静脈瘤で起こる様々な症状 初期症状や血栓症の症状も

概要

この記事では、静脈瘤で起こる様々な症状について解説します。よくある症状は勿論ですが、血栓症の症状、それほど頻度の高くない症状まで、長年静脈瘤の診療をしてきた経験から詳しく説明します。

下肢静脈瘤(バリックス)とは?

下肢静脈瘤とは、「かしじょうみゃくりゅう」と読み、静脈の瘤(コブ)と書くように足の太ももやすね、ふくらはぎ上の静脈が浮き出てボコボコとしたコブ状(ボコボコ血管)となり、曲がりくねる状態を指します。これは、足の静脈の中にある逆流防止弁が壊れることが発症し、血液が逆流している状態になることで起こります。

下肢静脈瘤の原因

下肢静脈瘤の原因には以下のものがあります。

  1. 長時間の立ち仕事 立ち仕事を長時間続けている方は、静脈への影響が出てくることがよくあります。重力の影響で血液が足の方に集まりやすくなる上、立っているだけでは筋肉があまり動かないため、足の筋肉のポンプ作用が十分に働かず、血液が足に溜まりやすくなります。この血液の圧力が静脈および静脈の中の逆流防止弁にかかることで、静脈瘤が発症しやすくなります。
  2. 長時間の座り仕事 長時間座りっぱなしで作業する方は、足の筋肉を動かさないことになります。ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」とも呼ばれ、血液を心臓に戻すフットポンプの機能を担っていますが、筋力が弱くなると血流が悪くなります。この状態が続くと静脈瘤が発生しやすくなります。
  3. 遺伝 家族に下肢静脈瘤のある場合、そのリスクは遺伝によって高まります。特に両親ともに下肢静脈瘤がある場合、その子供は発症する確率はかなり高くなり、静脈瘤になりやすい人になります。体質であるため、両足とも静脈瘤があることもあります。親子で顔が似るのと同様に血管も似るわけです。
  4. 肥満 体重が増えると、特に下肢の静脈にかかる圧力が増加するため、静脈および静脈の中の逆流防止弁にかかることで、静脈瘤が発症しやすくなります。また、肥満の方は運動不足になりがちで、これが筋肉のポンプ作用を低下させます。足の筋ポンプ作用が低下すると、静脈の血液を心臓に押し戻す力が弱まり、静脈に血液が溜まりやすくなります。このため、静脈瘤が発症しやすくなります。
  5. 妊娠 妊娠中は、胎児に栄養を送るため血液量が増加する上、妊娠中に増えるホルモン(特にプロゲステロン)の影響で静脈が広がりやすくなります。このため、血液が溜まりやすくなります。さらに、胎児が大きくなるにつれて、子宮が骨盤内の静脈を圧迫することで、血液の流れが滞るため、さらに静脈瘤が起こりやすくなります。

下肢静脈瘤の症状 よくあるもの、時々あるもの 初期症状や血栓症の症状など

静脈瘤の症状は典型的なものと非典型的なものがあります。

よくある症状 だるい・重い・痛い・火照り・むくみ・こむらがえり等

  1. 足のだるさ、疲れやすさ:片足だけだるい、特に足首が疲れる・夕方から夜にかけてだるい
  2. 足の重さ:片足だけ重い、歩きにくい、重くて足が棒のようになる
  3. 足痛い:足が痛くなる、歩きすぎると足が痛くなるが片足だけが痛い、入浴後に足の血管が痛くなる
  4. 足の熱い・火照り:瘤の部分に血液が溜まり、熱っぽさ、ヒリヒリとした感覚を引き起こすことがあります。
  5. チクチク、ジンジン、ピリピリする、といった下肢の痛み:小さな静脈瘤の場合、何も刺さっていないのにチクチク、ピリピリといった痛みが出ることがあります。
  6. むくむ(浮腫):足のとれないむくみ。軽症では夕方にかけてむくみ、重症の場合は朝から足がむくむ。お風呂に入るとむくむ。足がむくんでかゆい、浮腫んで足が痛い、しびれがある。特に片足だけむくむ。足の裏の浮腫(むくみ)による感覚鈍麻が認められることもある。
  7. こむらがえり(足がつる):足がつる。典型的にはふくらはぎが多いが、太ももの裏側や内側、脛(すね)の外側、足の指などがつることもある。特に片足だけ(右側のふくらはぎだけつる、左側のふくらはぎだけつって痛い等)足がつるなど。
  8. 痒い湿疹・潰瘍ができる:血管の付近を中心にかゆみが現れ、足の皮膚にあざや色素沈着(特に足首、ふくらはぎに湿疹や内出血が出たり、黒くなる)や硬化(皮膚が硬くなる)が起こる。痒い湿疹やかさぶたが長期間(半年以上)治らず、そのまま放置すると皮膚に潰瘍(穴があくこと)が起こることがある。静脈瘤の治療をしないと治らず難治性皮膚潰瘍となる。

足の血管が浮き出ており、以上のような症状が出ていれば診断はさほど難しくないかもしれません。しかしながら、長年静脈瘤の診療に携わってくると、実際には非常に多彩な症状を呈することがわかってきます。

時々ある症状 冷えや血栓症の症状など

  1. 足の冷え:冷えは動脈性疾患(詳細についてはこちら)が原因のことが多く、当初は関係がないと思っていましたが、足だけ冷える、という主訴の静脈瘤の方を治療すると改善することはしばしば見受けられます。静脈瘤が直接的に冷えに関係しているというよりは、静脈瘤を治療することで循環動態と浮腫が改善するため、二次的に改善していると思われます。寝る時に靴下を履いていたような方が履く必要がなくなることがあります。
  2. 血栓症の併発による症状:静脈瘤で足に血栓が併発すると様々な症状を起こします。通常血栓が起こると炎症を起こすため寝れないほどの痛みが出る、足の裏のドクドクとした拍動性の痛みが生じる(もしくは血管が浮き出る)、足に血が流れるような感じがする、などの症状を自覚することがあります。特に足のふくらはぎに血栓ができると、熱感を伴い熱くなり、しこりが出現したり、持続的にずっと痛い(足首からふくらはぎが痛い)、或いはふくらはぎをマッサージして揉むと痛い(押すと痛い)、歩くと痛い、正座あるいはしゃがむと激痛が走るといった症状が起こることがあります。

以上みてきたように、静脈瘤では血液の循環不全が起こるため様々な症状が起こるといえます。逆に言えば静脈瘤の治療をして足の血流をよくすると様々な症状が改善する可能性がある、ということです。

静脈瘤の受診の目安・タイミング

受診の目安・タイミングに明確な決まりはありませんが、静脈瘤の診断は超音波検査のみで可能であり、体に負担のかかる検査ではありませんので、足になんらかの症状が出ていれば受診を検討してよいでしょう。遅すぎることも早すぎることもありません。

足の専門医による系統的かつ粘り強い超音波検査が重要

見た目上、血管が浮き出ていなかったり、典型的な症状がないと「静脈瘤ではありません」と診断してしまう医師は残念ながらいます。他の病院で診断がつかず、当院で初めて診断がつくケースも非常によくあります。

これはある程度致し方がないことだと思います。静脈瘤の正確な診断には超音波検査(下肢静脈エコー検査)を行う者の技術に強く依存してしまうからです。超音波検査を受けたことがある方は、御存知かもしれませんが、レントゲン検査やCT検査と異なり、超音波検査は検査者が実際に超音波プローブを使って行うため経験や技術の差が出てしまうのは当然です。

私自身は研修医の頃より静脈瘤の超音波検査をしてきました。病院の勤務医は忙しく、超音波検査を検査技師に任せている医師も多いのですが、私は決して検査技師にすべて任せてしまうことはなく、必ず全ての症例を自身で検査してきました。他人の行った検査結果を基に手術を行うことなど私にはとても考えられないからです。自分で責任をもって検査をする、という姿勢で長年検査を続けていると、実際には多くの見逃されている所見があることに気が付きます。

従って、どんなに見た目上は血管が出ていなくとも、症状が非典型的であっても患者さんの症状に謙虚に向き合い、粘り強く原因を探る姿勢が大切となります。「何らかの症状がある限りは、必ず原因がある」という姿勢が静脈瘤の診療には一番大切なのです。

それでも診断がつかない時

偉そうなことを書いてしまいましたが、何万にもの患者さんを見させていただいても、残念ながら未だに見た目や臨床経験だけでは診断がつかない症例も確かにあることも事実です。

長年、静脈瘤の患者さんの診察にあたっていると、何かひっかかりを感じるものの、検査上は明らかな異常所見が認められないことも確かにあります。そのような時は、患者さんの同意が得られれば、しばらく経過観察をさせていただいております。検査が極めて大切であることは事実ですが、検査が全てではありません。症状があっても、まだ検査上は明らかにならないことは残念ながら確かにあります。そのような患者さんも粘り強く経過を見ていくことで最終的には診断に至り、治療をできることが多いと思います。

結論

今回は静脈瘤の症状について非典型的なものも含めて説明しました。典型的な症状であれば診断は容易かもしれませんが、人の体はそんなに単純なものではありません。静脈瘤の正確な診断には検査者の臨床経験と技術のみならず、「症状がある限りは、必ず原因がある」という謙虚な姿勢と粘り強さを持って臨むことが大切だと思います。

本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
困っておられる御本人様はもちろん、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば記事をシェアしていただけますと幸いです。


もし当院への受診の御希望がございましたら、お気軽にご相談ください
患者様一人ひとりの状態に合わせて、検査から治療まで誠実に対応させていただきます。

この記事を書いた人
春山興右

​静脈瘤専門の医師 

日本脈管学会認定 脈管専門医・指導医
下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

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