下肢静脈瘤治療:グルー治療が一番いい? 後悔のないよう手術をしっかり理解しましょう!

概要

この記事では、下肢静脈瘤の一番新しい治療法であるグルー治療について詳しく解説します。治療のプロセス、メリットとデメリット、従来の治療法との比較を通じて、この新しい治療法について解説します。

下肢静脈瘤(バリックス)とは

下肢静脈瘤とは、「かしじょうみゃくりゅう」と読み、静脈の瘤(コブ)と書くように足の太ももやすね、ふくらはぎ上の静脈が浮き出てボコボコとしたコブ状(ボコボコ血管)となり、曲がりくねる状態を指します。進行した方ではふくらはぎの一部にへこみがあるように見えることもあります。これは、足の静脈の中にある逆流防止弁が壊れることで、本来であれば血液を足から心臓に運べていたものができなくなってしまい、血液が逆流している状態になっていることが原因で起こっています。

長時間の立ち仕事や座り仕事、遺伝、肥満、妊娠が原因となることが知られています。症状は足のだるさ、こむら返りが代表的ですが、実際には非常に多くの症状を起こします(詳細はこちら)。

従来の治療法

グルー治療の前から行われている治療としてストリッピング手術やレーザー治療があります。ストリッピング手術は、逆流の原因となる静脈を引き抜く方法で、基本的には入院が必要な治療法です。カテーテルによるレーザー治療が到来するまでは主流な治療でした。現在主流となっているレーザー治療は、静脈を内側から焼いて閉塞させる方法で、ストリッピングよりも痛みは少ないですが、それでも痛み止めを必要とする場合があります。

グルー治療の特徴、メリット

グルー治療は、静脈に医療用のアロンアルファのような瞬間接着剤を注入して血管を塞ぐ方法です。この治療法の最大の特徴は、痛みがさらに少ないことです。レーザー治療とは異なり、熱を使わないため、血管や周囲の組織に大きなダメージを与えません。そのため、神経を傷つけるようなこともありません。

グルー治療の適用範囲と制限、デメリット

私自身もグルー治療に大いに期待していますが、日本で導入されてからの歴史はレーザー治療と比較すると浅いため、症例の蓄積がレーザー治療と比較してしまうと十分とは言えません。また、シアノアクリレートという接着剤を使用するため、アレルギー反応のリスクもある上、使用した接着剤は長期間体内に残ることになります。このため適応には注意が必要です。グルー治療が一番いいと、メリットだけを強調するような医師もいますが、現時点では疑問が残ります。ただし、中長期的には症例の蓄積が十分となり、グルー治療が主流となる可能性は勿論あります。

グルー治療の手順

まず、超音波で見ながらガイドワイヤーという道具を使ってカテーテルを静脈瘤となっている静脈に挿入します。適切な位置までカテーテルが進んだら、接着剤を注入していきます。静脈を適切に圧迫することで接着剤が健常部まで広がるのを防ぎます。超音波で見ながら接着剤が適切に固まったことが確認できたら、カテーテルの位置を少しずつ移動させ、再び接着剤を注入します。このプロセスを繰り返し、静脈全体を治療します。治療時間は片足あたり約15分で、術後すぐに歩いて帰ることができます。

メリットとデメリット

メリット

  1. 治療中および治療のあとの痛みが少ない。
  2. 包帯や弾性ストッキングが不要(症例によっては必要な場合もあります)。
  3. 術後の回復が早く、通常の生活にすぐ戻れる。

デメリット

  1. アレルギー反応のリスク。
  2. しこりとして残ることがある。(手術後につっぱり感が残ることがある)
  3. 長期的な効果や安全性がまだ完全には確認されていない。

結論

グルー治療は、痛みが少なく、手術後の回復が早いという大きな利点があります。しかし、最適といえる適用範囲は限られており、長期的なリスクについてはまだ課題が残っています。後から失敗した!と思わないようにグルー治療を希望する場合にはメリットばかりでなくデメリットについてもしっかりと医師から説明を受け、十分に納得することが後悔のない手術につながると思います。

本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
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この記事を書いた人
春山興右

​静脈瘤専門の医師 

日本脈管学会認定 脈管専門医・指導医
下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

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静脈瘤の治療
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