「下肢静脈瘤を放置すると血栓のせいで脳や心臓の血管が詰まるのでは?」
「だんだん足が腐って切断しないといけなくなる?」
と、下肢静脈瘤のような症状を放置していて不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、下肢静脈瘤を放置してはいけない理由や治療方法などについて解説します。
下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤とは、静脈の瘤(コブ)と書くように足の静脈が浮き出てコブとなり、曲がりくねる状態を指します。
これは、足の静脈の中にある逆流防止弁が壊れることが発症し、血液が逆流している状態になっています。長時間の立ち仕事や座り仕事、遺伝、肥満、妊娠などが原因となることがあります。
実際に下肢静脈瘤を放置することで起こるリスクについて
下肢静脈瘤は決して恐ろしい病気ではなく、適切な治療を受ければ根治することができる病気です。
また、血栓ができて脳や心臓に詰まってしまったり、足を切断しなければならないといったリスクは基本的にありません。
下肢静脈瘤で血栓は起こるが心臓や脳が詰まることはない
下肢静脈瘤で血栓が起こることは確かにあります。
しかし、血栓が起こることが稀な上、人間の体の構造上、足にできた血栓がそのまま心臓や脳に行ってしまうことはなく、その前にある肺の血管を通る必要があるため、通常は肺で血栓が止まります。
肺に血栓ができてしまうのでは?と心配になる方もおられますが、肺に血栓が飛んでしまう可能性も稀です。
↓詳細はこちらをチェックしてみてください。
実際に静脈瘤をお持ちの方で、脳梗塞や心筋梗塞になられる方は確かにいらっしゃいますが、それは静脈瘤のせいで起きたものではなく、全く別に起きてしまったということになります。
下肢静脈瘤で起こる皮膚潰瘍で足を切断することはない
静脈瘤を放置し続けると、皮膚炎や色素沈着、硬化(皮膚が硬くなる)さらに下腿潰瘍(※)が起こってしまうことがあります。
潰瘍とは、皮膚の表皮(表面の皮)だけでなく、その下にある真皮にまで障害が起きて、皮膚に穴が開いてしまう状態です。
一見すると足が壊死しているように見えるため、放置したら足を切断するのではないか、と誤解してしまう方がいるようです。
下腿にできる壊死や潰瘍の原因には動脈性と静脈性があります。
↓動脈と静脈の違いについてはこちらをチェックしてみてください
動脈性の壊死・潰瘍は主に重症の糖尿病や閉塞性動脈硬化症(足の動脈硬化)により起こるもので、これらは確かに足を切断するケースがありますが、静脈性の壊死・潰瘍で足を切断するケースは基本的にないといえます。
ただし、潰瘍から細菌が入ってしまったり、潰瘍が骨にまで達し骨髄炎(骨の感染症)を起こしたようなケースでは切断する可能性があるかもしれません(極めて稀)。
※下腿潰瘍(読み方 かたいかいよう:足の皮膚に発生する穴のこと)
下肢静脈瘤を放置しなくてよかった/後悔したケース3選
下肢静脈瘤を放置することで命に関わることは基本的にありませんが、中には早めに治療しておけばよかったと思われるケースもあります。
ここでは、患者さん自身が「早めに治療すればよかった」と後悔したケースを3つご紹介していきましょう。
実際に血栓ができたケース(血栓性静脈炎) 血管が腫れる・痛い
静脈瘤が原因で深い血管に血栓ができること(深部静脈血栓)ができることはありますが、かなり稀です。
それよりも浅い血管に血栓ができること(血栓性静脈炎)が時々あります。静脈瘤が足の血管が詰まる病気と言われる所以でもあります。
浅い血管に血栓ができても命にかかわることはありませんが、血管痛が起こります。今まで痛くなかった浮き出ている血管が腫れる、痛い場合は血栓が起きた可能性を疑います。
足が痛くて寝れない、早めに治療しておけばよかった、とおっしゃる患者さんが多いです。
ホルモン剤や抗がん剤を必要とする疾患になってしまった時
内服したままでは静脈瘤の治療ができない飲んではいけない薬があります。
↓飲んではいけない薬はこちらをチェックしてください
このような薬が必要になることはよくあります。生涯で日本人の2人に1人がなんらかの癌になることを考えれば、決して関係のない話ではありません。
健康な人に静脈瘤があっても怖くはありませんが、癌や基礎疾患のある方、入院・手術をせざる得ない状況の方などの場合は血栓症のリスクも上がり、弱り目に祟り目になることがあります。
このようなケースでも、もっと早めに治療しておけばよかった、と言われることがよくあります。
足の傷から細菌が入ってしまった時(蜂窩織炎/丹毒)
足の小さな傷や皮剥けから細菌が入って、足が赤く腫れ上がる病気があります。
↓足が赤く腫れる原因についてはこちらをチェックしてみてください。
抗生剤の内服、重症の場合は入院での点滴が必要になります。治療により改善しますが、静脈瘤がある方の場合は重症化しやすかったり、再発を繰り返しやすくなります(再発性丹毒)。
鼠径部にあるリンパ節が腫れるため、「太もものリンパが痛い、早く治療すればよかった」とおっしゃる方が多くおられます。患者さんによっては、再発するたびに入院を繰り返すことがあるため非常にやっかいです。
下肢静脈瘤を放置すると?症状が進行するとどうなる?
下肢静脈瘤を放置した場合、命の危険はありませんが、勝手に治るということはありませんので、少しずつ症状が進行していきます。
進行すると足のむくみ(浮腫)やだるさなどの自覚症状が強くなり、日常生活に影響を及ぼすことがあります。
下肢静脈瘤の治療には様々な方法がありますのでぜひ、こちらを参考にしてみてください。
下肢静脈瘤は放置しても命に別状はないけど…治療が困難になるので早めに受診しましょう!
下肢静脈瘤は良性の疾患であり、これが原因で血栓ができて、脳や心臓の血管につまったり、足が腐って切断することはまずありません。しかしながら、勝手に治るということはなく、少しずつ症状が進行していきます。
また、高齢になってくると様々な病気や癌に罹患することも増え、治療が困難になる場合もあります。従って、緊急性は全くないものの、症状のある方は、余裕のある時に治療を検討されるのが推奨されます。
本記事を最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
静脈瘤がおありで悩んでおられる御本人様はもちろんですが、周りの方にもし思い当たる症状の方がいらっしゃるようであれば是非記事をシェアしていただけますと幸いです。
もし当院への受診の御希望がございましたら、お気軽にご相談ください。
患者様一人ひとりの状態に合わせて、検査から治療まで誠実に対応させていただきます。