「血管にコブのようなものができている…命に関わる?」
「静脈瘤の血栓が破裂すると死に至るの?」
など、血管にコブのようなものができていて命に関わるのではないか、と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。外来では、動脈の病気と静脈の病気が混ざってしまい、必要以上に不安になって受診される方も少なくありません。
この記事では、動脈と静脈の基本的な違いを押さえたうえで、動脈瘤と静脈瘤がどう違うのか、そして「過度に心配しすぎなくてよいケース」と「早めに受診を考えたいケース」の見分け方の考え方を説明します。
結論としては、「足の静脈瘤は動脈瘤とは性質が異なり命に関わるケースは多くありませんが、症状や場所によっては早めの受診がよい」ということになります。
こちらのブログの内容は、以下の動画でも解説しています。
なお、下肢静脈瘤の原因や予防、放置した場合の変化、受診の目安など、静脈瘤についての全体像についてはこちらの記事でまとめております。全体像を把握したい方はよければご覧ください。

血管の概要

人間の体内には、動脈と静脈という2つの主要な血管が存在します。これらの血管は血液循環に不可欠で、それぞれ異なる機能と特性を持っています。
動脈と静脈の最も基本的な違いは、血液に含まれる酸素の量ではなく、心臓から出ていく血管か、心臓へ戻ってくる血管か、という点です。
| 比較項目 | 動脈 | 静脈 |
|---|---|---|
| 血液の向き | 心臓から肺や全身へ送る | 肺や全身から心臓へ戻す |
| 血管の特徴 | 一般に壁が厚く、比較的高い圧に対応する | 一般に壁が薄く、比較的低い圧で流れる |
| 足での見え方 | 通常は皮膚の表面から目立ちにくい | 皮膚に近い静脈は青色や緑色に見えることがある |
加齢によって、血管はどう変わる?
血管も年齢とともに変化します。例えば動脈では、壁が硬くなってしなやかさが失われ、血圧が上がりやすくなります。自覚症状がなくても、健康診断などで血圧を確認しておくことが大切です。[15]
血管の病気には、どのような種類がある?
動脈の病気には、血管の壁にコレステロールなどがたまって血液の通り道が狭くなる粥状動脈硬化(じゅくじょうどうみゃくこうか)や、大動脈の壁が弱くなって一部が膨らむ大動脈瘤などがあります。[6,8]
静脈の病気には、足の静脈の弁がうまく働かず、血液が逆流して血管が膨らむ下肢静脈瘤や、血管の中で血液が固まり、流れが妨げられる静脈血栓症などがあります。[2,7]血管が膨らむことと、血栓で血管が詰まることは、異なる変化です。
動脈のプラークは、取り除く治療が必要?
動脈硬化のプラークは、動脈の壁にコレステロールなどがたまった病変です。治療では、生活習慣の見直しや薬によって進行を抑え、心筋梗塞や脳卒中などを防ぐことが基本になります。プラークが小さくなる場合もあります。[6,9]
血流の妨げが強い場合などには、血管を広げるカテーテル治療や手術を検討します。プラークを取り除く手術もありますが、すべてのプラークを削り取るわけではなく、部位や症状、血流の状態に応じて方法を選びます。[9]
血管の拡張とは?静脈瘤との違い
血管の拡張は、血液が通る内側の空間が広がることです。動脈などでは、壁にある平滑筋という筋肉が緩むことで血管が広がり、必要な場所へ送る血流を調節します。運動などに応じて起こる生理的な働きでもあります。[4]
一方、足の静脈瘤では、静脈の弁の働きが悪くなり、血液が逆流することなどで、皮膚に近い静脈が病的に広がって曲がりくねります。血流を調節するための生理的な拡張とは、仕組みが異なります。[2,4]
血管が青く見えるのはなぜ?
血管が青く見えても、中を流れる血液が青いわけではありません。静脈の血液も暗い赤色です。皮膚や血液による光の吸収・散乱、血管の深さや太さ、周囲の皮膚との色の見え方が重なり、青く見えることがあります。[1]
足の表面に青色や緑色に見える血管の多くは静脈です。ただし、見た目だけでは分かりにくいこともあります。血管の浮きに加えて、むくみ、重だるさ、かゆみ、皮膚の変化などが気になる場合は、医療機関への相談を検討してもよいと思います。
おでこやこめかみに浮き出る血管も、静脈ですか?
おでこやこめかみには、静脈だけでなく動脈も通っています。こめかみでは、浅側頭動脈が目立つこともあります。脈に合わせて動いて見える場合には、動脈の可能性も考えます。[10,11,12]
運動などで一時的に目立つ場合もあります。安静にしても新たな膨らみが続く、痛みや頭痛を伴うといった場合は、見た目だけで判断せず、医療機関で確認するとよいと思います。[11,12]
見た目を改善したい場合は、顔の血管の診療に対応している皮膚科や形成外科などで相談できます。静脈に対するレーザー治療などの報告もありますが、血管の太さや深さ、通る場所によって適応が異なり、やけどなどのリスクもあります。まず血管の種類と状態を確認し、治療が必要かどうかも含めて相談するのがよいと思います。[13]
首の血管が浮き出て見えるのはなぜ?
首には、頭から心臓へ血液を戻す頸静脈(けいじょうみゃく)が通っています。息をこらえて力を入れると、胸の中の圧が上がり、首の静脈が一時的に目立つことがあります。[16]
首の静脈の位置[5,16]

一方、心不全などで静脈の圧が高くなり、首の静脈が膨らむこともあります。[16,17]新たな膨らみが続く場合は、息切れや足のむくみの有無も含めて、内科や循環器内科で相談するとよいかと思います。
胸の中には、どのような血管がある?
胸の中を通る主な血管には、全身へ血液を送り出す大動脈や、全身から心臓へ血液を戻す上大静脈・下大静脈があります。また、心臓から肺へ血液を送る肺動脈と、肺から心臓へ戻す肺静脈もあります。[5]
動脈の役割と大動脈

動脈は、心臓から肺や全身へ血液を送り出す血管です。一般に静脈より壁が厚く、心臓から送り出される血液の圧に対応する構造をしています。心臓から出る大動脈は、体内で最も太い動脈です。[5]
代表的な動脈には、次のようなものがあります。
- 大動脈:心臓から全身へ血液を運ぶ
- 肺動脈:心臓から肺へ血液を運ぶ
静脈の役割と静脈弁の働き

静脈は、肺や全身から心臓へ血液を戻す血管です。一般に動脈より壁が薄く、比較的低い圧で血液が流れます。特に足の多くの静脈には、血液が下へ逆流しにくいように弁があります。太い静脈の代表が上大静脈と下大静脈で、全身から戻る血液を心臓へ集めます。[5]
代表的な静脈には、次のようなものがあります。
- 大静脈:全身から心臓へ血液を戻す
- 肺静脈:肺から心臓へ血液を戻す
毛細血管: 動脈と静脈の橋渡し

毛細血管は動脈と静脈をつなぐ細い血管です。ここでは、血液と体組織の間で酸素や栄養素、老廃物の交換が行われます。
毛細血管を通る血液の流れは遅く、この交換が効率的に行われるように設計されています。
透析のシャント血管とは?VAとの違い
血液透析で使う内シャントは、血液を取り出して戻すために、動脈と静脈を手術でつないだものです。自分の血管を直接つなぐ自己血管内シャントと、人工血管を介してつなぐ人工血管内シャントがあります。[14]
VA(バスキュラーアクセス)は、透析のために血液を出し入れする仕組みを指す言葉です。内シャントだけでなく、血管にカテーテル(細い管)を入れる方法なども含まれます。[14]
血管のこぶ(瘤)とは?静脈瘤と動脈瘤の違い

動脈と静脈は異なるタイプの血管ですが、ともに瘤(こぶ)が起こる時があります。[2,3]よく静脈瘤が破裂するのではないか、と心配されて来院をされる方がいらっしゃいます。
静脈瘤や動脈瘤は破裂して即死する?
結論から言うと、「動脈瘤は部位によって破裂し重篤になり得ますが、足の静脈瘤は性質が異なり、重篤になることは稀」ということになります。
確かに動脈に瘤ができる動脈瘤の場合は、足の動脈瘤だけでなく、脳や腹部、心臓付近の胸部などに発生し、破裂して重篤になることがありますが、静脈に瘤ができる静脈瘤の場合は動脈瘤とは性質が異なり、命に関わるケースは多くありません。
ただし、くるぶしにできる一部の静脈瘤の場合は血管が切れて出血することがあります。なお、食道にできる食道静脈瘤の場合は破裂したら重篤になることがあります。
くるぶし周りの静脈瘤は 出血につながることがあるため 応急処置と受診の目安を別記事で補足しています。出血をまずどう止めるか 受診をするべきか迷うなど、こちらについて確認したい方は別記事が参考になります。くるぶしや足首の血管が浮き出ている症状に悩まれている方はこちらをご覧ください。

参考文献・出典
[2] De Maeseneer MG, et al. Editor’s Choice – European Society for Vascular Surgery (ESVS) 2022 Clinical Practice Guidelines on the Management of Chronic Venous Disease of the Lower Limbs. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2022;63(2):184–267. doi:10.1016/j.ejvs.2021.12.024. https://doi.org/10.1016/j.ejvs.2021.12.024
[3] Isselbacher EM, et al. 2022 ACC/AHA Guideline for the Diagnosis and Management of Aortic Disease: A Report of the American Heart Association/American College of Cardiology Joint Committee on Clinical Practice Guidelines. Circulation. 2022;146:e334–e482. doi:10.1161/CIR.0000000000001106. https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000001106
[4] Betts JG, Young KA, Wise JA, et al. Anatomy and Physiology 2e. 20.1 Structure and Function of Blood Vessels. OpenStax; 2022. Accessed October 20, 2026. https://openstax.org/books/anatomy-and-physiology-2e/pages/20-1-structure-and-function-of-blood-vessels
[5] Betts JG, Young KA, Wise JA, et al. Anatomy and Physiology 2e. 20.5 Circulatory Pathways. OpenStax; 2022. https://openstax.org/books/anatomy-and-physiology-2e/pages/20-5-circulatory-pathways
[6] National Heart, Lung, and Blood Institute. Atherosclerosis: What Is Atherosclerosis? Updated October 28, 2024. Accessed October 20, 2026. https://www.nhlbi.nih.gov/health/atherosclerosis
[7] National Heart, Lung, and Blood Institute. Venous Thromboembolism: What Is Venous Thromboembolism? Updated September 19, 2022. Accessed October 20, 2026. https://www.nhlbi.nih.gov/health/venous-thromboembolism
[8] National Heart, Lung, and Blood Institute. Aortic Aneurysm: What Is Aortic Aneurysm? Updated March 24, 2022. Accessed October 20, 2026. https://www.nhlbi.nih.gov/health/aortic-aneurysm
[9] National Heart, Lung, and Blood Institute. Atherosclerosis: Treatment. Updated October 28, 2024. Accessed October 20, 2026. https://www.nhlbi.nih.gov/health/atherosclerosis/treatment
[10] Tulski M, Kita A, Bernacka N, et al. Venous vascularization of the forehead and clinical implications—A comprehensive review. J Anat. 2026;248(1):18–27. doi:10.1111/joa.70022. https://doi.org/10.1111/joa.70022
[11] Cleveland Clinic. Superficial Temporal Artery. Updated June 1, 2023. Accessed October 21, 2026. https://my.clevelandclinic.org/health/body/25042-superficial-temporal-artery
[12] Swift A, DeLorenzi C, Kapoor KM. Injection Anatomy: Avoiding the Disastrous Complication. In: Jones DH, Swift A, eds. Injectable Fillers: Facial Shaping and Contouring. 2nd ed. Wiley-Blackwell; 2019:1–28. https://catalogimages.wiley.com/images/db/pdf/9781119046943.excerpt.pdf
[13] Bonaparte JP, Ellis DE. Discomfort during Periorbital and Lateral Temporal Laser Vein Treatment: A Double-blind Randomized Controlled Trial. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2014;2(5):e159. doi:10.1097/GOX.0000000000000106. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4174088/
[14] 日本透析医学会. 2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン. 日本透析医学会雑誌. 2011;44(9):855–937. https://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/729/2011%E5%B9%B4%E7%89%88%E3%80%80%E6%85%A2%E6%80%A7%E8%A1%80%E6%B6%B2%E9%80%8F%E6%9E%90%E7%94%A8%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%81%AE%E4%BD%9C%E8%A3%BD%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E4%BF%AE%E5%BE%A9%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3.pdf
[15] National Institute on Aging. High Blood Pressure and Older Adults. Accessed October 21, 2026. https://www.nia.nih.gov/health/high-blood-pressure/high-blood-pressure-and-older-adults
[16] Cleveland Clinic. Jugular Vein Distention. Updated May 29, 2022. Accessed October 22, 2026. https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/23149-jugular-vein-distention
[17] Kitai T, et al. JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure. Circ J. 2025;89(8):1278–1444. doi:10.1253/circj.CJ-25-0002. https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/89/8/89_CJ-25-0002/_html/-char/en
動脈と静脈の違いを理解して身体の症状を冷静に判断しましょう
「動脈と静脈では、どっちが太いのか、どっちが強いのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
一般に、同じくらいの太さの動脈と静脈を比べると、動脈の方が壁は厚く、より高い圧に対応する構造をしています。ただし、血管の太さは種類や体の部位によって異なるため、単純にどちらが太い、どちらが強いとは言い切れません。
動脈と静脈は構造や役割が異なりますが、どちらも血液循環に欠かせない血管です。毛細血管を介してつながり、それぞれの役割を担いながら働いています。
本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
診察をしていると動脈瘤と静脈瘤を混合しておられる患者さんが多く、過度に心配されているケースや、その逆(早めに受診するべきケース)もよく遭遇するため、本記事を書かせていただきました。
困っておられる御本人様はもちろんですが、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば記事をシェアしていただけますと幸いです。
足の血管が浮き出ている、夕方にむくむ・重だるい、かゆみや皮膚の変化があるなど、下肢静脈瘤との関係が気になる方は、当院でも足の状態と静脈の流れを超音波検査で確認できます。見た目だけでは分かりにくいこともありますので、医療機関への相談を検討してもよいと思います。


