「下肢静脈瘤と言われたけれど、手術が必要なのかよく分からなかった」
「まだ様子を見ていてよいのか不安」
「足のだるさやむくみはあるけれど、治療するほどなのか迷う」
と感じている方は少なくありません。
下肢静脈瘤は、必ずしも手術が必要な病気ではありません。症状が軽い場合は、弾性ストッキングなどの保存療法で様子を見ることがよくあります。
一方で、足のだるさ、重さ、むくみ、痛みが続く場合や、足首の黒ずみ、湿疹、かゆみ、傷が治りにくい状態などがある場合は、早めに静脈の状態を確認した方がよいこともあります。
手術や治療が必要かどうかは、見た目だけでわかるものではありませんし、決めれるものではありません。実際に症状があるかどうか、皮膚の状態、静脈エコー検査で分かる静脈の逆流や血栓の有無などを合わせて総合的に判断します。
この記事では、下肢静脈瘤の治療を考える目安と、受診を検討した方がよいタイミングについてわかりやすく解説します。
下肢静脈瘤は必ずしも手術が必要な病気ではありません

下肢静脈瘤があるからといって、すぐに手術や治療が必要になるわけではありません。静脈瘤の状態や症状の強さ、生活への影響、皮膚症状の有無によって対応は変わります。
外来でも「静脈瘤はあるけれど手術が必要なのか分からない」「まだ様子を見ていてよいのか不安」といった相談があります。
まず大切なのは、静脈瘤があるかどうかだけでなく、それがどの程度症状や皮膚の変化に関係しているかを確認することに加え、静脈エコーで静脈瘤の程度を正確に評価することです。
症状が軽い場合は経過観察になることもある
血管の浮きが少しあるだけで、だるさ、むくみ、痛み、皮膚症状がほとんどない場合は、すぐに治療を行わず、経過観察になることがよくあります。
ただし、見た目が軽そうに見えても、静脈の逆流がある場合や、症状が少しずつ進んでいる場合もあります。自己判断だけで「軽いから大丈夫」と決めるのではなく、気になる症状が続く場合は一度、静脈エコーで客観的なデータ・所見として状態を確認すると、今後の対応を整理しやすくなります。
弾性ストッキングで症状を和らげることがある
足のだるさ、重さ、むくみがある場合、弾性ストッキングで症状を和らげることがあります。特に、長時間の立ち仕事や座り仕事で夕方に症状が強くなる方では、静脈の流れを助ける目的で使われることがあります。
ただし、弾性ストッキングは静脈瘤そのものを完全に治してしまう魔法の治療ではありません。また、圧が強すぎるものやサイズが合わないものを使うと、かえってつらく感じることもあります。
症状がある方は、自己判断で強い圧のものを使い続けるより、状態に合った使い方を相談するとよいでしょう。
治療が必要かは見た目だけでは決まりません
血管が大きく浮いているから必ず治療が必要、逆に見た目が目立たないから治療は不要、とは言い切れません。
下肢静脈瘤では、見た目の血管の浮きだけでなく、足のだるさ、むくみ、痛み、皮膚の黒ずみや湿疹、静脈エコー検査での逆流の有無などを合わせて判断します。
そのため、「見た目は気になるけれど症状は少ない」「血管は目立たないが足が重い」「皮膚の色が変わってきた」などの場合も、必要に応じて静脈の状態を確認した方がよいことがあります。
下肢静脈瘤の治療を考える目安になる症状

下肢静脈瘤の治療を考えるかどうかは、血管の見た目だけでなく、症状がどの程度続いているか、日常生活にどのくらい影響しているかが重要です。
ここでは、治療を検討するきっかけになる症状を整理します。ただし、以下の症状があるから必ず治療が必要という意味ではありません。症状と検査結果を合わせて判断します。
足のだるさ、重さ、むくみが続く場合
足がだるい、重い、夕方になるとむくむ、仕事終わりに足がパンパンになるといった症状は、下肢静脈瘤でみられることがあります。
一時的な疲れであれば、休息によって軽くなることもあります。一方で、毎日のように夕方になると足が重くなる、寝てもだるさが残る、むくみが繰り返す場合は、静脈の流れが関係していることがあります。
このような症状が続く場合は、まず静脈エコー検査で逆流の有無を確認すると、原因や今後の対応を整理しやすくなります。
痛みや張り感が日常生活に影響する場合
下肢静脈瘤では、鋭い痛みというより、足が張る、重い、だるい、血管に沿って違和感がある、といった形で症状が出ることがあります。
立っているとつらい、仕事や家事のあとに足の張りが強い、足の症状が気になって日常生活に影響している場合は、治療を検討することがあります。
ただし、ふくらはぎの痛みには筋肉、関節、神経、血栓など別の原因が関係することもあります。痛みの原因を静脈瘤だけと決めつけず、症状の出方を確認することも大切です。
血管のこぶが目立ち、症状も伴う場合
血管のこぶが目立つだけで、症状がほとんどない場合は、すぐに治療が必要とは限りません。一方で、血管のこぶに加えて、だるさ、むくみ、痛み、皮膚の変化がある場合は、静脈瘤が症状に関係している可能性があります。
見た目の問題だけではなく、症状や静脈の逆流の程度を合わせて考えることが大切です。血管のこぶが増えてきた、以前より足が重くなった、皮膚の色が変わってきたと感じる場合は、状態を確認するタイミングと考えてもよいでしょう。
皮膚症状がある場合は早めに確認した方がよいことがあります

下肢静脈瘤で特に注意したいのが、足首まわりやすねの皮膚症状です。皮膚に変化が出ている場合は、静脈うっ滞がある程度続いている可能性があります。
足首の黒ずみや湿疹、かゆみなどがあるからといって、必ず治療が必要とは限りません。ただし、皮膚症状の一部はあまり重症化すると治りづらくなることがあります。このため、症状が軽いうちに静脈の状態を確認した方がよいかもしれません。
足首の黒ずみや茶色い色素沈着がある場合
足首の内側やすねの下の方が茶色くなってきた、黒ずみが消えない、シミのように見える場合、静脈の流れが関係していることがあります。これはこの部分に伏在静脈という静脈が走行しており、静脈瘤になると、この血管の周りに皮膚症状を起こすことがあるからです。
もちろん、問題のない加齢性のシミ、乾燥、湿疹のあと、摩擦による色素沈着のこともあります。
見た目だけで判断するのは、かなり難しいため、足のむくみ、血管の浮き、かゆみ、湿疹を伴う場合は、静脈エコー検査で血流や逆流の有無を確認すると、原因を整理しやすくなると思います。
かゆみ、湿疹、皮膚の硬さがある場合
足首まわりにかゆみや湿疹を繰り返す場合、皮膚そのものの病気だけでなく、静脈うっ滞が背景にあることがあります。
皮膚科で塗り薬を使うことはとても大切です。一方で、同じ場所に湿疹を繰り返す、足首まわりの皮膚が硬くなってきた、茶色い色素沈着が広がってきた場合は、皮膚だけでなく静脈の流れも確認した方がいいことがあります。
皮膚科の治療で皮膚の炎症を抑えながら、必要に応じて静脈の状態も確認するという考え方が大切だと思います。
傷が治りにくい、潰瘍がある場合
足首まわりの傷が治りにくい、ただれがある、皮膚がじゅくじゅくしている場合は、早めに医療機関で相談を検討してください。
静脈の流れが悪い状態が続くと、皮膚の回復に時間がかかることがあります。傷や潰瘍がある場合は、皮膚の処置だけでなく、背景に静脈うっ滞がないかを確認することが重要になることがあります。
この記事では詳しい潰瘍治療には踏み込みませんが、皮膚症状が進んでいる場合は、自己判断で長く様子を見すぎない方がよいケースがあります。
静脈瘤の手術を考えるかどうかは何で判断する?

この記事の中心となるのは、「静脈瘤の手術や治療を考えるかどうかを、何で判断するのか」という点です。
結論として、見た目だけでは判断することはありません。症状の強さ、生活への影響、皮膚の状態、静脈エコー検査での逆流の程度と範囲、血栓がないか等、別の問題がないかも合わせて考えていきます。
症状の強さと生活への影響
足のだるさ、重さ、むくみ、痛みがあっても、日常生活への影響が少ない場合は、経過観察や弾性ストッキングで様子を見ることがよくあります。
一方で、毎日のように足が重い、仕事や家事の後に辛くなる、寝てもだるさが残る、症状のために活動量が落ちている場合は、根治治療をした方が患者さんの健康に大きく寄与する可能性があるため治療を検討することがあります。
重要なのは、「血管が目立つから治療」ではなく、「症状が生活にどの程度影響しているか」を確認することです。
静脈エコー検査で分かる逆流の範囲
静脈エコー検査では、足の静脈に実際に逆流があるか、どの範囲に逆流があるかを確認します。
下肢静脈瘤では、静脈の弁がうまく働かず、本来心臓へ戻るはずの血液が足の方へ戻りやすくなります。この逆流がどの静脈にあり、どの範囲まで続いているかは、治療方針を考えるうえで重要な情報になります。
ただし、逆流があるから必ず治療というわけではありません。症状の有無、皮膚の状態、生活への影響と合わせて、相談をし総合的に判断します。
皮膚の状態
足首の黒ずみ、湿疹、かゆみ、皮膚の硬さ、傷が治りにくい状態がある場合は、静脈うっ滞が皮膚に影響している可能性があります。
皮膚症状がある場合は、見た目の血管の大きさだけでなく、静脈の逆流が皮膚症状と関係しているかを確認します。皮膚の状態によっては、早めに治療を検討することがあります。
血栓など別の問題がないか
急に片足が腫れた、痛みや熱感がある、皮膚の色が急に変わった場合は、静脈瘤だけでなく血栓など別の問題も鑑別に入ります。
この場合は、静脈瘤の治療を考える前に、まず急いで確認すべき病気がないかを見る必要があります。血栓の詳しい説明や治療は別記事に譲りますが、急な変化がある場合は早めに医療機関で相談してください。
静脈瘤で受診を考えた方がよいタイミング

下肢静脈瘤は、症状が軽い段階ではすぐに治療が必要とは限りません。ただし、次のような場合は、自己判断で長く様子を見すぎず、受診を検討するとよいかもしれません。
だるさ、重さ、むくみが続く場合
足のだるさ、重さ、むくみが一時的な疲れではなく、繰り返し出る場合は、静脈の流れが関係していることがあります。
特に、夕方になると足がつらい、仕事終わりに足がパンパンになる、寝てもだるさが残る場合は、静脈エコー検査で逆流の有無を確認すると、今後の対応を整理しやすくなります。
血管のこぶが増えてきた場合
以前より血管のこぶが目立つ、範囲が広がってきた、血管に沿って違和感がある場合は、静脈瘤が進行していることがあります。
見た目だけで治療が必要かは判断できませんが、血管の変化に加えて症状がある場合は、一度状態を確認するタイミングかもしれません。
皮膚の黒ずみ、湿疹、かゆみがある場合
足首やすねに黒ずみ、茶色い色素沈着、湿疹、かゆみがある場合は、皮膚だけでなく静脈の流れが関係していることがあります。
皮膚症状がある場合は、症状が軽く見えても、静脈うっ滞が続いていることがあります。繰り返す場合は、早めに静脈の状態を確認してもよいかと思います。
急な片足の腫れ、痛み、熱感がある場合
急に片足だけ腫れた、痛みや熱感がある、皮膚の色がいつもと違う場合は、静脈瘤以外の原因も考える必要があります。
特に、息切れや胸の痛みを伴う場合は、肺塞栓症なども鑑別に入るため、早急に総合病院を受診する必要がでてきます。急な変化がある場合は軽く見ないことが大切です。
なお、下肢静脈瘤を長く放置した場合に起こりうる変化について詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しています。
受診した場合、治療方針はどのように決まる?

受診したからといって、すぐに治療になるわけではありません。まずは症状、見た目、皮膚の状態、静脈エコー検査の結果を合わせて確認し、経過観察でよいのか、治療を検討するのかを整理していきます。
まず静脈エコー検査で逆流や血栓の有無を確認する
下肢静脈瘤の診断や治療方針を考えるうえで、静脈エコー検査は重要です。
静脈エコー検査では、静脈の逆流があるか、どの範囲にあるか、血栓がないかを確認します。足の症状や皮膚症状が、静脈の流れと関係しているかを整理するための検査です。
なお、静脈エコー検査で実際に何をするのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
経過観察でよいか、治療を検討するかを評価する
検査の結果、症状が軽く、皮膚症状もなく、静脈の逆流が限定的であれば、経過観察や弾性ストッキングで様子を見ることが多いかと思います。
一方で、症状が日常生活に影響している、静脈の逆流がはっきりしている、皮膚症状がある場合は、治療を検討することがあります。
ここで大切なのは、「治療するか、しないか」を主観的な症状だけで決めるのではなく、症状に加えて客観的な検査結果を合わせて判断していくことです。
治療法は静脈の状態や症状に合わせて選ぶ
下肢静脈瘤の治療にはいくつかの方法があります。実際の臨床では、静脈の逆流の場所、血管の走行、症状、皮膚の状態、生活背景などを踏まえて、経過観察でよいのか、治療を検討するのかを判断していきます。
なお、下肢静脈瘤の治療法の種類や、それぞれの特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事で解説しています。
下肢静脈瘤は何科に相談すればよい?

下肢静脈瘤が気になる場合、血管外科や形成外科・皮膚科・下肢静脈瘤を扱う医療機関などで相談するのが一般的です。ただし、全ての医療機関が下肢静脈瘤を治療しているとは限らないため、予め確認した方がよいでしょう。
皮膚症状が強い場合は皮膚科も
足首の湿疹、かゆみ、赤み、ただれが強い場合は、皮膚科での治療を併用する必要も出てきます。
皮膚と静脈の両方から治療をしていくという考えが肝要です。
全身のむくみや息切れがある場合は内科的評価も必要
両足のむくみが強い、息切れがある、体重が急に増えた、心臓や腎臓の病気を指摘されている場合は、静脈瘤だけでなく内科的な原因も考える必要があります。
このような場合は、腎臓内科や消化器内科、循環器内科などで全身の状態を確認することも大切です。足の症状がすべて静脈瘤によるものとは限らないため、症状の出方に応じて適切な受診先を考えることも重要です。
まとめ
下肢静脈瘤は、必ず手術が必要な病気ではありません。症状が軽い場合は、経過観察や弾性ストッキングで様子を見ることもあります。
一方で、足のだるさ、重さ、むくみ、痛みが続く場合や、血管のこぶが目立つだけでなく症状を伴う場合、足首の黒ずみ、湿疹、かゆみ、傷が治りにくい状態がある場合は、治療を検討することがあります。
治療が必要かどうかは、見た目だけで判断するものではありません。症状の強さ、生活への影響、皮膚の状態、静脈エコー検査で分かる逆流の範囲、血栓など別の問題がないかを合わせて判断します。
「手術が必要なのか」「まだ様子を見てよいのか」で迷う場合は、自己判断で長く悩み続けるより、まず静脈の状態を確認すると、今後の対応を整理しやすくなります。
FAQ
下肢静脈瘤は必ず手術しないといけませんか?
必ず手術が必要というわけではありません。症状が軽い場合や皮膚症状がない場合は、経過観察や弾性ストッキングで様子を見ることもあります。
ただし、症状が続く場合や皮膚症状がある場合は、治療を検討することがあります。手術が必要かどうかは、見た目だけでなく、症状、皮膚の状態、静脈エコー検査の結果を合わせて判断します。
どの程度の静脈瘤なら治療を考えますか?
まず足のだるさ、重さ、むくみ、痛みが続く場合、症状が日常生活に影響している場合、足首の黒ずみや湿疹など皮膚症状がある場合は、治療が必要なことがあります。
ただし、症状や単に血管が浮いているだけで必ず治療が必要とは限りません。静脈の逆流の範囲や症状との関係を確認したうえで最終的に判断することになります。
症状が軽ければ様子を見てもよいですか?
症状が軽い場合は、経過観察になることもあります。ただし、症状が繰り返す、以前より悪化している、皮膚の色や湿疹が出てきた場合は、静脈の状態を確認した方がよいことがあります。
「軽いから大丈夫」と自己判断で長く様子を見すぎるより、気になる症状が続く場合は一度検査をすると、主観的な症状だけでなく、客観的な検査所見もわかるため今後の対応を評価しやすくなります。
皮膚の黒ずみがある場合は治療が必要ですか?
皮膚の黒ずみがあるからといって、必ず治療が必要とは限りません。乾燥、湿疹のあと、摩擦による色素沈着のこともあります。
ただし、足首の内側の茶色い色素沈着、かゆみ、湿疹、皮膚の硬さ、むくみ、血管の浮きがある場合は、静脈うっ滞が関係していることがあります。必要に応じて静脈エコー検査で逆流の有無を確認すると、原因を整理しやすくなります。
治療が必要か迷う場合は、まず静脈の状態を確認しましょう
下肢静脈瘤の治療が必要かどうかは、見た目だけでは判断しにくいことがあります。血管のこぶが目立つかどうかだけでなく、足のだるさ、重さ、むくみ、痛み、皮膚の状態、静脈エコー検査で分かる逆流の有無などを合わせて考えることが大切です。
症状が軽い場合は経過観察でよいこともあります。一方で、症状が続く場合や皮膚症状がある場合は、治療を検討することが一定数はあります。自己判断で長く迷い続けるより一度、検査で現在の状態を確認すると、今後の対応を整理しやすくなります。
本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が、下肢静脈瘤の治療が必要かどうかで迷っている方にとって、受診や検査を考える一つのきっかけになれば幸いです。
健康の土台は足にあります。静脈瘤の治療が必要か迷っている方、足のだるさやむくみ、皮膚の変化が続いている方は、自己判断で長く様子を見すぎず、一度ご相談ください。当院では、必要に応じて静脈エコー検査で血流、血栓の有無、静脈の逆流などを確認し、状態に合わせて経過観察でよいのか、治療を検討するのかを一緒に確認しております。
足の健康が気になる方、下肢静脈瘤の可能性が心配な方は、まずはお気軽にお問い合わせください。患者様お一人おひとりの状態に合わせて、丁寧に確認し、誠実に対応させていただきます。





