下肢静脈瘤と血栓 深部静脈血栓症の原因になる? ほぼなりません!

静脈瘤について

「下肢静脈瘤になったら血管が詰まって死んでしまうのでは?」

「足が壊死して切断しなければいけないのでは?」

と、下肢静脈瘤になることで命に関わるのではと心配している方も多いのではないかと思います。

この記事では、下肢静脈瘤と血栓、特に肺や脳・心臓に飛ぶ危険性について詳しくお話しします。

下肢静脈瘤で起こる血栓の違い・種類について

では、浅い部位におこる血栓(血栓性静脈炎)、深い部位に起こる血栓(深部静脈血栓症・通称エコノミークラス症候群/ロングドライブ症候群)、肺塞栓症の違い、発生率について解説します。

まず、医学用語は難しいですので、用語を整理しましょう。

インターネットで静脈血栓のことを検索しますと、「血栓性静脈炎」や「深部静脈血栓症」という言葉が出てきます。単語は難解ですが、実はとても簡単な概念です。

  • 血栓性静脈炎=浅い静脈(表在静脈)に起こった血栓
  • 深部静脈血栓症=深い静脈(深部静脈)に起こった血栓

というだけです。

深い静脈(深部静脈)に起こる血栓(深部静脈血栓症)

体の静脈血のほとんどは深い静脈を通っています。このため、深い静脈は高速道路、浅い静脈は一般道のようなものです。

このため、深い静脈(高速道路)に血栓ができると大渋滞となり、大事に至ることがあります。

浅い静脈(表在静脈)に起こる血栓(血栓性静脈炎)

一方、浅い静脈(一般道)に血栓ができても大事に至ることはありません(ただし痛みはでます。足の血管が痛い場合は血栓性静脈炎が疑われます)

一般的に下肢静脈瘤では確かに血栓は起こりますが、そのほとんどは浅い静脈に起こる血栓であり、痛みを伴いますが大事に至ることはありません。

下肢静脈瘤と深部静脈血栓症・肺塞栓症 起こる確率・リスクは?

では、下肢静脈瘤がある患者では深い部位(高速道路)に起こる血栓(深部静脈血栓症)はどのくらい起こるのでしょうか。

深部静脈血栓症が起こる確率

一般的に健常者と比較すると5倍起こりやすくなるとされています。5倍というと高リスクと思うかもしれませんが、健常者に起こる可能性が0.12%程度であるため、大体0.6%程度の確率です。

深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群/ロングドライブ症候群)の症状

深部静脈血栓症を心配されておられる方でセルフチェックができないか、という質問もよくされますが、深部静脈血栓症が起こると足全体が急激にむくみ、下肢痛・だるさも出ますので、通常は気づくはずです。

どこの部分に血栓ができるかにもよりますが、日本人ではふくらはぎの部位が最も頻度が高くなっており、症状としては、ふくらはぎの痛みが急に片足にだけ起こった場合は原因として血栓ができてしまった可能性があります。

深部静脈血栓症が自然に治るということは通常ありませんので、このような症状・兆候が出た場合は必ず医療機関を受診してください。

肺梗塞が起こる確率

では、下肢静脈瘤がある患者で肺に血栓が詰まってしまう(肺梗塞)はどのくらい起こるのでしょうか。こちらは健常者と比較すると1.7倍起こりやすくなるとされています。健常者に起こる可能性が0.03%程度であり、大体0.05%程度の確率です。

肺塞栓症が起こる確率

足から肺に血栓が飛ぶことで肺につまる肺塞栓症になるのは0.05%程度です。(ただし、本当に肺梗塞になった場合は呼吸困難、胸痛、失神などの急性症状が現れ、迅速な治療が必要となります。治療が遅れると、心肺停止に至り、最悪の場合、死亡・突然死することがあります。)

その他の血栓症(心筋梗塞や脳梗塞など)

他にも下肢静脈瘤が原因で血栓ができて、脳や心臓の血管につまるのではないか、と心配される患者さんが多くいらっしゃいます。

しかし、人間の体の構造上、足にできた血栓がそのまま心臓や脳に行ってしまうことはありません。

足にできた血栓は、その前にある肺の非常に細かい血管を通る必要があるため、通常は肺で血栓が止まるからです。

実際に静脈瘤をお持ちの方で、脳梗塞や心筋梗塞になられる方は確かにいらっしゃいますが、静脈瘤/深部静脈血栓症と体の構造・メカニズムを考えれば、それは静脈瘤のせいで起きたものではなく、全く別に起きてしまったということになります。

まとめ‐健常者よりも起こりやすいがいずれも低い確率

共に、健常者と比較し起こりやすくなるのは事実ですが、非常に低い確率であることがわかるかと思います。過剰に心配する必要はないわけです。

ただし、下記のような足の症状に悩まれている方は早めに医師に相談するようにしましょう。

血栓ができた/疑いがあるときは何科を受診する?

血栓は何科を受診すればいいのでしょうか、どんな痛みがでるのでしょうか、という質問をされることがありますが、以上解説をしてきたように血栓は様々な種類があり、起きた血栓に応じて専門となる診療科が異なりますし生じる痛みも変わります。

  • 血栓性静脈炎など静脈瘤で起こるもの…静脈瘤専門の医師 血管外科や皮膚科・形成外科など
  • 深部静脈や肺梗塞…循環器内科や呼吸器外科など
  • 心筋梗塞…循環器内科や心臓血管外科など
  • 脳梗塞…脳神経内科や脳外科など

上記が対応する代表的な診療科となるでしょう。

下肢静脈瘤でできる血栓はリスクが低め-でも専門医に相談しよう

下肢静脈瘤では確かに血栓は起こりますが、そのほとんどは浅い静脈に起こる血栓(血栓性静脈炎)であり、痛みを伴いますが大事に至ることはありません。深い静脈に血栓(深部静脈血栓症)ができることはありますが、稀です。

さらに心筋梗塞や脳梗塞になることはなく、起きるとすれば肺に血栓が詰まる肺梗塞ですが、これも極めて稀であり、過度に心配する必要はありません。

正しい知識を持ち、不安をあおるような情報には惑わされずに、必要があれば適切な検査と治療を受けることが重要です。

本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
困っておられる御本人様はもちろん、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば記事をシェアしていただけますと幸いです。


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