下肢静脈瘤の血管内焼灼術(レーザー治療/高周波治療)について 失敗・後悔のない手術には理解が大切です

概要

この記事では、下肢静脈瘤の血管内焼灼術について詳しく解説します。手術の種類やそのメリット、術後のケアについて説明し、解説します。

下肢静脈瘤(バリックス)とは

下肢静脈瘤とは、「かしじょうみゃくりゅう」と読み、静脈の瘤(コブ)と書くように足の太ももやすね、ふくらはぎ上の静脈が浮き出てボコボコとしたコブ状(ボコボコ血管)となり、曲がりくねる状態を指します。進行した方ではふくらはぎの一部にへこみがあるように見えることもあります。これは、足の静脈の中にある逆流防止弁が壊れることで、本来であれば血液を足から心臓に運べていたものができなくなってしまい、血液が逆流している状態になっていることが原因で起こっています。

長時間の立ち仕事や座り仕事、遺伝、肥満、妊娠が原因となることが知られています。症状は足のだるさ、こむら返りが代表的ですが、実際には非常に多くの症状を起こします(詳細はこちら)。

血管内焼灼術の原理

血管内焼灼術とは、カテーテルという細い管を血管に挿入し、先端からレーザーや高周波を出し、発せられる熱で静脈を焼いて閉塞させる方法です。これにより、血液は他の正常な静脈に流れるようになり、足のだるさや足のむくみ(浮腫)などの症状が改善されます。治療後に痩せた、と言われる方もよくおられるのですが、痩せるというよりは足のむくみ(浮腫)がなくなり、足が細くなった、というのが実情だと思います。

器械の種類

カテーテルからレーザーを出す手術と高周波を出す手術の2種類があります。レーザー手術で使われる器械は国内には数種類あり、980nmの波長を出すものと1470nmの波長を出すものがあります。前者は旧機種で後者が新しい機種となっています。基本的に1470nmレーザーの方が術後の痛みも軽く、神経障害などの後遺症の発生率も低く、治療成績がよいため、こちらのレーザーを選択することが望ましいです。高周波の器械は1種類のみであり、1470nmのレーザーと同等の治療成績であるため、高周波の器械でも基本的には問題はありません。

レーザーと高周波の違い

共にカテーテルの先端からレーザーないし高周波を発することで静脈を焼灼し閉塞させるという点では同じです。しかし、レーザーの場合はカテーテルの先端からのみレーザーが出るのに対し、高周波の場合はカテーテル先端から3㎝ないし7㎝もしくは8㎝(使用するカテーテルの種類による)の範囲から一気に高周波が発せられます。このため、レーザーではピンポイントで焼灼することができますが、高周波の場合は最低でも3㎝以上の範囲を一度に焼灼することになります。このため、3㎝以下の短い病変を焼灼するのには基本的に向いていません。

従って、どちらの治療であっても治療成績に大きな違いはなく、どちらでも問題はないことが多いものの、より細かな病変を治療する場合はレーザーが適切といえます。

レーザー手術の手順

  1. 血圧や心電図などをモニターする装置をつけ、抗生物質を点滴で開始します。
  2. 手術部位を消毒し、局所麻酔を注射します。御希望があれば、静脈麻酔(※)も併用します。
  3. 超音波エコーで確認しながらカテーテルを静脈内に挿入します。
  4. カテーテルが正しい位置に入ったら、周囲に麻酔薬を注射し、血管の周囲を保護します。
  5. レーザーないし高周波の器械にて焼灼を開始します。
  6. カテーテルを移動させながら静脈を焼灼し、血管が閉塞するのを確認します。

※静脈麻酔は、医療現場で広く使用される鎮静方法の一つです。一般的に、静脈麻酔は静脈に注入される薬物により、短時間で深い鎮静状態を誘発します。意識がなくなり、手術や医療処置中の痛みや不快感を感じることはありません。意識が「飛ぶ」と表現されることがありますが、これは患者さんの意識がなく寝ている状態を指します。

手術の適用範囲と制限 飲んではいけない薬はあるの?

カテーテルによる手術は主に大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく GSV)あるいは小伏在静脈(しょうふくざいじょうみゃく SSV)に逆流を認めるような静脈瘤が適応となります。血管内焼灼術は患者さんの体への負担が少なく、日帰りで行える治療法ですが、一部の方は手術を受けられない場合(禁忌)や注意しなければならない場合(慎重適応)があります。主なものとして

  • 重篤な心不全のある方や歩行が困難など全身状態の悪い方
  • 深部静脈血栓症(いわゆるエコノミー症候群/ロングドライブ症候群)のある方
  • 妊娠している方
  • 一部の膠原病の方
  • 血栓素因(血栓のできやすい病気)がある方
  • ステロイドや免疫抑制剤(免疫を下げる薬)、骨粗しょう症の薬(一部)、ホルモン剤等

このため、既往症や服薬情報はとても重要で、手術前に医師に必ず相談することが大切です。詳細は「下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン」に記載されています。一般の方でも閲覧が可能ですので是非検索してみてください。

手術後の注意点 やってはいけないことは?

手術後は傷口に絆創膏を貼り、弾性包帯や弾性ストッキングを着用します。治療後は歩いて帰ることができ、日常生活にすぐに戻ることができます。レーザー/高周波によるカテーテル治療の場合、従来の入院を伴うストリッピング手術と比較すると大きな注意点やデメリットはありませんが、いくつか注意点もあります。詳細につきましては別記事にまとめましたのでご覧ください(詳細はこちら)。

手術後の痛み いつまで続く?

980nmの波長のレーザーを出す旧式の機種では痛みが強く出ることがあり、手術後に「痛みがいつまで続きますか?」と聞かれることがありましたが、1470nmの波長を出す機種や高周波の器械では痛みは非常に軽くなっています。屯服の痛み止めの処方をしますが、実際に内服する方は2~3割程度です。

結論

血管内焼灼術は、下肢静脈瘤の標準的で安全な治療法です。レーザーと高周波による治療があり、これらの治療法はそれぞれ異なる利点と欠点を持っているため、患者さんの状態と御希望に応じて適切な方法を選択することが重要です。一部の方は手術を受けられない場合もありますので、手術前に医師に必ず相談することが大切です。

本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
困っておられる御本人様はもちろん、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば記事をシェアしていただけますと幸いです。


もし当院への受診の御希望がございましたら、お気軽にご相談ください
患者様一人ひとりの状態に合わせて、検査から治療まで誠実に対応させていただきます。

この記事を書いた人
春山興右

​静脈瘤専門の医師 

日本脈管学会認定 脈管専門医・指導医
下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

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静脈瘤の治療
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