「妊娠してから、足がむくみやすくなってきた……」
「今までなかった細い血管やボコボコした血管が出てきたけれど、大丈夫?」
妊娠中は、足のむくみや血管の変化が起こりやすい時期です。私の診療でも、「妊娠中によくある変化なのか」「下肢静脈瘤が関係しているのか」と相談されることがあります。
妊娠中に目立つようになった静脈瘤は、出産後に軽くなることがあります。一方、足の変化だけでなく妊娠全体の状態を確認した方がよい場合もあります。
妊娠中の足のむくみは、まず産婦人科の主治医に相談し、妊娠全体の状態を確認してもらうのが基本です。そのうえで、足の血管が目立つ、だるさが続くなど、静脈瘤が気になる場合は足の静脈について確認します。
この記事では、妊娠中に下肢静脈瘤が起こりやすい理由、弾性ストッキングの役割、相談を考えたい症状を解説します。
動画でも解説しています
妊娠中に足の血管が目立つ理由と対策は、動画でも説明しています。文章とあわせて確認したい方はご覧ください。
下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤は、足の表面近くを通る静脈が広がり、曲がりくねって見える状態です。細い赤紫色の血管から、ふくらはぎや太ももに目立つボコボコした血管まで、見え方には違いがあります。
大きな静脈瘤では、静脈の逆流防止弁がうまく働かず、血液が足側へ戻ることが主な原因です。妊娠は、下肢静脈瘤が初めて目立ったり、以前からあった静脈瘤が大きくなったりするきっかけの一つです。
妊娠中に下肢静脈瘤ができやすい3つの理由

妊娠すると、静脈瘤が初めて目立つ方や、以前からあった静脈瘤が大きくなる方がいます。主な理由は次の3つです。
- 妊娠に伴って血液量が増える
- ホルモンの影響で静脈が広がりやすくなる
- 大きくなった子宮が骨盤内の静脈を圧迫する
血液量の増加
妊娠中は、赤ちゃんと胎盤へ血液を送るため、母体の血液量が増えます。足から心臓へ戻る静脈にも、妊娠前とは違う負担がかかります。
女性ホルモンの影響
妊娠中に増えるホルモンの影響で、静脈の壁が広がりやすくなります。血管が目立ちやすくなる理由の一つです。
子宮による静脈の圧迫
妊娠が進み子宮が大きくなると、骨盤の中を通る静脈が圧迫され、足の血液が戻りにくくなります。夕方にむくみが強くなる、血管が目立つという変化につながることがあります。
妊娠中に静脈瘤が目立っても、出産後に軽くなることがあります。妊娠中は症状を和らげながら経過を見るのが基本で、手術などの治療は、例外的な場合を除いて通常行いません。
妊娠中にみられる足の変化|静脈瘤と決まるわけではありません

妊娠中には、次のような足の変化がみられます。
- 両足のむくみ
- 足のだるさ、重さ
- 夜間のこむら返り
- 細い赤紫色の血管や、糸ミミズのような血管
- ふくらはぎや太もものボコボコした血管
これらは下肢静脈瘤でも起こりますが、むくみやこむら返りだけで下肢静脈瘤と決まるわけではありません。妊娠そのものに伴う変化や、ほかの原因も含めて考えます。
私の診療では、血管の目立ちやむくみに内出血が加わっている場合、静脈瘤が関係している可能性を少し強く考えます。ただし、内出血だけで下肢静脈瘤と判断することはできません。足の状態を見ても分かりにくい場合は、超音波検査で静脈の逆流を確認できます。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とむくみの関係

以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていた妊娠高血圧症候群でも、むくみが目立つことがあります。ただし、むくみだけで妊娠高血圧症候群と決まるわけではありません。
妊娠中は、両足のむくみや重さがみられることも珍しくありません。一方、次のような「いつもと違う変化」がある場合は、静脈瘤と決めつけず、まず産婦人科の主治医に相談してください。
- 顔や手、足のむくみが急に強くなった
- 強い頭痛がある
- 目がかすむ、光がちらつくなど、見え方に変化がある
- 肋骨の下やみぞおち付近に強い痛みがある
- 血圧について指摘されている
なお、片足だけが急に腫れて痛む、赤く熱をもつ場合は、妊娠中によくある両足のむくみとは異なります。この場合も、まず産婦人科または医療機関へご相談ください。
むくみだけで妊娠高血圧症候群と決まるわけではありません
一方、妊娠中の全身状態を静脈瘤の記事だけで判断することもできません。いつもと違う変化がある場合は、まず産婦人科で確認してもらうのがよいと思います。
弾性ストッキングは、妊娠中のむくみやだるさを軽くするために使います

妊娠中の下肢静脈瘤に対し、弾性ストッキングは足のむくみやだるさを軽くする目的で使われます。
ここで大切なのは、妊娠中に静脈瘤が新しくできることを防ぐ効果は、はっきり証明されていない一方、むくみやだるさなどの症状を軽くする効果は期待できるという点です。
「予防効果が証明されていないなら、何をしても意味がない」ということではありません。弾性ストッキングで足の静脈にかかる負担を減らすことは、妊娠中を少し楽に過ごす助けになる可能性があります。私の診療では、むくみが強くなってからではなく、無理なく履ける時期から始める方法をご案内しています。
妊娠中は手術などを原則として行わないため、生活上の工夫と弾性ストッキングで症状を軽くし、出産後の変化を見ながら治療の必要性を考えます。
いつ履く?
むくみが強くなってから履くより、朝、足がまだあまりむくんでいないうちに履く方が楽です。日中を中心に使用し、寝るときも使うかどうかは、製品や症状によって異なるため、医療機関で確認してください。
どの長さを選ぶ?
長いものほど常によいわけではありません。血管やむくみが気になる場所だけでなく、履きやすさ、妊娠週数、お腹まわりの負担も含めて選びます。
- ハイソックスタイプ:足首からふくらはぎの症状が中心の場合に使いやすい。私自身も、足がだるいときに使用しています。
- 太ももまでのタイプ:膝より上の血管やむくみが気になる場合に検討します。ずれや皮膚への食い込みにも注意します。
- パンストタイプ:太ももまで覆える一方、妊娠中は腹部の締め付けに配慮された製品を選びます。
毎日続けられることも大切です。初めて選ぶ場合は、サイズ、圧迫圧、皮膚の状態を含め、医療機関や弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターに相談してもよいと思います。
履いていて痛い、しびれる、皮膚の色が変わる、強く食い込む場合は、そのまま我慢して使わないでください。
妊娠中にできる、そのほかの工夫
- 同じ姿勢を長く続けず、無理のない範囲で足首を動かす
- 休むときに足を少し高くする
- 産婦人科から運動制限を受けていなければ、無理のない範囲で歩く
- きつい衣類を避ける
- 弾性ストッキングは朝のむくみが少ない時間に履く
妊娠の経過や体調によって適切な運動量は変わります。一般的な情報だけで無理をせず、産婦人科の指示を優先してください。
出産後、静脈瘤はどうなる?
妊娠中に目立った静脈瘤は、出産後、子宮による圧迫やホルモンの影響が減るにつれて軽くなることがあります。
そのため、妊娠中に見えた血管をすぐ治療するのではなく、まずは症状を軽くしながら経過を見ます。出産後もボコボコした血管、だるさ、むくみが続く場合は、超音波検査で静脈の逆流を確認し、治療が必要かを考えます。
妊娠中のむくみはまず産婦人科へ。静脈瘤が気になる場合は足の静脈も確認します
妊娠中は血液量、ホルモン、子宮の圧迫によって、足の静脈が目立ちやすくなります。弾性ストッキングはむくみやだるさを軽くする選択肢ですが、すべての静脈瘤を確実に予防するものではありません。
まずは産婦人科で妊娠全体の状態を確認し、そのうえで足の血管や静脈瘤が気になる場合は、静脈の状態を確認するのがよいと思います。
妊娠中の足の血管・むくみが気になる方へ
妊娠中の全身状態は、まず産婦人科で確認していただきます。そのうえで、足の血管が下肢静脈瘤なのか気になる場合、私の診察では足の状態をみて、必要に応じて超音波で静脈の逆流を確認します。
妊娠中は症状を軽くする方法を中心に考えます。出産後も静脈瘤が残る場合は、その時点で治療が必要かどうかを一緒に考えていきます。





