を抜き去る時に強い痛みをともなうため、多くの場合は下半身麻酔(もしくは全身麻酔)をして行う手術です。
通常、3日程度の入院が必要となり入院日数分の費用もかかります。
高位結紮術/高位結紮法
足のつけ根で静脈を糸でしばる手術です。
局所麻酔でできるため日帰りで行うことができますが、比較的再発が多い治療となります。
瘤切除術
皮膚を切開して、瘤を取る方法です。
おもにカテーテルが入らないような部分に対して行われる手術で、スタブ・アバルジョン(Stab avulsion)法という方法を行うことがあります。
しかしながら、硬化療法でも治療が可能なことも多いうえ、近年では瘤焼灼術といって、カテーテル治療の進化により、従来治療が難しかった部分に対してもカテーテルでの治療ができるようになってきているのが現状です。
そのため、専門家は瘤切除術よりも瘤焼灼術を選択するようになりつつあります。
以上のような切開をともなう治療は乱暴な手術という印象を感じるかもしれませんが、ストリッピング手術は2011年にカテーテルでの治療が保険認可されるまでは主流の治療法で、治療成績も確立した治療でした。
実際、私自身も2013年頃までは多くの静脈瘤の患者さんをこれらの手術で治療していました。
これらの手術を行う経験を通して下肢静脈の解剖を深く理解したことが、現在主流で行っているカテーテル治療の技術にも多くの恩恵を与えていると感じています。
カテーテル治療|最新の療法はこれ!日帰り手術が可能
現在では、このカテーテル治療がおもに行われています。
カテーテルとは「体内に挿入して、検査や治療などを行うための柔らかい細い管」のことです。
カテーテルから以下の治療法があります。
レーザーまたは高周波を出して静脈瘤を治す治療(血管内焼灼術)
カテーテルよりレーザーまたは高周波を出すことで血管を縮め、逆流を止める治療です。
治療効果は高く、安全性も極めて高いため、現在では静脈瘤の標準的な治療となります。
片足15分程度で終わり、そのまま歩いて帰れる点がメリットです。
お薬(ベナシール)を使った治療(血管内塞栓術 通称グルー治療)
カテーテルより医療用のアロンアルファのような瞬間接着剤(ベナシール)を出して、逆流を止める治療です。
レーザーや高周波のような熱を使用しないため、さらに痛みが少なく、レーザーでは治療ができなかった部位にも治療ができます。
基本的に弾性ストッキングを術後に履く必要がなく、患者様の負担が非常に小さい点がメリットです。
ただし、アレルギー体質の方にはむかないことがあります。
硬化療法
硬化療法とは、硬化剤(ポリドカスクレロール)を血管内に注射することで血管を縮め、逆流を止める治療です。
カテーテルが入らないような細い血管や複雑な形態の血管、軽症の静脈瘤、陰部静脈瘤に適した治療になります。
注射をするだけなので、カテーテル治療よりもさらに簡便です。
喘息などのアレルギー体質の方にはむかないことがあります。
弾性ストッキング/弾性包帯による圧迫療法
静脈瘤の治療は手術が唯一の治療ではありません。
静脈の状態と、患者様のご年齢や状態によっては圧迫療法が最適なこともよくあります。
手術に抵抗がある方でも弾性ストッキングは使用が可能です。
できれば、初回だけでも弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターに状態を適切に見極めてもらい、適切な医療用弾性ストッキングを選んでもらうのがよいでしょう。
下肢静脈瘤は最適な治療のために専門医の受診をおすすめします
下肢静脈瘤はさまざまな種類があるため、正確な診断がとても大切です。
できれば専門医を一度受診して、治療の必要性も含めて確認すること、治療が必要な場合は一番適した治療を行うことが再発の可能性を下げ、足の健康を守ることとなります。
当パレスクリニックでは、静脈瘤の専門医がていねいに診察します。
またもしも治療が必要な場合でも、最先端の手術によりすべて日帰り手術が可能です。
少しでも心配な症状がおありでしたら、まずは一度お気軽にご相談ください。