下肢静脈瘤の硬化療法とは?注射治療の効果・費用・デメリットを専門の医師が解説

下肢静脈瘤の硬化療法について、注射治療の効果・費用・注意点を伝えるアイキャッチ画像 下肢静脈瘤の治療法と選び方

「下肢静脈瘤には注射で治す方法があると聞いたのですが、本当ですか?」

「手術をせず、注射だけで治療できる人もいるのでしょうか?」

診察では、このようなご質問をいただくことがあります。

硬化療法は、静脈瘤の中に薬を注射し、問題のある血管を閉じて目立たなくしていく治療です。切開を必要とせず、短時間で行えることが多い一方、すべての下肢静脈瘤に同じように向いている治療ではありません。

細い血管や枝分かれした血管にはよい選択肢になることがありますが、太い血管に逆流がある場合は、レーザー・高周波・グルーなど別の治療が適することもあります。そのため、見た目だけで「注射で治せる」と決めず、エコー検査で血液の流れと原因となる血管を確認することが大切です。

この記事では、下肢静脈瘤の硬化療法について、向いている静脈瘤、治療の流れ、回数、費用、デメリットまで、下肢静脈瘤を専門に診療している医師の立場からわかりやすく解説します。

この記事の結論
硬化療法は、カテーテルが入りにくい細い血管や枝分かれした血管などに向くことがあります。ただし、どの血管をどの方法で治療するかは、太さだけでなく、逆流の場所や血管の形をエコー検査で確認して決めます。

下肢静脈瘤の硬化療法とは

硬化療法の適応を判断するために脚の状態を確認する診察のイメージ
硬化療法の適応は、診察とエコー検査で確認します。

硬化療法は、静脈瘤の中へ「硬化剤」という薬を注射する治療です。薬が血管の内側に作用すると、その血管は閉じて、時間をかけて細く、目立ちにくくなっていきます。

「血管を閉じてしまっても大丈夫なのですか」と心配される方もいます。硬化療法で閉じるのは、足の血液を戻す中心となる正常な深部静脈ではなく、診察やエコー検査で治療対象と判断した静脈です。治療対象の静脈を閉じると、その血管を流れていた血液は、ほかの正常な静脈を通って心臓へ戻ります。逆流の原因となる血管を治療した場合には、むしろ静脈のうっ滞の改善が期待できます。適切な範囲に治療を行えば、通常、治療によって足全体の血流が悪くなることはありません。

治療直後に血管が完全に見えなくなるわけではなく、閉じた血管が落ち着き、目立ちにくくなるまでには時間がかかります。

日本では、下肢静脈瘤の硬化療法にポリドカノールという成分の薬が使われています。血管の太さや形に応じて薬の濃度や量、液状で使うか泡状にするかを選びます。

硬化療法はどのような静脈瘤に向いている?

脚の表面に見える静脈瘤を確認する様子
同じように見える静脈瘤でも、原因となる血管や適した治療は異なります。

硬化療法が選択肢になることがあるのは、主に次のような静脈瘤です。

  • 皮膚の近くに細く広がるクモの巣状静脈瘤
  • 青紫色の血管が網目のように見える網目状静脈瘤
  • 太い静脈から枝分かれして浮き出た側枝静脈瘤
  • カテーテルを入れにくい、細い血管や曲がりくねった血管
  • 過去に治療した後、別の経路から再び目立ってきた静脈瘤
  • 一部の不全穿通枝(表面の静脈と深い静脈をつなぐ血管に逆流があるもの)

不全穿通枝には、カテーテルを用いたレーザー治療が選択肢になることもあります。当院では、血管の太さや形を確認し、複数の治療法を比較したうえで、硬化療法で十分な効果が見込める場合には、体への負担や費用も考慮して硬化療法を選ぶようにしております。

私が診察で特に大切にしているのは、表面に見えている血管だけで治療法を決めないことです。同じように見える静脈瘤でも、原因となる逆流の場所や血管のつながり方は異なります。

硬化療法のよいところは、切開せずに行えるため、カテーテル治療以上に傷が目立たず、複雑な形の血管にも注射で対応できることです。

一方、クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤については、血管の太さや色、場所によってYAGレーザーが向く場合もあります。細い赤・青・紫の血管が気になる方は、硬化療法とYAGレーザーの違いをまとめた記事も参考にしてください。

太い血管に逆流がある場合は?

大伏在静脈や小伏在静脈と呼ばれる太い血管の本幹に逆流がある場合は、通常、レーザー、高周波、グルーなどのカテーテル治療を検討します。フォーム硬化療法が選択肢になる場合もありますが、伏在静脈本幹に対する一般的な第一選択ではありません。

治療方法は、血管の太さ、曲がり方、逆流の範囲、持病、服用している薬、治療後の過ごし方などを踏まえて選びます。治療できることと、その方にとって最も適した方法であることは同じではありません。

注射治療を希望されていても、エコー検査の結果によってはカテーテル治療をお勧めすることがあります。反対に、見た目ほど大きな逆流がなく、今すぐ治療を必要としない場合もあります。

硬化療法以外の治療も含めて全体像を知りたい方は、次の記事でレーザー・高周波・グルー・硬化療法の違いをまとめています。

現在はフォーム硬化療法が中心です

フォーム硬化療法は、液体の硬化剤を細かな泡状にして注射する方法です。泡にすることで薬が血液に薄まりにくくなり、治療する血管の内側へ接触しやすくなります。

現在、側枝静脈瘤や不全穿通枝などの硬化療法では、フォームが選ばれることが多くなっています。当院でも、硬化療法はフォームを中心に行っており、液状のまま使用することはほとんどありません。

一方、とても細いクモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤では、液状硬化療法が選ばれることもあります。液状硬化療法がなくなったわけではありませんが、今回の記事では当院で主に行っているフォーム硬化療法を中心にご説明します。

フォーム硬化療法では、過去の病気や体質によって注意が必要です。治療方法はご本人の希望だけで決めるのではなく、問診とエコー検査を合わせて検討します。

診察から硬化療法、帰宅までの流れ

治療の流れ
問診・診察 → 下肢静脈エコー検査 → 注射(通常約10分)→ 圧迫して帰宅

1.問診と診察

まず、気になっている症状や血管の場所を確認します。以前に下肢静脈瘤の治療を受けたことがある方は、治療した時期や方法がわかればお伝えください。現在服用している薬、アレルギー、喘息、血栓症などの病歴も治療方法を決める大切な情報です。

2.下肢静脈エコー検査

足の表面に見える血管だけでは、静脈瘤の原因を十分に判断できません。当院では通常、超音波検査で深いところに血栓がないか、どの静脈に逆流があるか、原因となる血管がどこにつながっているかを確認します。

ここで、硬化療法が向いているのか、別の治療がよいのか、そもそも治療が必要なのかを判断します。

3.治療内容の説明と注射

治療する血管に合わせて薬の濃度と量を決め、主にフォーム状にして使用します。医師が細い針を静脈瘤の中へ入れて薬を注射します。処置時間は、通常1回約10分が目安ですが、治療する範囲や血管の数によって異なります。

注射なので針を刺す痛みや、薬が入るときの刺激を感じることはあります。「まったく痛くない」とは言えませんが、皮膚を切開せず、注射で行える治療です。

4.圧迫と帰宅

治療後は、治療した血管を弾性包帯または医療用の弾性ストッキングで圧迫します。状態を確認して歩行し、その後に帰宅するのが一般的です。

圧迫の期間や入浴・運動の再開時期は、治療した血管や範囲によって異なります。自己判断で圧迫をやめず、治療時の説明に従ってください。

硬化療法は何回必要?効果はいつ分かる?

当院では、硬化療法は多くの方が1回で終了し、2回以上の治療が必要になる方はかなり少数です。ただし、治療する範囲が非常に広く、1回に安全に使える薬の量を超える場合には、複数回に分けざるを得ないことがあります。

また、硬化療法は注射した直後に血管が目立たなくなる治療ではありません。治療した血管に炎症反応が起こり、しばらく硬く触れたり、赤みや内出血が出たりすることがあります。その後、時間をかけて血管が細くなり、目立ちにくくなっていきます。

変化の速さは血管の太さや範囲によって異なります。色素沈着は数か月かけて薄くなることが多く、まれに1年以上残ることもあります。治療後の時点で気になる血管が見えていても、すぐに「効いていない」とは判断できません。時間をおいて経過を確認します。

硬化療法のメリットとデメリット

メリット

  • 皮膚を大きく切らずに治療できる
  • 1回の処置時間が比較的短い
  • カテーテルを通しにくい細い血管や曲がった血管にも対応できることがある

デメリットと治療後に起こりうること

  • 注射時の痛みや刺激
  • 治療部位の赤み、腫れ、内出血、圧痛
  • 血管に沿った硬さやしこり
  • 色素沈着

硬さや色素沈着は硬化療法で知られている経過ですが、治療する血管や使用する薬の濃度によって現れ方が異なります。このため私は患者さんの負担を低減できるよう、常に最適な方法を選択するよう心がけております。また、フォーム硬化療法では、目の見え方の変化や片頭痛、神経症状なども報告されています。

強いアレルギー反応、皮膚壊死、深部静脈血栓症、肺塞栓症などの重い合併症は非常にまれですが、薬の添付文書でも注意が必要なものとして挙げられています。このため、治療前の問診、適応の判断、治療後の観察が重要です。

メリットだけでなく、治療後すぐに血管が消えるわけではないことも理解したうえで選ぶことが大切です。

硬化療法の費用

実際に硬化療法が治療として適用されるかは、静脈瘤の状態や治療目的によって異なります。患者さんご自身で判断するのは難しいため、診察で状態を確認したうえで個別にご説明します。

硬化療法の治療費の目安は、1割負担で約2,500円、3割負担で約7,500円です。

費用の内訳や、レーザー・高周波・グルー治療との違いは、次の記事で詳しくまとめています。

硬化療法を受けられない場合と、治療前に伝えていただきたいこと

安全に治療方法を決めるため、持病や服用中の薬は診察時に必ずお伝えください。

現在の薬の添付文書で、硬化療法を行わないこととされている主なものは、次のとおりです。

  • 妊娠中、または妊娠している可能性がある方
  • 深部静脈血栓症がある方、または血栓症の既往がある方
  • 動脈の血行障害がある方
  • 歩行が難しい方
  • 経口避妊薬を服用している方
  • 血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を服用している方
  • 重い心臓病がある方
  • 気管支喘息がある方
  • 硬化剤の成分に対する過敏症の既往がある方(以前にアレルギー反応が出た方)
  • 治療する場所やその周囲に炎症や潰瘍がある方

また、フォーム硬化療法では、心臓の左右を隔てる壁に生まれつき小さな通り道が残る「卵円孔開存症」があり、それに関連した脳卒中や一過性脳虚血発作を起こしたことがある方も、治療ができない場合があります。

このほか、授乳中の方、肝臓・腎臓の病気がある方、片頭痛や視覚症状がある方、以前の硬化療法で目の見え方の変化や神経症状が出た方も、必ずお伝えください。フォーム硬化療法では、液状硬化療法とは異なる確認が必要になることがあります。

ここに挙げた病名や服薬歴がある方は、患者さんご自身で一律に判断せず、診察時に必ずお伝えください。添付文書上の禁忌に該当する場合、硬化療法は行いませんが、病気の状態に応じて別の治療方法や治療時期を検討できることがあります。

服用中の薬は、ご自身の判断で中止しないでください。 お薬手帳や薬の一覧をお持ちいただくと、現在の状態に合う方法を検討しやすくなります。

硬化療法についてよくある質問

硬化療法をすれば、静脈瘤は必ず消えますか?

治療した血管が閉じて目立ちにくくなることは期待できますが、血管の太さや範囲、治療への反応には個人差があり、すべての血管が完全に見えなくなるとは限りません。注射した直後に消えるわけではなく、多くの方は1回で終了しますが、血管が落ち着いて目立ちにくくなるまでには時間がかかります。

硬化療法とレーザー治療は、どちらがよいですか?

カテーテルを入れて太い血管の逆流を治療するレーザー・高周波と、皮膚の上から細い血管へ照射するYAGレーザーでは、目的が異なります。硬化療法を含め、どれがよいかは、治療したい血管の太さ、場所、逆流の有無によって変わります。

硬化療法を受けた日は仕事を休む必要がありますか?

通常は歩いて帰宅でき、日常生活へ戻れることが多い治療です。ただし、治療した範囲や仕事内容によって注意点が異なります。長時間立ち続ける仕事、強い運動、入浴などは、治療時に具体的な再開時期を確認してください。

硬化療法が向くかは、エコー検査を含めて判断します

硬化療法は、注射で行える負担の少ない治療ですが、すべての静脈瘤を同じ方法で治すものではありません。

細い血管や枝分かれした血管、一部の不全穿通枝には硬化療法が向くことがあります。一方、太い伏在静脈の本幹に逆流がある場合は、通常、レーザー・高周波・グルーなどを検討します。「注射で治療できるか」だけでなく、どの方法がその方に合うかを考えることが大切です。

私の診察では、まず足の状態を見て、エコー検査で静脈の逆流や血栓の有無を確認します。そのうえで、治療が必要か、硬化療法が向いているか、ほかの方法がよいかをご説明します。診察の結果、現時点では処置をせず経過を見てよいこともあります。

足の血管が気になるけれど、自分が注射治療の対象か分からない場合は、一度状態を確認してもよいかもしれません。

当院での診察をご希望の方は、初診予約、無料検査のご案内、お電話でのお問い合わせから、ご都合に合う方法をお選びいただけます。

この記事を書いた人
春山興右

このブログでは、日々の診療の中で感じたことや、患者さんから実際によくいただく質問などをもとに書き始めました。
教科書的な内容はもちろんですが、本には書かれていない、現場で診療を続けていて初めてわかる知恵や皆さんが知りたいと感じることを、素朴に、わかりやすくお伝えしていけたらと思っています。

静脈瘤の診療は、国内外で取り組んできた医療ボランティア活動と並んで、私にとっては大切なライフワークであり、生きがいのような存在です。
ところどころ熱が入りすぎてしまったり、至らない点も多いかと思いますが、どうか温かい目でご覧いただけたら嬉しいです。

資格は、脈管専門医・指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医、皮膚科専門医、男性ストッキング・圧迫療法コンダクターなどです(治療者兼当事者であり、毎日弾性ストッキングを履いています)。
よろしくお願いしますm(_ _)m

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