静脈瘤と間違いやすい動脈の病気:バージャー病、レイノー病、リベド血管炎(リベド血管症)、閉塞性動脈硬化症

概要

静脈瘤の診療をしていると、動脈と静脈を混合されており(動脈と静脈の違いについてはこちら)、静脈瘤とは関係のない動脈の御病気で来院される方が多くいらっしゃいます。この記事では、その中でも重要な4つの足の動脈の病気、バージャー病、閉塞性動脈硬化症、レイノー病、リベド血管炎(リベド血管症)について解説します。これらの疾患の原因、症状、および違いを理解し、血管の健康への影響について説明します。

静脈瘤と間違いやすい動脈の病気

末梢動脈疾患は、心臓や脳以外の動脈に影響を与える病気であり、主に四肢への血流を制限することで様々な症状を引き起こします。この記事では、特に閉塞性動脈硬化症、バージャー病、レイノー病、リベド血管炎(リベド血管症)に焦点を当て、それぞれの特性と健康への影響を探ります。

閉塞性動脈硬化症(足の動脈硬化)の原因 動脈硬化とむくみのセルフチェックを!

閉塞性動脈硬化症とは、動脈の壁にコレステロールや脂肪が蓄積することで動脈が硬化し、血流が制限される病気です。名前が難しいですが、要するに足の動脈硬化のことです。

主に大動脈や大腿動脈などの大きな動脈に影響を与え、50歳以上の男性に多く見られます。高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙などがリスク因子となり、動脈硬化により次第に血管が細くなっていきます。いわゆる足の血管が詰まる病気です。生活習慣によるものであり、男性に多く認められますが、近年では女性の患者さんも増えています。いつまでも血管を太く健康に維持するために生活習慣を見直すことが大切です。

診断と進行度

閉塞性動脈硬化症の診断には通常、足首と上腕の血圧を比較するABI(足関節上腕血圧比)という検査が用いられます。ABIが0.9以下であると、動脈の閉塞が疑われます。

ABI(足関節上腕血圧比)は、足と腕の血圧を測定して、どちらが高いか・低いかその比率を確認する検査です。この検査を行うことで、足の動脈の健康状態をチェックすることができます。まず、腕の血圧を測り、次に足首の血圧を測定します。これらの数値を使って比率を計算します。

通常、足首の血圧は腕の血圧とほぼ同じか、少し高いですが、もし足首の血圧が腕の血圧よりもずっと低ければ、それは足の血管が狭くなったり、詰まったりしている可能性があるということになります。

ABI検査は簡単で痛みもなく、血管の健康状態を確認するために非常に有用です。もし心配な症状がある場合は、医師に相談して検査を受けてみましょう。

足の動脈硬化のセルフチェック

足の動脈硬化の病気である閉塞性動脈硬化症を簡単にセルフチェックする方法があります。足の甲が冷える方や、足の動脈硬化が心配な方は足の甲(足背)を触れてみましょう。この部分には足背動脈(そくはいどうみゃく)という血管があります。触れてみて、その拍動がはっきりと触知できる場合は、足の動脈硬化がある可能性は低くなります。

むくみ(浮腫)のチェック(押すだけ!圧痕性浮腫の確認方法)

むくみ(浮腫)の程度を御自身でセルフチェックする方法があります。足(すねの前)や足首、足背(足の甲)の皮膚を指で押し、10秒間保持した後、指を離してみてください。圧迫した脛(すね)の跡がすぐに戻らない、しばらくの間へこみ、へこんだままになる場合は浮腫・むくみ(浮腫)の兆候があると評価できます。足のむくみがひどい方では、へこんだまま皮膚が長時間戻らないことがあります。静脈瘤や血栓がある場合は片足だけ症状が出ていることがあります。太ももやすね、足背(足の甲)にむくみ・腫れがある時に、病的なむくみかどうか見分けたい時に有効です。この方法は非常に簡単で、自宅で手軽に行えます。足に浮腫のある方は勿論、靴下の跡が残るけれど本当にむくみ(浮腫)があるかわからない、寝る前のマッサージや逆立ちでは改善しない、という方にもおすすめです。

バージャー病の特徴

バージャー病(閉塞性血栓血管炎)は、主に小〜中型の動脈や静脈に炎症と血栓形成を引き起こし、血管を閉塞する疾患です。特に若い男性(20〜40歳代)に多く見られ、喫煙が主なリスク因子とされています。バージャー病は動脈硬化とは異なり、明確な原因がなく発症し、下肢の血管に多く見られます。基礎疾患のない若年者でヘビースモーカーの場合は可能性が高くなります。ただし、最近では喫煙と関連のない場合も認められています。

レイノー病の特徴

レイノー病は、寒冷やストレスに反応して指やつま先の小動脈が痙攣し、一時的に血流が阻害される病気です。これにより、皮膚が白くなり、その後青紫色、赤色に変わる特徴的な色の変化が見られます。原因不明の原発性と、全身性強皮症など他の疾患に伴う続発性に分類されます。

リベド血管炎(リベド血管症)の特徴

リベド血管炎の最も特徴的な症状は、皮膚の網目状または網状の紫色の変色です。これをリベドと呼びます。リベドには生理的な問題のないものもありますが、リベド血管炎の場合は、痛みを伴う潰瘍や出血斑、色素沈着を伴う場合があります。この皮膚症状が静脈瘤による色素沈着と似ているため、外来を受診される方がいるのですが、リベド血管炎の皮疹のパターンは基本的に網目状になっており、分布も静脈瘤とは異なります。

結論

末梢の動脈疾患についての理解を深めることが、患者さんのお悩みの症状の理解と早期の診断に役立ちます。これらの疾患は静脈瘤とは異なる動脈の疾患ですが、非常に間違いやすいため、患者さんに混乱を招いてしまっていることが非常に多いといえます。健康な血管を維持するために、症状に気づいた際には早期に医療機関を受診し、必要であれば生活習慣の改善や治療を受けましょう。

本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
困っておられる御本人様はもちろん、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば記事をシェアしていただけますと幸いです。


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