下肢静脈瘤の治療のデメリットは?手術と硬化療法の注意点

下肢静脈瘤の治療について冊子を見ながら説明を受ける場面を描いたアイキャッチ 下肢静脈瘤の治療法と選び方

「下肢静脈瘤の治療には、どのようなデメリットがあるのでしょうか」「手術を受けてから困ることはないのかな」と、よい点だけでなく注意点も知ってから決めたい方は多いと思います。

この記事では、現在よく行われているレーザー・高周波、グルー、硬化療法について、起こり得る変化や負担を比べます。また、治療後に「失敗したのでは」と気になったとき、何を分けて考えるとよいかも説明します。

結論としては、デメリットは治療法と足の状態によって異なり、治療後の変化がすべて同じ意味を持つわけではありません。 一時的な変化なのか、治療の効果や追加の対応を確認する必要があるのかを、分けて考えることが大切です。

治療法によって、注意することは違います

下肢静脈瘤の治療は、逆流している血管を閉じたり、表面のこぶを処置したりするものです。レーザー・高周波やグルーによる手術と、薬を注射する硬化療法では、治療の進め方や注意する点が違います。まずは主な違いを見てみましょう。[1–3]

方法知っておきたいこと
レーザー・高周波治療したところにつっぱるような感じや内出血がみられることもあります。血管の位置に合わせて、治療する範囲や方法を選びます。
グルー治療後に赤みやかゆみがみられることもあります。まつ毛エクステなどでかぶれた経験も、事前にお聞かせください。
硬化療法注射したところに硬さや色の変化がみられることもあります。治療後の見え方や経過についても、あらかじめご説明します。

この表だけで、どれかが一番安全、あるいは一番よくないと決まるわけではありません。治療する血管の場所や形、体質などによって、ご本人に関係する注意点が変わります。

レーザー・高周波:治療後のつっぱり感や内出血について

レーザー・高周波は、細いカテーテルを入れ、熱で逆流している静脈を閉じる方法です。

私の診療経験では、手術後もほとんどの方はあまり痛みを感じずに過ごされています。

治療した血管に沿ってつっぱるように感じたり、内出血がみられたりすることはあります。[1]内出血は通常、時間とともに薄くなっていきます。[7]

治療前には、血管が皮膚や神経からどのくらい離れているかも確認します。熱によるやけどや、しびれなどの皮膚の感覚の変化に配慮し、その方の血管に合った治療範囲や方法を選びます。[2]

グルー:使う成分と、これまでのかぶれの経験を確認します

グルー治療は、シアノアクリレートという成分を使った医療用の接着剤で静脈を閉じる方法です。身近なところでは、まつ毛エクステやつけ爪の接着剤にも、シアノアクリレート系の成分が使われています。[4–6]

例えば、まつ毛エクステをつけたときにまぶたが赤くなったり、かゆくなったりした経験があれば、治療前にお伝えください。かぶれの原因はいろいろあるため、それだけでグルー治療ができないと決まるわけではありません。何を使ったときに、どのような症状が出たかを伺い、治療法を考える参考にします。[1]

治療後には、血管に沿って赤みやかゆみなどが出ることもあります。こうした反応がすべてアレルギーというわけではなく、症状や経過を確認しながら対応します。[1]

硬化療法:色や硬さが落ち着くまで、経過をみます

硬化療法は、血管に薬を注射して閉じる治療です。皮膚を大きく切らずに行えますが、治療後に血管に沿う硬さや、茶色い色素沈着が残ることがあります。注射した直後に、見えている血管がすべて消える治療ではありません。[3]

泡状の薬を使うフォーム硬化療法では、一時的に見え方が変わったり、頭痛が出たりすることも報告されています。以前の硬化療法でこうした症状があった方や、薬でアレルギーを起こしたことがある方は、あらかじめ伝えてください。[3]

それぞれの方法の働きや、適した血管の違いを含めた治療の全体像は、こちらの記事で説明しています。

下肢静脈瘤の治療を専門の医師が完全ガイド
下肢静脈瘤の治療の全体像を専門の医師が解説。レーザー、高周波、グルー、硬化療法、弾性ストッキングなど治療法の違いと選び方、エコー検査や受診先の選び方、術後の注意点や費用の目安まで医師がわかりやすく解説。

頻度は低くても、確認しておきたい合併症もあります

レーザー・高周波治療後に、足の深い静脈に血栓ができる頻度は低いと報告されています。過去の血栓症や体の状態なども含めて、治療前に確認します。[2]

こうした変化をご自身だけで区別・判断する必要はありません。痛みや腫れが日ごとに強くなるなど、説明を受けた経過と違うと感じるときは、治療を受けた医療機関へご相談ください。

「失敗したのでは」と感じる変化を、どう確認する?

治療後に気になることがあっても、見た目や症状だけで原因を決めることはできません。例えば、次のような状況では、確かめる点が異なります。

気になっていること確認する点
治療した場所が硬い、色が残っている予定した方法で起こり得る変化か、経過とともに変わっているかを確認します。硬化療法後の硬さや色素沈着も、このように経過をみることがあります。[3]
手術したのに、表面のこぶが残っている原因となる幹の血管と、見えている枝のこぶは別のことがあります。今回どこまで治療したか、こぶへの追加の処置が必要かを確認します。[2]
いったん治療した血管が、また目立ってきた治療した血管が再び開いたのか、ほかの静脈に逆流があるのかなど、エコー検査で確認します。[2]
血管は治療したけれど、だるさや痛みが残る静脈の逆流が残っていないかに加え、筋肉や神経など別の原因が重なっていないかを考えます。

「血管が予定どおり閉じているか」と「気になっている症状がどこまで改善したか」は、分けて確かめます。 再治療を考える場合もありますが、経過をみる方がよいこともあります。過去の治療内容と、今の診察・検査の結果を合わせて判断します。[2]

生活への負担と、治療で変えられる範囲も考えます

レーザー・高周波の治療後は歩いて帰宅でき、家事や仕事、普段の歩行など、激しい運動を伴わない日常生活は基本的に手術後から行えます。仕事内容や治療する範囲、足の状態に応じて、具体的な過ごし方を調整します。

また、治療には費用がかかり、術後の診察もあります。方法ごとの注意点だけでなく、通える予定や、どの症状に改善を期待するかも、治療を選ぶ材料になります。

「受けるべきかまだ迷っている」「期待していることを整理したい」という方は、手術前に確認したいことをまとめたこちらの記事も参考になります。

下肢静脈瘤の手術で後悔しないために|受ける前に確認したいこと
下肢静脈瘤の手術で後悔しないために、症状の改善見込み、表面のこぶの処置、術後の痛みや生活、再発、費用・通院について、受ける前に確認したいことを専門の医師が解説します。

デメリットは、自分の足の状態に合わせて確認します

治療の注意点を調べると、いろいろな言葉が出てくると思います。すべてを覚えたり、ご自身だけで治療を受けられるか判断したりする必要はありません。

私の診察では、足の状態やエコー検査の結果に加え、過去の病気、薬、アレルギー歴も確認し、治療が必要か、どの方法が合うかを考えます。治療をせず経過をみてよい場合もあります。

気になっていることを、うまくまとめてから受診する必要はありません。まず説明を聞き、そのうえで治療を受けるかどうか考えていただければと思います。初診で行うことや予約方法は、こちらにまとめています。

初めて受診される方へ
パレスクリニックの下肢静脈瘤専門外来を初めて受診する方へ。診察・超音波検査の流れ、紹介状、費用、アクセスをご案内します。手術を前提とせず、治療の必要性から確認します。

参考文献・出典

[1]De Maeseneer MG, et al. Editor’s Choice – European Society for Vascular Surgery (ESVS) 2022 Clinical Practice Guidelines on the Management of Chronic Venous Disease of the Lower Limbs. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2022;63(2):184–267. doi:10.1016/j.ejvs.2021.12.024. 原文全文

[2]Gloviczki P, et al. The 2023 Society for Vascular Surgery, American Venous Forum, and American Vein and Lymphatic Society clinical practice guidelines for the management of varicose veins of the lower extremities. Part II. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2024;12(1):101670. doi:10.1016/j.jvsv.2023.08.011. 原文全文

[3]Rabe E, et al. Sclerotherapy in the treatment of varicose veins: S2k guideline of the Deutsche Gesellschaft für Phlebologie (DGP) in cooperation with the following societies: DDG, DGA, DGG, BVP. Hautarzt. 2021;72(Suppl 2):23–36. doi:10.1007/s00105-020-04705-0. 原文全文

[4]メドトロニック「下肢静脈瘤血管内治療」血管内接着材治療の製品説明。製造元の説明

[5]はまざき「Blue Dia」まつ毛エクステンション用接着剤の成分表示。本文ではエチルシアノアクリレートを主成分とする製品があることについて参照。製造販売元の成分表示

[6]国民生活センター「瞬間接着剤の使用によるやけどに注意―つけ爪用接着剤にも使用されています―」2024年6月19日。本文ではつけ爪用接着剤の成分について参照。原資料

[7]Cambridge University Hospitals「Patient Information on VNUS closure」、Norfolk and Norwich University Hospitals「Laser Treatment for Varicose Veins」。本文では熱治療後の内出血が経過とともに落ち着く説明について参照し、各施設の通院・制限や発生率を当院へ転用しない。高周波治療後の案内、レーザー治療後の案内

この記事を書いた人
春山興右

このブログでは、日々の診療の中で感じたことや、患者さんから実際によくいただく質問などをもとに書き始めました。
教科書的な内容はもちろんですが、本には書かれていない、現場で診療を続けていて初めてわかる知恵や皆さんが知りたいと感じることを、素朴に、わかりやすくお伝えしていけたらと思っています。

静脈瘤の診療は、国内外で取り組んできた医療ボランティア活動と並んで、私にとっては大切なライフワークであり、生きがいのような存在です。
ところどころ熱が入りすぎてしまったり、至らない点も多いかと思いますが、どうか温かい目でご覧いただけたら嬉しいです。

資格は、脈管専門医・指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医、皮膚科専門医、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターなどです(治療者兼当事者であり、毎日弾性ストッキングを履いています)。
よろしくお願いしますm(_ _)m

春山興右をフォローする
下肢静脈瘤の治療法と選び方
シェアする
春山興右をフォローする
タイトルとURLをコピーしました