下肢静脈瘤でやってはいけないこと|放置するとどうなる?受診目安も解説

下肢静脈瘤かもと思ったら

「下肢静脈瘤でやってはいけないことは何か」「このまま放置しても大丈夫か」と不安に感じている方もいると思います。

結論から言うと、下肢静脈瘤があるからといって日常生活のすべてを制限する必要はありません。ただし、長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを続けること、原因が分からないまま赤く腫れて痛む部分を強く揉むこと、皮膚の傷や出血をそのままにすることには注意が必要です。

下肢静脈瘤そのものが脳梗塞や心筋梗塞、足の切断に直結することは通常ありません。一方で、放置するとむくみやだるさ、湿疹、色素沈着、皮膚潰瘍、表在性血栓性静脈炎などが起こることがあります。

また、突然の片足の腫れや息苦しさは、下肢静脈瘤だけが原因とは限りません。このような症状がある場合は、自己判断だけで様子を見続けず、症状に応じて医療機関への相談を検討することが大切です。

この記事では、下肢静脈瘤でやってはいけないこと、放置した場合に起こりうる変化、受診を考えたい症状について解説します。

動画解説もしておりますので、よければご覧ください。

なお、下肢静脈瘤の原因や予防、放置した場合の変化、受診の目安など、静脈瘤についての全体像についてはこちらの記事でまとめております。全体像を把握したい方は参考になります。

下肢静脈瘤でやってはいけないこと5つ

下肢静脈瘤では、運動や入浴などを一律に禁止する必要はありません。日常生活では、次の5つに注意してください。

1.長時間の立ちっぱなし・座りっぱなし

同じ姿勢を長時間続けると、足のだるさやむくみが強くなることがあります。

仕事などで避けられない場合は、合間に少し歩く、足首を動かす、かかとを上げ下げするなど、こまめにふくらはぎを動かすことが大切です。

2.赤く腫れて痛む部分を、原因が分からないまま強く揉む

血管が急に赤く腫れる、熱を持つ、触ると硬く痛むといった症状には、血栓などの可能性もあります。ただし、見た目や症状だけで原因を判断することはできず、診察による確認が必要です。

当院を受診される方では、診察の結果、血栓が確認されることがあります。症状や状況によっては、総合病院へ相談した方が安心な場合もあります。

原因が分からない段階では、痛みのある部分を無理に強く揉むことは控えた方がよいでしょう。症状が気になる場合は、かかりつけ医や血管外科、状況に応じて総合病院への相談をご検討ください。

3.かゆみや湿疹を掻き壊し、傷をそのままにする

下肢静脈瘤が進行すると、足首周辺にかゆみ、湿疹、色素沈着などが現れることがあります。

掻き壊して傷ができると、出血や感染のきっかけになることがあります。湿疹が続く、皮膚が黒くなる・硬くなる、傷が治りにくいといった変化が気になる場合は、医療機関への相談をご検討ください。

4.静脈瘤からの出血をそのままにする

出血した場合は、清潔なガーゼやタオルを当て、出血部位を直接しっかり圧迫します。可能であれば横になり、足を高くしてください。

圧迫しても出血が止まりにくい場合や、ふらつき、顔色不良などがある場合は、医療機関での対応が必要になることがあります。症状が強い場合は、総合病院の受診も選択肢になります。

5.突然の片足の腫れや息苦しさを、静脈瘤だけの症状と考える

突然、片足だけが強く腫れる、痛む、赤くなるといった症状は、深部静脈血栓症など、通常の下肢静脈瘤とは別の病気でも起こることがあります。

また、胸の痛み、突然の息切れ、呼吸困難などがある場合は、肺血栓塞栓症など緊急性のある病気との区別が必要になることがあります。

「静脈瘤だから」と自己判断だけで様子を見続けず、症状が強い場合や急に悪化した場合は、早めに医療機関への相談を検討してもよいかと思います。

下肢静脈瘤とは?

まず、足の中で何が起きている状態なのか理解できると放っておいた場合に起こりうる変化も想像しやすくなると思います。

下肢静脈瘤とは、静脈の瘤(コブ)と書くように足の静脈が浮き出てコブとなり、曲がりくねる状態を指します。

これは、足の静脈の中にある逆流防止弁が壊れることが発症し、血液が逆流している状態になっています。長時間の立ち仕事や座り仕事、遺伝、肥満、妊娠などが原因となることがあります。

実際に下肢静脈瘤を放置することで起こるリスクについて

実際に下肢静脈瘤を放置することで起こるリスクについて、臨床の現場で実際に私が経験してきた「患者さんが不安になりやすい点」を順に何が起こりにくいか、何が起こりうるか等、確認していきたいと思います。

下肢静脈瘤は決して恐ろしい病気ではなく、状態に合わせた治療や対策で症状の改善が期待できる病気です。

また、血栓ができて脳や心臓に詰まってしまったり、足を切断しなければならないといったことは、下肢静脈瘤そのものが直接の原因として起こるケースは多くありません

下肢静脈瘤の血栓が脳梗塞・心筋梗塞に直結することは通常ない

下肢静脈瘤で血栓が起こることは確かにあります。

下肢静脈瘤でみられる血栓は、皮膚に近い表在静脈にできる血栓性静脈炎が中心です。脳梗塞や心筋梗塞は主に動脈で起こるため、静脈の病気である下肢静脈瘤がこれらの病気に直結するわけでは通常ありません

一方、深部静脈血栓症では血栓の一部が肺に流れ、肺血栓塞栓症を起こすことがありえます。突然の片足の強い腫れや痛み、胸の痛み、息苦しさがある場合は、通常の下肢静脈瘤とは別の病気との区別が必要です。症状が強い場合や急に悪化した場合は、早めに総合病院へ受診を検討することが大切です。

静脈瘤と血栓は混合されやすいので、血栓の種類や合併症がどの程度の頻度で起こるのかを別記事で補足しております。

実際に静脈瘤をお持ちの方が脳梗塞や心筋梗塞になることはありますが、通常は下肢静脈瘤が直接の原因というわけではありません。

下肢静脈瘤の皮膚潰瘍が直ちに足の切断につながるわけではない

静脈瘤を放置し続けると、皮膚炎や色素沈着、硬化(皮膚が硬くなる)さらに下腿潰瘍(※)が起こってしまうことがあります。

潰瘍とは、皮膚の表皮(表面の皮)だけでなく、その下にある真皮にまで障害が起きて、皮膚に穴が開いてしまう状態です。

一見すると足が壊死しているように見えるため、放置したら足を切断するのではないか、と誤解してしまう方がいるようです。

下腿にできる壊死や潰瘍の原因には動脈性と静脈性があります。壊死や潰瘍が心配な方は動脈性か静脈性かで大きく病態が異なるため、先に違いを確認しておくとよいかと思われます。

↓動脈と静脈の違いについてはこちらをチェックしてみてください

動脈性の壊死・潰瘍は主に重症の糖尿病や閉塞性動脈硬化症(足の動脈硬化)により起こるもので、これらは確かに足を切断するケースがありますが、静脈性の壊死・潰瘍が直接の原因で足を切断するケースは多くありません。

ただし、潰瘍から細菌が入ってしまったり、潰瘍が骨にまで達し骨髄炎(骨の感染症)を起こしたようなケースでは切断する可能性があるかもしれません(極めて稀)。
※下腿潰瘍(読み方 かたいかいよう:足の皮膚に発生する穴のこと)

下肢静脈瘤を放置しなくてよかった/後悔したケース3選

下肢静脈瘤を放置することで命に関わることは基本的にありませんが、中には早めに治療しておけばよかったと思われるケースもあります。放置してよいかどうかは症状の強さと皮膚症状の有無などでも大きく変わってきます。

ここでは、患者さん自身が「早めに治療すればよかった」と後悔したケースを3つご紹介していきましょう。

実際に血栓ができたケース(血栓性静脈炎) 血管が腫れる・痛い

静脈瘤が原因で深い血管に血栓ができること(深部静脈血栓)ができることはありますが、かなり稀です。

それよりも浅い血管に血栓ができること(血栓性静脈炎)が時々あります。静脈瘤が足の血管が詰まる病気と言われる所以でもあります。

浅い血管にできる血栓は多くの場合、直ちに命にかかわるものではありませんが、血管に沿った痛みや腫れが起こります。今まで痛くなかった浮き出ている血管が腫れる、痛い場合は血栓が起きた可能性を疑います。

足が痛くて寝れない、早めに治療しておけばよかった、とおっしゃる患者さんが多いです。

ホルモン剤や抗がん剤を必要とする疾患になってしまった時

内服したままでは静脈瘤の治療ができない飲んではいけない薬があります。治療を考えるタイミングになってから慌てないために事前に確認しておくと安心です

↓飲んではいけない薬はこちらをチェックしてください

このような薬が必要になることはよくあります。生涯で日本人の2人に1人がなんらかの癌になることを考えれば、決して関係のない話ではありません。

健康な人に静脈瘤があっても怖くはありませんが、癌や基礎疾患のある方、入院・手術をせざる得ない状況の方などの場合は血栓症のリスクも上がり、弱り目に祟り目になることがあります。

このようなケースでも、もっと早めに治療しておけばよかった、と言われることがよくあります。

足の傷から細菌が入ってしまった時(蜂窩織炎/丹毒)

足の小さな傷や皮剥けから細菌が入って、足が赤く腫れ上がる病気があります。

↓足が赤く腫れる原因についてはこちらをチェックしてみてください。

抗生剤の内服、重症の場合は入院での点滴が必要になります。治療により改善しますが、静脈瘤がある方の場合は重症化しやすかったり、再発を繰り返しやすくなります(再発性丹毒)。

鼠径部にあるリンパ節が腫れるため、「太もものリンパが痛い、早く治療すればよかった」とおっしゃる方が多くおられます。患者さんによっては、再発するたびに入院を繰り返すことがあるため非常にやっかいです。

下肢静脈瘤を放置すると?症状が進行するとどうなる?

下肢静脈瘤は多くの場合、直ちに命に関わる病気ではありませんが、自然に元の状態へ戻ることは通常なく、少しずつ症状が進行する場合があります。

進行すると足のむくみ(浮腫)やだるさなどの自覚症状が強くなり、日常生活に影響を及ぼすことがあります

下肢静脈瘤の治療は逆流の場所や症状で選び方が変わります。選択肢の全体像については、こちらが参考になります。

よくある質問

運動や入浴はしてはいけませんか?

下肢静脈瘤があるという理由だけで、運動や入浴を一律に禁止する必要はありません。ウォーキングや足首の運動などでふくらはぎを動かすことは、足の静脈還流を助けます

治療直後など、医師から個別の制限を受けている場合は、その指示を優先してください。

静脈瘤から出血したときは、まず何をすればよいですか?

清潔なガーゼやタオルを出血部位に当て、直接しっかり圧迫してください。可能であれば横になり、足を高くします

圧迫しても出血が止まりにくい場合や、ふらつき、顔色不良などがある場合は、医療機関での対応が必要になることがあります。症状が強い場合は、救急相談や救急受診も選択肢になります。

出血が止まった場合も、今後の再出血が心配な方は、早めに医療機関へ相談すると安心です

まとめ|下肢静脈瘤でやってはいけないことと受診の目安

下肢静脈瘤では、長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを続けること原因が分からないまま赤く腫れて痛む部分を強く揉むこと皮膚の傷や出血をそのままにすることには注意が必要です。

多くの場合、直ちに命に関わる病気ではありませんが、痛み、むくみ、かゆみ、湿疹、色素沈着、治りにくい傷などが気になる場合は、医療機関への相談を検討してよいかと思います。

また、突然の片足の強い腫れや胸の痛み、息苦しさは、通常の下肢静脈瘤とは別の病気でも起こります。症状が強い場合や急に悪化した場合は、早めに総合病院などの受診を検討してよいと思います。

治療を受けるかまだ決めていない段階でも、下肢静脈瘤かどうか、治療が必要な状態かを確認するための相談で問題ありません。下肢静脈瘤の状態を確認するには超音波検査が必要なため、私は初診時に必ず超音波検査を行い、その結果をもとに治療の必要性をご説明しています。

私の診療経験では、相談された時点の状態にかかわらず、「相談してよかった」とお話しくださる方がいます。治療が必要だった方からは想像より負担が少なかった、治療が不要だった方からも現在の状態が分かって安心したという感想をいただくことがあり、治療が必要か分からない段階で状態を確認することにも意味があると考えています。

この記事を書いた人
春山興右

このブログでは、日々の診療の中で感じたことや、患者さんから実際によくいただく質問などをもとに書き始めました。
教科書的な内容はもちろんですが、本には書かれていない、現場で診療を続けていて初めてわかる知恵や皆さんが知りたいと感じることを、素朴に、わかりやすくお伝えしていけたらと思っています。

静脈瘤の診療は、国内外で取り組んできた医療ボランティア活動と並んで、私にとっては大切なライフワークであり、生きがいのような存在です。
ところどころ熱が入りすぎてしまったり、至らない点も多いかと思いますが、どうか温かい目でご覧いただけたら嬉しいです。

資格は、脈管専門医・指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医、皮膚科専門医、男性ストッキング・圧迫療法コンダクターなどです(治療者兼当事者であり、毎日弾性ストッキングを履いています)。
よろしくお願いしますm(_ _)m

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