下肢静脈瘤の治療を受ける際、薬を自己判断で中止してはいけません。多くの薬は継続したまま治療できますが、薬の種類や治療方法によっては、処方した医師と相談して、一時的に薬を休む「休薬」や服用時期の調整が必要になることがあります。
また、下肢静脈瘤は飲み薬だけで逆流した静脈を元の状態に戻すことは残念ながらできません。
この記事では、下肢静脈瘤を治す薬ではなく、治療前後に注意する薬と、原則として継続することが多い薬について説明します。
受診時には、お薬手帳を持参し、市販薬やサプリメントも含めて、現在使用しているものを治療担当医に伝えることが大切だと思います。
なお、下肢静脈瘤の治療全体像(どのような治療があるか、受診の目安など)は、こちらの記事にまとめています。全体像を把握したい方は、あわせてご覧ください。
下肢静脈瘤の治療における薬の影響について

下肢静脈瘤の治療を受ける患者さんは、比較的ご高齢なことが多いため、薬を服用している方が多くいらっしゃいます。
治療を安全かつ効果的に進めるためには、これらの薬の影響を理解し、適切な対応を行うことが重要です。
下肢静脈瘤の治療中、注意が必要な薬の種類

- 血栓症のリスクを確認する薬:一部のホルモン剤
- 感染症や傷の治りに注意する薬:ステロイド、免疫抑制薬
- 出血と血栓の両方を考えて調整する薬:血液を固まりにくくする薬
ただし、これらの薬がすべて治療前に中止となるわけではありません。薬の種類と治療方法に応じて、医師が判断します。
血栓症のリスクを確認する薬
一部のホルモン剤
低用量ピルやホルモン補充療法、乳がん・前立腺がんの治療に使用する薬など、一部のホルモン剤では血栓症のリスクを確認する必要があります。
ただし、すべてのホルモン剤を一律に中止するわけではありません。薬の種類や血栓症のリスクを確認し、必要な対応を処方医と治療担当医が相談して決めます。
感染症や傷の治りに注意が必要な薬
ステロイドの内服中は、感染症や傷の治りに注意が必要です。ただし、長期間服用しているステロイドを急に中止すると、離脱症状や副腎機能の低下を起こすことがあります。そのため、自己判断で中止してはいけません。
服用量、服用期間、治療中の病気、下肢静脈瘤の治療内容を確認して、継続または調整を決めます。点眼薬、吸入薬、塗り薬についても、使用中であることを医師に伝えてください。
免疫抑制薬や生物学的製剤も、薬の種類によって対応が異なります。中止によって治療中の病気が悪化することもあるため、処方医と治療担当医が相談して判断します。
原則として継続することが多い薬

下肢静脈瘤の治療では、原則として継続することが多い薬もあります。ただし、治療方法や併せて行う処置によって対応が変わるため、最終的には治療担当医の指示に従ってください。
薬は種類にかかわらず、やはり自己判断で中止しないことが原則になります。特に、血液を固まりにくくする薬や抗てんかん薬を急に中止すると、脳梗塞、心筋梗塞、てんかん発作などにつながる可能性があります。
- 血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)
- 抗てんかん薬
血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)
血液を固まりにくくする薬には、ワルファリンや、アピキサバン・リバーロキサバンなどの抗凝固薬、アスピリン・クロピドグレルなどの抗血小板薬があります。
現在多く行われているカテーテル治療では、これらの薬を継続したまま治療できることが多いと思います。一方、静脈瘤を切開して切除する場合など出血を伴う処置を併せて行う場合や、薬の種類、腎機能などによっては、服用時期を一時的に調整することがあります。
自己判断で中止すると、脳梗塞や心筋梗塞などを起こす危険性が高まることがあります。薬の継続や休薬は、必ず処方医と治療担当医の指示に従ってください。
抗てんかん薬
抗てんかん薬は、急に中止すると発作を起こす可能性があるため、原則として継続します。治療当日の服用方法も含めて、治療担当医の指示に従ってください。てんかんの原因にかかわらず、自己判断で中止してはいけません。
トラネキサム酸や痛み止めはどうする?
トラネキサム酸は、下肢静脈瘤があるだけで一律に中止する薬ではありません。ただし、現在血栓がある方、血栓症の既往がある方、腎機能が低下している方などでは注意が必要です。服用中であることを治療担当医に伝えてください。
ロキソニンなどの痛み止めも、すべての下肢静脈瘤治療で禁止されるわけではありません。ただし、治療方法やほかに服用している薬によっては、服用時期の調整が必要になることがあります。処方薬だけでなく、市販の痛み止めについても医師に伝えましょう。
薬を自己判断で中止しない―お薬手帳を活用しましょう

下肢静脈瘤の治療前に最も大切なのは、薬を自己判断で中止しないことです。休薬が必要かどうかは、薬の種類、治療方法、血栓や出血のリスク、治療中の病気などを確認して判断します。
受診時にはお薬手帳を持参し、処方薬だけでなく、市販薬、サプリメント、注射薬、貼り薬なども含めて、現在使用しているものを医師に伝えてください。薬の調整が必要な場合は、治療担当医と処方医が連携して対応します。
薬を継続したまま治療できるケースも多いため、服薬中であることだけを理由に治療を諦める必要はありません。まずは現在の薬を医師に伝えたうえで、治療方法を相談しましょう。
本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
薬を続けていてよいのか悩んでおられる御本人様はもちろん、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば記事をシェアしていただけますと幸いです。
もし当院への受診や御相談の御希望がございましたら、お気軽にお問合せください。
患者様一人ひとりの状態に合わせて、誠実に対応させていただきます。



