「レーザー治療は痛そうだけれど、どのような手術をするの?」
「レーザーと高周波では、どちらを選べばよいの?」
「手術の前後に注意することはある?」
下肢静脈瘤の手術を検討する際、このような疑問や不安を感じる方は少なくありません。
血管内焼灼術とは、血液の逆流を起こしている静脈に細いカテーテルを入れ、レーザーまたは高周波の熱で血管を閉じる治療です。傷口が小さく、日帰りで行われることが多い、下肢静脈瘤の代表的な治療法の一つです。適切な治療効果を得るには、エコー検査による正しい適応判断と、治療する血管に合った方法を選ぶことが重要です。
この記事では、血管内焼灼術の仕組み、レーザーと高周波の違い、手術の流れ、痛み、適応、合併症、術後の注意点について、下肢静脈瘤を専門とする医師がわかりやすく解説します。
動画でも解説しておりますのでよければご覧ください。
また、レーザー・高周波治療は素晴らしい治療ではありますが、全ての方に向いているとは限りません。下肢静脈瘤の治療全体の考え方(他の治療法との位置づけや受診の目安)については、こちらでまとめています。ご興味のある方はご覧ください。
下肢静脈瘤の血管内焼灼術とは

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、足の静脈にある逆流防止弁がうまく働かなくなり、血液が足の方へ逆流することで起こる病気です。
太ももやふくらはぎの血管が浮き出てボコボコした状態になるほか、足のだるさ、重さ、むくみ、こむら返り、かゆみ、皮膚の色素沈着などを起こすことがあります。
血管内焼灼術では、逆流している静脈の中にカテーテルという細い管を入れ、レーザーまたは高周波の熱を加えて血管を閉じます。治療後は、血液が深部静脈や正常に働いている別の静脈を通って心臓へ戻るようになります。
逆流が改善することで、足のだるさやむくみなどの症状が軽くなることがあります。治療後に「足が細くなった」と感じる方もいますが、体脂肪が減って痩せる治療ではなく、むくみが改善した結果と考えられます。
ただし、すべての下肢静脈瘤に血管内焼灼術が必要なわけではありません。治療が適しているかどうかは、エコー検査で静脈の逆流や血管の状態を確認して判断します。
下肢静脈瘤で起こる症状については、こちらの記事で詳しく解説しています。
血管を閉じても血液の流れは大丈夫?

「静脈を閉じてしまっても、血液の流れに問題はないのですか」と心配される方も少なくありません。
血管内焼灼術で治療するのは、血液を正常に心臓へ戻せず、逆流を起こしている表在静脈だけです。
この静脈を閉じると、血液は深部静脈や正常に働いているほかの静脈を通って心臓へ戻るようになります。そのため、必要な血液の流れが失われるわけではありません。
閉じた静脈は治療直後に消えるのではなく、時間をかけて縮み、次第に目立たなくなっていきます。
レーザー治療と高周波治療の違い

器械の種類
血管内焼灼術には、主に次の2種類があります。
- レーザーの熱を利用する「レーザーによる血管内焼灼術」
- 高周波の熱を利用する「高周波による血管内焼灼術」
どちらも、静脈の中にカテーテルを挿入し、熱によって血液の逆流を起こしている静脈を閉じる治療です。ただし、熱を発生させる仕組みや、一度に治療する範囲などに違いがあります。
レーザーによる血管内焼灼術
レーザー手術で使われる器械は国内には数種類あり、980nmの波長を出すものと1470nmの波長を出すものがあります。
前者は旧機種で後者が新しい機種となっています。基本的に1470nmレーザーの方が術後の痛みも軽く、神経障害などの後遺症の発生率も低く、治療成績がよいため、こちらのレーザーを選択することが望ましいです。
レーザーファイバーを少しずつ引き抜きながら治療するため、治療する長さを細かく調整しやすいことが特徴です。
高周波による血管内焼灼術
高周波治療では、カテーテル先端付近の発熱部分を一定の温度に保ちながら、静脈を区間ごとに閉じていきます。
一定の長さを順番に治療するため、比較的まっすぐで、ある程度の長さがある伏在静脈を効率よく治療しやすい方法です。
高周波の器械は1種類のみであり、1470nmのレーザーと同等の治療成績であるため、高周波の器械でも基本的には問題はありません。
レーザーと高周波はどちらがよい?
レーザー治療と高周波治療は、どちらも静脈の中にカテーテルを挿入し、熱によって逆流している静脈を焼灼して閉じる治療です。ただし、静脈を加熱する方法には違いがあります。
レーザー治療では、光ファイバーの先端付近からレーザーを照射し、光ファイバーを少しずつ引き抜きながら静脈を連続的に焼灼します。このため、治療する長さを細かく調整しやすいという特徴があります。
一方、高周波治療では、カテーテル先端にある一定の長さの発熱部を使い、静脈を区間ごとに焼灼します。以前は発熱部が長いカテーテルが中心だったため、短い範囲の治療には不向きな場合がありました。
しかし、現在は3cmの発熱部を持つ高周波カテーテルがあり、短い範囲も治療しやすくなっています。そのため、通常治療の対象となる大伏在静脈や小伏在静脈の多くでは、レーザーと高周波で治療できる範囲に大きな違いはほとんどないと、私は考えています。
ごく短い範囲を細かく調整して治療する場合などには、レーザーが使いやすいこともあるかもしれません。
血管内焼灼術の手順

血管内焼灼術は、一般的に次のような流れで行います。
- 手術前のエコー検査で、逆流している静脈の範囲や血管の走行を確認します。
- 血圧や心電図などを確認するモニターを装着し、手術部位を消毒します。
- 局所麻酔を行い、エコーで確認しながら静脈の中へカテーテルを挿入します。御希望があれば、静脈麻酔(※)も併用します。
- カテーテルが正しい位置に入ったら、周囲に麻酔薬を注入し、血管の周囲を保護します。
- レーザーまたは高周波の熱を加えながら、逆流している静脈を閉じます。
- 最後にエコーで治療した血管や深部静脈の状態を確認し、傷口を保護して弾性包帯または弾性ストッキングを装着します。
※手術への不安が強い方には、希望や全身状態に応じて静脈から鎮静薬を使用することがあります。
鎮静薬を使用すると、眠っているような状態になり、手術中の不安や不快感を軽減できます。ただし、使用する薬や量によって鎮静の深さは異なり、必ずしも完全に意識がなくなるとは限りません。
血管内焼灼術の適応と注意点

血管内焼灼術は体への負担が比較的少なく、日帰りで行えることが多い治療です。
ただし、すべての下肢静脈瘤に適しているわけではありません。治療が向いているかどうかは、症状や見た目だけでなく、静脈エコー検査で血液の逆流や血栓の有無などを確認して判断します。
血管内焼灼術が向いている人
血管内焼灼術は、主に大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく・GSV)や小伏在静脈(しょうふくざいじょうみゃく・SSV)などに血液の逆流が認められ、下肢静脈瘤による症状や皮膚の変化がある方に検討します。
一方、血管が目立っていても、治療の対象となる静脈に明らかな逆流がない場合や、細い血管だけが広がっている場合には、血管内焼灼術ではなく、硬化療法など別の治療が適していることがあります。
また、エコー検査で逆流が見つかっても、症状や皮膚の変化がほとんどなく、治療によって得られる効果が少ないと考えられる場合には、弾性ストッキングや経過観察を選ぶこともあります。
手術を受けられない場合や慎重な判断が必要な場合
血管内焼灼術は多くの方に行える治療ですが、病気や全身状態によっては、手術を受けられない場合や、慎重に判断しなければならない場合があります。
主なものには、次のような状態があります。
- 重篤な心不全のある方や歩行が困難など全身状態の悪い方
- 深部静脈血栓症(いわゆるエコノミー症候群/ロングドライブ症候群)のある方
- 妊娠している方
- 一部の膠原病の方
- 血栓素因(血栓のできやすい病気)がある方
これらに当てはまる場合でも、すべての方が一律に治療できないという意味ではありません。病気の状態や血栓の危険性、治療によって期待できる効果などを確認し、ほかの治療法も含めて個別に判断します。
服用中の薬は自己判断で中止しないでください
血管内焼灼術を受けるからといって、すべての方が同じ薬を中止するわけではありません。
ただし、次のような薬を使用している場合は、手術前に必ず医師へ伝えてください。
- 血液を固まりにくくする薬
- ホルモン剤
- ステロイド
- 免疫抑制剤
- その他、医師から申告するよう指示されている薬
薬を中止するか、そのまま続けるかは、薬の種類、服用している理由、患者さんの病気や手術内容によって異なります。
自己判断で薬を中止せず、お薬手帳や服用中の薬の一覧を手術前に医師へ見せてください。
血管内焼灼術の適応や注意点についての詳細は「下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術のガイドライン」に記載されています。一般の方でも閲覧が可能ですので是非ご覧ください。
血管内焼灼術の主な合併症
血管内焼灼術は体への負担が比較的少ない治療ですが、合併症がまったくないわけではありません。
治療後には、皮下出血、血管に沿った痛みやつっぱり感、硬いしこり、一時的なしびれなどがみられることがあります。多くは時間とともに軽くなります。
頻度は低いものの、神経障害、皮膚の熱傷、感染、深部静脈へ伸びる血栓、治療した静脈の再疎通(再発)などが起こる可能性もあります。
手術後の注意点 やってはいけないことは?

手術後は傷口を保護し、医師の指示に従って弾性包帯または弾性ストッキングを着用します。
治療後は歩いて帰宅でき、日常生活にも比較的早く戻れます。長時間まったく動かずにいるよりも、無理のない範囲で歩くことが大切です。
一方、入浴、飲酒、激しい運動、長時間の立ち仕事を再開する時期は、治療内容や傷口の状態によって異なります。
次のような症状がある場合は、早めに治療を受けた医療機関へ連絡してください。
- 片足が急に強く腫れた
- 痛みや熱感が急に強くなった
- 傷口からの出血が続く
- 息苦しさや胸の痛みがある
手術後の入浴、運動、飲酒、弾性ストッキングなどについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
手術後の痛み いつまで続く?

現在主流の1470nmレーザーと高周波の器械では、以前の980nmレーザーと従来型ファイバーに比べ、術後の痛みや皮下出血が少なくなっています。
手術当日は局所麻酔の効果が残っているため、強い痛みを感じない方が多いです。その後、治療した血管に沿って、筋肉痛のような痛みやつっぱり感、硬さを感じることがありますが、多くは時間とともに軽くなります。多くは数日から1〜2週間ほどで軽くなりますが、血管に沿ったつっぱり感や硬さは、もう少し長く続くことがあります。
当院では念のため痛み止めを処方していますが、実際に内服する方は2〜3割程度です。
ただし、治療範囲や痛みの感じ方には個人差があります。痛みや腫れが時間とともに強くなっていく場合は、通常の術後経過ではない可能性があるため、治療を受けた医療機関へご相談ください。
血管内焼灼術は適応と治療法の選択が大切です
血管内焼灼術は、逆流している静脈をレーザーまたは高周波の熱で閉じる、下肢静脈瘤の代表的な治療法の一つです。
傷口が小さく、日帰りで治療できることが多い一方で、すべての下肢静脈瘤に適しているわけではありません。
レーザーと高周波のどちらが適しているか、そもそも血管内焼灼術が必要かどうかは、見た目だけでは判断できません。エコー検査で血液の逆流、血管の太さや走行、血栓の有無などを確認することが重要です。
治療を受ける前には、期待できる効果だけでなく、合併症、ほかの治療法、治療後の生活についても説明を受け、十分に理解したうえで治療法を選びましょう。
本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
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