自分でできる対策 立ち仕事 座り仕事 妊娠中の注意点 受診の目安まで
「足の血管が浮き出てきた気がする」
「夕方になると足がだるい…むくむ」
「これって静脈瘤? 予防できる? 自分で治せる?」
このような気持ちはとても自然なことだと思います。私自身も自己でやれることをいつも行っています。
この記事では 下肢静脈瘤の予防を仕組みから整理して、今日からできる行動に落とし込み、さらに受診を考える目安までまとめてみました。
静脈瘤の予防とは何か(全体像)

下肢静脈瘤は、静脈の瘤(こぶ)と書くように、足の静脈血がうまく心臓へ戻らなくなることで、静脈が拡張してきてしまい目立つようになってしまう状態です。
この背景には、静脈の弁の不具合があることで逆流やうっ血がおこり、その結果として、だるさ、むくみ、こむら返り、かゆみ、皮膚の変化などが、段階的に現れてきます。
「予防」をどう考えるかですが、私は静脈瘤の予防は、大きく次の2つに分けて考えることができるのではないか、と考えています。
- できるだけ起こりにくくすること(発症予防)
- すでに兆しがある場合に、悪化や進行を抑えること(進行予防 再発予防)
静脈瘤という病気自体が、比較的マイナーな疾患であるため、現実的には、多くの方が①の段階での対応をすることはなく、②の「進行予防」にあたるのが多いと考えています。
予防の中心は ふくらはぎの筋ポンプと 静脈のうっ血を減らすこと
静脈瘤の予防を考えるうえで、まず理解しておきたいのが「ふくらはぎの役割」です。
足の静脈血は、重力に逆らって心臓へ戻る必要があります。そのときに重要な働きをしているのが、歩いたり足首を動かす際に使われる、ふくらはぎの筋肉です。
この筋肉が動くことで、静脈が外から押され、血液が上へと押し戻されます。
いわゆる「第二の心臓」と呼ばれるものです。
ところが、立ちっぱなしや座りっぱなしの時間が長くなると、このポンプが十分に働かず、血液が足にたまりやすくなります。
その結果、夕方になると足がだるくなる、むくみやすくなる、といった症状が出てくることがあります。
予防は3つのポイントを意識する
静脈瘤の予防は、以下の3点を意識しておくことが大切だと私は考えています。
1.足を動かして血液を戻す
歩く、足首を動かす、かかと上げなどで、ふくらはぎを使う
2.血液をためにくくする工夫
長時間同じ姿勢を避ける、休憩時に足を少し高くする
3.外からのサポートに頼る
症状や生活状況に応じて、弾性ストッキングを適切に使う
これらは、どれか一つだけを頑張るというより、生活の中で無理のない形で組み合わせていくことが大切だと思います。
さらに、体重管理や便秘への対応、妊娠中のケアなどは、その方の状態や生活背景によって、補助的に考えることがあります。
あわせて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
静脈瘤は自分で治せる?

静脈瘤は、静脈の中にある弁の働きが低下することで起こる病気です。
このため、ある程度進行している場合には、残念ながら自力だけで「完全に元通りに治す」ことは難しい場合があります。
ただし、症状がまだ軽い段階であれば、「症状を軽くする」「悪化を遅らせる」「再発しにくい土台を作る」ことは、日常生活の工夫で十分に目指せると私は考えています。
静脈はバネのように伸び縮みする弾力をもっています。
立ち仕事や座り仕事などで長時間足を動かさない状態が続いたり、うっ血が慢性的に続いたりすると、何度も引き伸ばされたバネが元の形に戻りにくくなるように、静脈も拡張しやすくなり、形が戻りにくくなることがあります。
そのため、運動やストレッチは、だるさやむくみを和らげたり、進行を抑えたりする助けにはなりますが、すでに変形した血管そのものを生活だけで元に戻すことは、難しい場合があります。
このため、次のような方は、「自分でできる予防」を早めに始めておいてもよいかもしれません。
下肢静脈瘤の予防方法についてもっと知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
立ち仕事 座り仕事で足のだるさ・むくみ(浮腫)・痛みがある 対策は?

立ち仕事やデスクワークで増える足の不調には 「筋肉の疲労」だけではなく、うっ血などの血流の問題が関係していることがあります。
湿布やマッサージで一時的に楽になっても、しばらくするとぶり返してしまう場合は、生活の中で、うっ血を減らす動きが足りていない可能性もあります。
こうした場合には特別な運動、激しい運動をするというよりは「短時間でもこまめに動かす」ことが肝要になってくると思います。
自分自身でも行っていて、患者さんにもいろいろ試していただいた中で、現実的に続けやすいと感じているのが以下の3つです。
そして症状が強い方や仕事柄どうしても動けない方、継続するのが得意な方は弾性ストッキングも履いていただいています(私も履いています)。
足の症状がイマイチ改善しない方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
妊娠中の静脈瘤・予防

妊娠中は 静脈瘤が出やすい条件が重なります。体重変化やホルモンの影響に加え、お腹が大きくなることで骨盤周囲の静脈が圧迫されるので足に血液がたまりやすくなります。
ただでさえ大変なこの時期の予防で大切なのは、完璧を目指すことではなく、無理をしないことを前提に、できる範囲で静脈にかかる負担を減らすことだと思います。
産科の主治医に相談しつつ、次のような点を意識するとよいかもしれません。
1.足に負担がかかりやすい姿勢や服装を避ける
締めつけの強い衣類や、長時間の同一姿勢をなるべく減らす
2.「むくみは仕方ない」と決めつけすぎない
左右差が強い、急に腫れ方が変わった場合は早めに確認する
3.できる範囲で外から支える選択肢を知っておく
弾性ストッキングなどを、必要に応じて検討する
妊娠中のむくみは多くの方に見られますが、左右差が強い場合や、いつもと様子が違う腫れ方が続く場合には、念のため確認しておくと安心かと思われます。
妊娠中の足のむくみ等に悩まれている方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
ふくらはぎ(腓腹部)マッサージについて

インターネット上の情報には「マッサージで静脈瘤が治す」といった類の表現を見かけることがあります。私自身もマッサージが好きですし、実施もしていますが、残念ながらマッサージはある程度進行してしまった静脈瘤そのものを元に戻す“魔法”のような方法ではありません。
マッサージは、「根本的な治療」というよりも、
うっ血を和らげたり、足の疲労感を軽くしたりするための補助的なケア
と位置づけて考えるのが適切です。
軽くほぐしてから歩いたり足首を動かしたりすると、気持ちよさもあり、結果として予防の習慣を続けやすくなる方も少なくありません。
マッサージの基本は、力を入れすぎず、足首側から膝方向へ、やさしく流すことです。
強い痛みが出るほど押す必要はなく、「心地よい」と感じる程度で十分だと思います。
なお、片足だけが急に腫れて痛む、熱っぽい、赤みが強いといった症状がある場合には、血栓など医学的な病態が関与している可能性も考えられます。
そのようなときは、自己判断はせず、医療機関の受診を検討することが肝要です。
足のふくらはぎのマッサージ方法について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
腸活と便秘対策(プロバイオティクス プレバイオティクス 納豆)

便秘は「足の血管」と一見関係なさそうに見えますが、いきむ動作は、一時的にお腹の圧(腹圧)や血圧を上げるため、静脈の血液の戻りだけでなく、血圧など体全体に負担がかかることがあると考えられています。
このため、便秘への対策、いわゆる腸活を意識した方がよいのではないか、と感じている方も多いと思います。
腸内環境を整えることのメリットは、血流に関する点だけに限りません。
腸内環境は、全身の調子や気分の安定などとも関係しており、いわゆる「腸脳相関」という考え方も知られています。
日常的な体調管理という意味でも、腸を整えることには一定の意味があります。
腸活というと漠然としていて、「何を食べればいいのか」と迷われる方も多いですが、基本的な考え方はシンプルです。
腸内で働く善玉菌そのもの(プロバイオティクス)と、そのエサになる成分(プレバイオティクス)の両方を意識する、ということです。
日本人の場合、納豆のような発酵食品が生活に根づいており、特別なものを用意しなくても始めやすいのが利点です。
納豆は、発酵食品として善玉菌を含むだけでなく、腸内細菌のエサになる成分も一緒に摂れるため、続けやすい選択肢の一つといえます。
具体的にどういった食べ物が合うのかは、こちらの記事を参考にしてみてください。
静脈瘤の種類と治療法(予防でできることの限界)

静脈瘤の予防に取り組んでいる方の中には、
といった不安を感じている方も少なくありません。
「できれば自分で治したい・予防したい」と感じるのは、とても自然なことだと思います。
私自身も、日常生活の中でできることは意識して続けています。
ただ、下肢静脈瘤に関しては、
生活の工夫で整えられる部分と医療でしか変えにくい部分が混在しているのが実際のところです。
この違いをあらかじめ理解しておくと、判断に迷いにくくなります。
セルフケアとして取り組めることには、たとえば次のようなものがあります。
これらは、静脈のうっ血を減らし、だるさやむくみといった症状を和らげたり、進行を抑えたりする助けになる可能性があります。
一方で、セルフケアだけでは難しいこともあります。
その代表が、静脈の中で故障してしまった弁そのものを元に戻すことです。
弁の不具合がはっきりしていて、その部位や広がりが明確な場合には、生活だけで改善を目指すより、医療の力を借りた方が近道になることもあります。
そのため、セルフケアをしているのにもかかわらず進行している、と感じる場合は今の状態がどの程度なのかを検査で正確に把握することが、結果として改善への近道になることがあります。
「自分で変えられる部分」と「必要に応じて医療で補う部分」を見極めることが、より適切な方法の1つだと思われます。
具体的な下肢静脈瘤の治療方法については、こちらの記事を参考にしてみてください。
どのような場合に医療機関の受診を考えるべきか(一般論)

どのくらいの症状があれば医療機関を受診すべきか、というのは多くの方が悩まれているところかと思います。一般的な目安としては次のような場合が該当するのではないかと私は考えています。
静脈瘤はエコー検査で「治療が必要なタイプか」を評価することができることが多いです。
まとめ
静脈瘤の予防は 「静脈のうっ血を減らす生活」が肝要ですが、「必要な場面で医療を上手に使う」ことも大切になってきます。症状が出ている場合は一人で抱え込まず、まずは今の状況を評価してみてもいいかもしれません。
また、静脈瘤の治療はほとんどの場合、緊急性もないため仮に検査で異常が見つかったとしても必ずしも急いで治療を決めなければならない、ということはないはずです。このため、即決をする必要はなく一度冷静に考えてから決めることもできます。
一人で抱え込まずにまずは現状を把握するところから始めるのが適当かと思われます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ご自身の症状だけでなく、身近な方の足のだるさ、むくみが気になる場合にも、この記事がお役に立てば幸いです。
なお、受診やご相談をご希望の際は、どうぞ遠慮なくお問い合わせください。
お一人おひとりの状況を踏まえ、対応いたします。








