長時間立っていられない? 迷走神経反射とその対策

概要

この記事では、長時間立っていられない原因の一つである迷走神経反射について解説し、その対策として弾性ストッキングの活用方法やHead-up Tilt Test(以下、ティルト試験)について紹介します。迷走神経反射を理解し、効果的な対策を取ることで、日常生活をより快適に過ごすための情報を提供します。

迷走神経反射とは

迷走神経反射は、特定の刺激によって迷走神経が過剰に反応し、心拍数や血圧が急激に低下する現象です。これにより、めまいや失神、長時間立っていられないといった症状が引き起こされます。迷走神経は副交感神経の一部であり、心臓や消化器官などの内臓機能を調節する重要な役割を担っています。

迷走神経反射の症状と原因

迷走神経反射の主な症状は以下の通りです。

  • めまい: 突然の低血圧による立ちくらみや、ふらつきが発生します。
  • 失神: 短時間の意識喪失が起こることがあります。
  • 吐き気: 一部の人は強い吐き気を感じることがあります。
  • 発汗: 冷や汗が出ることがよくあります。

主な原因は、長時間の立位や熱い環境、精神的ストレス、疲労、脱水などが挙げられます。これらの要因が迷走神経を刺激し、過剰な反応を引き起こします。

Head-up Tilt Test(ティルト試験)

ティルト試験は、迷走神経反射を診断するための重要な検査です。この検査では、患者さんをベッドに寝かせた状態から徐々に立位にさせ、心拍数や血圧の変化を観察します。これにより、迷走神経反射の有無や重症度を評価することができます。正確な診断を行うことで、適切な治療や対策を講じることが可能になります。

弾性ストッキングの活用方法

下肢静脈瘤の治療に使われる弾性ストッキングは、血液の循環を改善し、迷走神経反射による低血圧の症状を緩和するための有効な手段です。

  1. 適切な圧迫力の選択: 弾性ストッキングは圧迫力によって効果が異なります。軽度の症状には15-20mmHg、中等度の症状には20-30mmHg、重度の症状には30-40mmHgのものを選びましょう。
  2. 正しいサイズの選定: 自分の足のサイズに合った弾性ストッキングを選ぶことが重要です。適切なサイズを選ばないと効果が得られないばかりか、逆に症状を悪化させることがあります。着圧ソックスを履くと、むしろ足のつる回数が増える方がいらっしゃいますが、この場合はサイズが合っていない可能性があります。できれば最初は弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターに状態を適切に見極めてもらい、おすすめの医療用弾性ストッキングを選んでもらうのがよいでしょう。
  3. 着用方法: 弾性ストッキングは朝起きてすぐに着用し、夜寝る前に外すのが基本です。立ち仕事や長時間の座位が必要なときに着用することで、効果を最大限に引き出すことができます。

日常生活での対策

  1. 適度な運動(運動療法): 定期的な運動は血液循環を促進し、迷走神経反射の予防に役立ちます。ウォーキングや軽いストレッチを習慣化しましょう。
  2. 水分補給: 脱水は迷走神経反射のリスクを高めます。こまめに水分を摂取し、体の水分バランスを保つことが重要です。
  3. ストレス管理: 精神的ストレスは迷走神経反射の一因です。リラクゼーション法や趣味の時間を取り入れるなどして、ストレスを軽減する工夫をしましょう。

私自身も実践しています

実は私自身も迷走神経反射を持っています。中学生の時に2回、学校で気を失ってしまったことがある上、医学生になってからも実習で気を失ってしまったことがあります。中学生の時は3時間かけて田舎から都内の学校まで通学していたのですが、長時間満員電車で立っていると、体調が悪くなることがあり、いつも悩んでいました。当時はまだインターネットもなく医学的な知識もなかったため、自分はだらしがない奴だ、と自分を責めていましたが、今振り返ってみると明らかに迷走神経反射の症状であったと思います。

採血でも誘発されることがあるため、検診などで採血をする時も予め迷走神経反射があることを伝え、横になった姿勢で採血をしてもらうようにしています。医師になってからは自己診断しておりましたが、40代になってからも一度誘発されてしまったことがあったため、きちんと検査をしておこうと思い、ティルト試験を都立病院で受けました。ティルト試験は厳重な監視下で心臓カテーテル検査を行う部屋で行うのですが、検査開始してから暫くすると見事に迷走神経反射が誘発され完全に意識を失いました。こうしてようやく最終診断に至り、長年の不調の原因が特定されました。

検査をしていただいた循環器科の部長に弾性ストッキングを勧められ、以後はかかさず毎日履いています。弾性ストッキングを履くことで血液循環がよくなっている上、迷走神経反射も誘発されづらくなるため、以後は一度も反射を起こしておらず、調子のよい体調を維持できています。

結論

迷走神経反射は、日常生活に大きな影響を与える可能性のある現象ですが、正しい知識と対策を持つことで、症状を軽減し、快適な生活を送ることができます。Tiltテストによる正確な診断と、弾性ストッキングの活用、適切な日常生活の工夫を組み合わせることで、迷走神経反射による不快な症状を効果的に管理しましょう。私自身も実践しています。お困りの方は是非、一緒に実践していきましょう!

本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
迷走神経反射で長時間立っていられなくて困っている御本人様はもちろん、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば記事をシェアしていただけますと幸いです。


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