「弾性ストッキング/着圧ソックスを使って下肢静脈瘤は改善されるの?」
「市販の弾性ストッキングじゃ下肢静脈瘤は治らないの?」
と、弾性ストッキング/着圧ソックスを履くだけの「圧迫療法」には、実際に効果があるのか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、弾性ストッキングを使用した下肢静脈瘤の圧迫療法について解説します。
圧迫療法の原理や効果、弾性ストッキング・着圧ソックスの正しい履き方、補助具の利用方法について説明し、この治療法のメリットとデメリットについても触れますのでぜひ、参考にしてみてください。
そもそも下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤とは、「かしじょうみゃくりゅう」と読み、静脈の瘤(コブ)と書くように足の太ももやすね、ふくらはぎ上の静脈が浮き出てボコボコとしたコブ状(ボコボコ血管)となり、曲がりくねる状態を指します。
進行した方ではふくらはぎの一部にへこみがあるように見えることもあります。これは、足の静脈の中にある逆流防止弁が壊れることで、本来であれば血液を足から心臓に運べていたものができなくなってしまい、血液が逆流している状態になっていることが原因で起こっています。
長時間の立ち仕事や座り仕事、遺伝、肥満、妊娠が原因となることが知られています。症状は足のだるさ、こむら返りが代表的ですが、実際には非常に多くの症状を起こします(詳細は下記をご覧ください)。
弾性ストッキングを使った下肢静脈瘤の圧迫療法について
弾性ストッキングによる圧迫療法の目的は、医療用の着圧ソックス(弾性ストッキング)を履くことで、足にたまった静脈の血液を心臓に戻しやすくすることです。この治療法は、軽症から重症まで幅広く静脈瘤に使用できます。「下肢静脈治療は圧迫療法に始まり、圧迫療法に終わる」と言われるくらい基本となる治療といえます。
静脈瘤の病態の本質は静脈内の圧が高くなる「静脈高血圧」とも言われ、高血圧に対して降圧剤を処方するように静脈瘤に対して弾性ストッキングが使用されます。従って、弾性ストッキングは足のむくみに対する薬のような物、ということになります。
最も有効なむくみとり、と言っても過言ではなく、患者さんに「むくみを取るには何がいい」と聞かれたら、迷うことなくおすすめします。特に、脛(すね)の外側がつる痛みがあったり、太ももの内側・内腿の違和感を感じる、太腿がだるいなど、体のあちこちがつる方などにも有効です。
圧迫療法のメリット・デメリット
弾性ストッキングを用いた圧迫療法は下肢静脈瘤の基本的な治療方法といえますが、体質によっては弾性ストッキングが合わない方もいます。
我慢せず、専門医に相談し、なるべくストレスフリーで下肢静脈瘤の治療に専念しましょう。
下肢静脈瘤の圧迫療法で使う弾性ストッキングの履き方・履かせ方
弾性ストッキングを正しく履くためにはコツが必要です。以下の手順に従ってください:
- 指輪などのアクセサリーを外します(弾性ストッキングがやぶれないようにするため)
- ストッキングの中に手を入れ、かかとの部分を内側からつまみます
- ストッキングをひっくり返して引き出し、つま先を入れます
- つま先とかかとをぴったりと合わせます
- ストッキングを伸ばしながら上げていきます
- しわやたるみがないように注意し、つま先やかかとの位置がずれないようにします
脱ぐときは、ストッキングを上から一気に下ろしてください。これにより、スムーズに脱ぐことができます。
下肢静脈瘤の圧迫療法で使う弾性ストッキング着用時のポイント
適切なサイズであるかどうか、弾性ストッキングが皮膚に食い込んでいないかどうかの観察を行います。適切でない着用の仕方では皮膚損傷が起こることがありますので、できれば医師か看護師に確認してもらいましょう。
また、浮腫がある皮膚は脆弱であるため、着脱時に皮膚損傷が起こらないように注意を払ってください。
着用が難しいときは補助具の利用を検討してみよう
弾性ストッキングは普通の靴下よりもきついため、一人で履くのが難しい場合があります。そのため、着用補助具を利用すると便利です。補助具を使うと、より簡単にストッキングを履くことができます。
医療用でない市販の着圧ソックス・タイツ・サポーターも効果はある?
薬局などで販売されている医療用でない着圧ソックス・着圧タイツ・サポーターは一般的に圧が十分でないことがあります。このため、下肢静脈瘤を専門とする医師の中には「効果がない」「意味がない」などと言う方も多くいます。
確かに医療用の物の方が適切な圧力をかけられるかもしれません。しかしながら、弾性ストッキング(着圧ソックス)は継続することが最も大切であり、高齢で履くのが難しい方、どうしても医療用のものでは圧力が強すぎて履く気が起きないような方にとっては一つの選択肢になるのではないか、と私は考えています。
圧迫療法で使う弾性ストッキングは限界がある-カテーテル治療を検討しよう
カテーテル治療が登場するまでは下肢静脈瘤の手術は傷が残る上、入院が必要であったため、特に高齢者の方の場合は入院をすることのデメリット(足腰が弱くなるなど)を考慮し、弾性ストッキングを利用した保存療法をすることがよくありました。
しかしながら、現実的には弾性ストッキングを1日中、履きっぱなしで続けるのは、高齢者の方の場合には困難な場合が多く、実際に続けられる方は多くなく、症状が悪化してしまうことが多かったといえます。
現代ではカテーテルを用いた手術をする場合は日帰りで済む上、一度手術を行ってしまえば根治となるため、弾性ストッキングを履く必要自体がなくなります。このため、長期的な日常の生活の質について考えた場合はカテーテル治療をしてしまった方が有利といえます。
弾性ストッキングは大変有効な治療法であり、おすすめできますが、既に静脈の中の弁が故障し静脈瘤を発症してしまっている場合にはカテーテル治療を検討しましょう。
弾性ストッキングによる圧迫療法は幅広い症状の下肢静脈瘤に効果的
弾性ストッキングによる圧迫療法は、軽症から重症の下肢静脈瘤の患者さんにとって効果的な治療法です。正しい履き方と補助具の利用により、日常生活に支障をきたさずに治療を行うことができます。圧迫療法のメリットとデメリットを理解し、適切な方法で治療を進めていきましょう。
特に長時間の立ち仕事や座り仕事で歩けない仕事をしている方、こむら返りの原因として軽症の静脈瘤が考えられる方にはおすすめです。一方で既に静脈の中の弁が故障しており静脈瘤を発症してしまっている場合には急ぐ必要はありませんが、カテーテル治療を検討しましょう。
本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
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