「まだ20代なのに、足の血管が気になる」
「30代で静脈瘤と言われた。先のことを考えて、今のうちに手術した方がよいの?」
下肢静脈瘤は年齢を重ねてからの病気、というイメージをお持ちの方もいると思います。若いうちに血管の変化に気づくと、今の足の状態だけでなく、これからの仕事や生活まで気になることもあるでしょう。
この記事では、まだ診断を受けていない方の受診の考え方と、すでに下肢静脈瘤と診断された方の治療判断を分けて、できるだけわかりやすく解説します。仕事や家庭の予定、再発への心配、妊娠を考えている場合に診察で伝えたいこともお話しします。
結論としては、中高年に比べると少ないものの、20代・30代にも下肢静脈瘤はみられることがあります。手術が必要かは、年齢だけで決まるものではありません。
まだ診断を受けていない方は、まず気になる血管や症状の原因を確認します。診断された方は、現在の症状、皮膚の状態、超音波検査の結果、生活への影響を合わせて治療を考えます。
20代・30代でも下肢静脈瘤になるのですか?

中高年に比べると少ないものの、20代・30代にも下肢静脈瘤はみられることがあります。[1]
私が若い方を診察する中で遭遇するのは、親御さんなどのご家族にも静脈瘤があり、なおかつ美容師さんのように長時間の立ち仕事をしている方です。
静脈瘤になりやすい体質に、長く立つことで足の静脈にかかる負担が重なっている、と考えると、若い方にも起こる理由をイメージしやすいかと思います。遺伝によるなりやすさと、仕事などの環境の両方が関わることがあります。[1]
「この年齢なら静脈瘤ではないはず」と、年齢だけで否定する必要はありません。一方で、足に血管が見えることや、夕方にむくむことだけで、静脈瘤と決まるわけでもありません。
たとえば、細い赤や青の血管が網目状に見える場合と、太い血管がボコボコと浮いている場合では、確認することや治療の考え方が異なります。まずは、ご自身の足がどのような状態なのかを知るところからでよいと思います。
若いうちに手術した方がよいのでしょうか?

「今はそれほど困っていないけれど、何十年も先を考えると治しておくべきなのだろうか」。診断を受けると、そう考える方もいると思います。
私がお伝えしたいのは、今ある症状への治療と、将来悪くなるかもしれないという心配を、分けて考えることです。 若さだけで手術を決める必要はありませんし、若いから症状を我慢し続けなければいけないわけでもありません。
まず、気になる血管の種類と症状を確認する
まだ検査を受けていない方は、手術の時期を考える前に、見えている血管の種類や、むくみ・だるさとの関係を確認します。
皮膚の表面に細い赤・青・紫の血管が網目状やクモの巣状に見える場合には、その細い血管と、皮膚に見える血管より奥を通る「伏在静脈」の状態を分けて考えます。伏在静脈に逆流がない場合は、見えている細い血管のために伏在静脈を閉じる手術をする必要は通常ありません。[1、2]
一方、細い血管が目立つ方に、伏在静脈の逆流が伴っている場合もあります。その場合は、症状や皮膚の状態、逆流の範囲などを合わせて、治療が必要かどうかを考えます。
見た目が気になることも、相談してよい理由です。ただ、その希望と、血液の逆流を治療する必要性は同じではありません。診察では血管の見え方と症状を確認し、超音波検査が必要かも判断します。細い血管だけが見えていて、ほかに症状がない方すべてに、検査や手術が必要というわけではありません。[2]
細い血管の見た目が気になる方に向けて、細い赤・青・紫の血管が目立つ場合の原因と治療について、別の記事で詳しく説明しています。
太い血管の浮きや、繰り返すむくみ・重だるさ、足首まわりの湿疹や色の変化がある場合は、静脈の流れが関係しているか確認する手がかりになります。若いからといって、そうした変化を年齢だけで片づけず、相談を検討していただくのがよいと思います。
診断された方は、今何に困っているかを検査結果と合わせる
すでに下肢静脈瘤と診断された方では、「静脈瘤がある」ということから、もう一歩進んで考えます。
仕事の後は毎回足が重く、帰宅してから動くのがつらい。むくみや痛みのために、続けたい活動を控えている。そうした生活への影響があり、症状に関係する静脈の逆流が確認されている場合は、治療を考える理由になります。足首まわりの湿疹や黒ずみ、皮膚の硬さなどが静脈の流れと関係している場合も、治療の必要性を検討します。[3]
一方、症状や皮膚の変化が乏しい方では、今は手術をせず経過を見るという判断もあります。無症状の静脈瘤に対して、将来の悪化を防ぐために手術をする効果は、十分に示されていません。「若く、これから先が長い」という理由だけで、予防のための手術を勧めるものではありません。[2]
超音波検査で逆流が見つかったことと、足のつらさがすべて静脈瘤によることも、同じではありません。むくみなどには別の原因が重なることがあるため、症状のお話、診察、検査結果を合わせて考えます。[3]
治療を考える場合は、「何を改善するための治療なのか」「どの症状は改善しきらない可能性があるのか」を確認すると、受けるかどうかを考えやすくなると思います。
今は治療しない場合、どの変化を見ておく?
経過を見ることになっても、この先ずっと同じ判断が続くとは限りません。下肢静脈瘤は、時間とともに変化することがあります。ただし、ご自身の足がいつ、どの程度変化するかを、年齢だけから決めることはできません。[1、2]
以前よりむくみや重だるさが強くなった、血管の浮き方が変わった、足首まわりに湿疹や色の変化が出てきた。そのようなときは、改めて状態を相談する目安になります。
症状に応じて、歩く時間や同じ姿勢を続けない工夫、弾性ストッキングなどで負担を軽くする方法を考えることもあります。弾性ストッキングの種類や使い方は、足の状態に合わせて相談してください。[1、2]
「今は手術をしない」と説明された方は、どのような変化があれば再度相談するか、次の診察が必要かも確認しておくとよいと思います。将来のことをすべて決めるより、今の状態と、見直すきっかけを知っておくことが役立ちます。
仕事や家庭の予定があるとき、治療をどう考える?

「忙しいので、手術のために休めるか分からない」という場合も、受診まで先送りにしなくて大丈夫です。診察を受けることと、治療日を決めることは分けられます。
まず、今治療を考える状態なのか、経過を見られるのかを確認します。治療を選ぶことになったら、仕事内容、通勤、動かせない行事、ご家庭で担っていることなどを踏まえて、時期を相談します。
同じ仕事でも、座って行う作業なのか、長時間立つのか、重いものを運ぶのかで、治療後に確認したいことは違います。運転を伴う仕事や、育児・介護で体を使う方は、その内容も伝えていただくとよいと思います。
休める日があることだけで手術を決めず、休めないことだけで必要な治療を諦めず、足の状態と予定を合わせて考えます。 具体的にいつ仕事や運動へ戻れるかは、治療法、処置の範囲、術後の状態によって異なります。
治療を選んだ場合の運転・入浴・運動など、日常生活で確認したいことは、こちらの記事で説明しています。実際の再開時期は、治療を受ける医療機関の指示を基準にしてください。
妊娠の予定がある方は、診察で伝えてください

将来の妊娠を考えている方は、「今治療を考える状態なのか知りたい」「妊娠の予定とどう合わせればよいか相談したい」と、そのまま伝えていただいてよいと思います。時期がまだ決まっていなくてもかまいません。
妊娠前に治療を受けるかどうかは、現在の症状や皮膚の状態、検査結果を確認して考えます。妊娠の予定があるだけで、一律に手術を勧めるものではありません。今は治療が必要ない方もいますし、現在の症状への治療を検討する方もいます。
妊娠中は、通常、静脈瘤に対する手術などは行わず、症状を軽くする方法を中心に考えます。[1、3] そのため、妊娠の予定がある方は、治療日を決める前に、その予定も伝えていただくとよいと思います。足の状態と予定を合わせて、治療の必要性や時期を相談します。
すでに妊娠中の方のむくみや血管の変化については、産婦人科の主治医への相談も含め、こちらの記事で詳しく説明しています。
治療後の再発が心配なとき、何を確認する?

「今治しても、また静脈瘤になるのでは」。これからの生活を長く考えるほど、治療後のことも気になると思います。
私がこれまで診療してきた経験では、治療後の再発は多くはありません。
もちろん、一度治療を受ければ、この先ずっと静脈瘤にならないと約束できるわけではなく、稀に治療した血管に再び血液が流れるようになったり、別の静脈に新たな逆流が生じたりすることがあります。
現在の症状に関係する逆流を治療することには、今の困り事の改善を目指す意味があります。将来の変化への心配と、現在の治療で得られることを分けて考えるとよいと思います。
治療を考えるときは、今どの血管を治療するのか、どの症状の改善を見込むのか、治療後の経過をどう確認するのかを聞いてみてください。再び血管や症状が気になった場合は、診察と超音波検査で原因を確認して、その時点での対応を考えます。[2]
私は、何十年も先の再発への心配だけで今の手術を決めるより、現在の治療で得られることと、将来変化があったときの相談方法を理解して選ぶことが大切だと思います。
再発と呼ばれる状態の違いや、治療後に症状が出た場合の確認については、こちらで詳しく説明しています。
受診するときは、今の症状と気になっていることをお聞かせください

受診前に、ご自身で手術が必要かどうかを判断しておく必要はありません。「まだ若いのに血管が見える」「診断は受けたけれど、今治すべきか分からない」という段階で相談していただいてよいと思います。
いつ頃から、どこが気になり、どんなときにつらくなるのか。仕事や普段の生活で何に困っているのか。分かる範囲でお聞かせください。治療を考える場合に動かせない予定や、妊娠の予定があれば、そのことも相談できます。使っている薬や、これまで受けた検査・治療についても伝えてください。
症状をうまく言葉にできなくても、気になる場所を示すところから始められます。私の診察では、お話と足の状態を確認し、必要に応じて超音波検査で静脈の流れを調べます。その結果、今は手術などの処置が必要ないと判断することもあります。
20代・30代だから、急いで治す。あるいは、若いからまだ相談しなくてよい。そのどちらかに決めず、まず現在の足の状態を知り、そのうえでご自身の生活に合う対応を考えていただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。今の症状と、これからの予定を整理する参考になれば幸いです。
当院への相談を希望される方は、Webまたはお電話で初診をご予約いただけます。紹介状は必要ありません。治療を受けるか迷っている場合も、まずは現在の状態についてご相談ください。
参考文献・資料
1. NHS. Varicose veins.
2. Gloviczki P, et al. The 2023 SVS/AVF/AVLS clinical practice guidelines for the management of varicose veins of the lower extremities. Part II.
3. De Maeseneer MG, et al. ESVS 2022 Clinical Practice Guidelines on the Management of Chronic Venous Disease of the Lower Limbs.




