「足の血管が浮いてきた気がする」
「夕方になると足がだるい、むくむ」
「放っておいて大丈夫なのか、受診すべきなのかがよくわからない」
このように感じるのはとても自然なことですし、実際によく御相談いただくことがあります。
下肢静脈瘤は多くの場合、命に直結するような病気ではありません。ですが、放置しているうちにだるさやむくみが強くなったり、皮膚のかゆみや湿疹、出血などのトラブルにつながることもあります。
だからこそ、病気に対する理解しておくと不安も減り、行動が必要かまでの判断もしやすくなるのではないかと思われます。
この記事では下肢静脈瘤について原因や症状、よくある誤解、予防、放置した時に起こりうること、受診する場合の目安などをまとめてみました。(内容は一般論としての目安になります)
静脈瘤とは何か(全体像)

下肢静脈瘤は、足の静脈の中にある弁の機能が下がり、本来足から心臓へ流れている血液が逆流してくることで、血管が浮き出てきたり、むくみやだるさなどの症状がでてくる疾患です。
複合的な原因で起こることも多く、体質や加齢に加え、長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしなどの生活習慣、妊娠、肥満などが誘因となっていることがあります。
ここで、最初に整理しておきたいポイントがあります。
注意しなければならないことの1つとして、「下肢静脈瘤であれば必ず見た目に血管が目立つとは限らない」ということがあります。
皮膚や血管の見た目の変化は必ずしも全員に起こるとは限らず、見た目の段階と、だるさや痛みなどの自覚症状が必ずしも一致するわけではありません。
血管があまり目立たなくても症状が強い方もいれば、見た目がはっきりしていても症状がない方も少なからずおられます。
また、静脈瘤の症状には幅があるということです。
夕方に強くなるだるさやむくみ、夜中のこむら返り、皮膚のかゆみや湿疹など、人によって困りごとはさまざまです。
そしてもう一つ大切なのが、生活の中の工夫で改善する可能性がある部分と、医療でないとなかなか変えにくい部分が混在しているという点です。
日常生活の工夫で楽になる段階や症状もあると私は考えていますが、セルフケアだけではどうしても改善させることが難しい部分もあることも事実だと思います。
この違いを最初に理解しておくと、
- 「今は生活で様子を見る段階か」
- 「一度、検査で現状を確認した方がよいか」
といったことなど、判断ができるようになってくるのではないか、と思われます。
下肢静脈瘤が起こる原因については、こちらの記事で詳しく解説しております。
静脈瘤で起こる症状(だるさ むくみ こむら返り 皮膚症状)

静脈瘤の症状は、「血管が浮き出る」ことだけではありません。
多くの方が最初に感じるのは、
- 夕方になると強くなる足のだるさや重さ
- むくみ
- つっぱるような違和感
といった、日常生活の中でのつらさです。
こうした症状は、はっきりとした血管の変化が目立たない段階から出ることも少なくありません。
そのため、「見た目はそれほどでもないのに、なんとなく足がつらい」という相談もよくあります。
このような症状はしばらくすると身体が慣れてしまい軽減することがよくあります。
しかし、さらに状態が進んでくると、皮膚のかゆみや湿疹、色が濃くなる、皮膚が硬くなるといった、皮膚側のトラブルが目立つようになることが多々あります。
この段階では、足の不快感だけでなく、皮膚症状が生活の負担になることが増えてきます。
症状の“出方”の特徴として
といったパターンを取ることが多い傾向があります。
一方で、
といった場合は、静脈瘤以外の原因が重なっている可能性もあり、注意が必要だと思います。
静脈瘤で起こる様々な症状については、こちらの記事で詳しく解説しております。
また、こちらでは足のむくみやだるさの原因や解消方法について詳しく解説しております。
まず何をすればいい(予防とセルフケアの基本)

「自分で治せないか?」という相談はよく受けますし、このように考えることはとても自然なことです。セルフケアには限界もあるのも事実ですが、一定の効果もあると私は考えています。
日常生活で意識したい基本は、次のようなものです。
まずは、ふくらはぎをしっかり動かすこと。
歩く、軽い運動をする、ストレッチを取り入れるなど、ふくらはぎの筋肉を使うことで、血液を心臓に押し戻す「筋ポンプ」が働きやすくなります。
二つ目として、立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢をできる範囲で減らすこと。
長時間同じ姿勢が続くと、静脈に血液がたまりやすくなってしまいます。
仕事の合間に少し歩く、足首を動かす、短い休憩を挟むだけでも負担は変わってきます。
三つ目は、静脈にかかる物理的な負荷を減らすことです。
体重の増加は静脈への圧を高める要因になるため、無理のない範囲での体重管理も、長い目で見ると効果があると思われます。
仕事のスタイルによっては現実的にはなかなか難しいこともあります。このような場合は、弾性ストッキングや着圧ソックスを取り入れることも選択肢の一つです。
すべての人に必要というわけではありませんが、だるさやむくみの軽減につながる場合があると思います。
長年臨床に携わってきて感じていることですが、「完璧にやろうとするのではなく、続けられる範囲で継続していくこと」が大切かと思います。
セルフケアのみではなかなか限界もあることも事実です。しかしながら、実際に医療機関に行くのはなかなかハードルが高く、まずは試してもいいのではないか、と私は考えています。
下肢静脈瘤になる原因やなりやすい職業などについて詳しく知りたい方は、これらの記事を参考にしてみてください。
放置するとどうなる(進行 皮膚炎 潰瘍 出血のリスク)

下肢静脈瘤は多くの場合、命に関わる病気ではありません。
一方で、ある程度進行している場合は、残念ながら自然に治ることも少なく、時間の経過とともに少しずつ状態が進んでいくことがあります。
初期のうちは、だるさやむくみといった不快感が中心ですが、年単位で放置してしまうと、かゆみや湿疹、皮膚の色が濃くなるなど、皮膚の変化が目立つようになることがあります。
さらに進むと、皮膚が硬くなったり、傷が治りにくくなったりと、日常生活への影響が大きくなる場合もあります。
実際の診療では、
という理由で様子を見続け、皮膚症状が出てから受診される方も少なくありません。
静脈瘤の治療は決して大急ぎでやる必要はありません。一方で、あまりにも長期間放置をしてしまうと、治りづらい皮膚の変化が出てきてしまうことがあることも事実です。
どの段階で医療機関をかかるかは個人差がありますが、1つの目安として皮膚症状が出始めたら、まずは検査で一度、状態を確認しておくことがいいのではないか、と私は考えています。そうすることが結果的に安心につながるケースが多いように感じています。
下肢静脈瘤を放置するとどうなってしまうのか、こちらの記事で詳しく解説しております。
破裂・出血するの? (くるぶし 足首の血管が気になる方へ)

長年静脈瘤の診療に携わっていると、
と不安に感じる方が少なくないことを感じます。
実際には静脈瘤というのは静脈の疾患であるため、脳の動脈瘤や腹部の動脈瘤のように破裂して命にかかわることは稀だ、という点です。
一方で、静脈瘤の場所や状態によっては、出血することも確かにあります。
特に、くるぶし付近や足首まわりの静脈瘤では、皮膚が薄く、ぶつけたり、かゆみで掻いた拍子に出血するケースが時々あります。シャワーをしている時に出血した、という方が多い印象です。
勢いよく出血することが多いので、多くの方は気が動転してしまうのですが、多くの場合、足を心臓より高く上げて、出血している部分を清潔なガーゼやタオルでしっかり圧迫する(圧迫止血)ことで、止血できることがほとんどです。
ただし、血液をサラサラにする薬を内服している場合や、何度も出血を繰り返す場合には、止まりにくくなることがあります。
止血ができても、根本的な原因である静脈瘤の治療をしないと、残念ながらまた再発してしまうことが多々るため、できれば早めに医療機関へ相談するのがよいと思われます。
下肢静脈瘤が破裂するとどうなるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しております。
静脈瘤と血栓 深部静脈血栓症(DVT)の原因になる?

「静脈瘤があると、血栓ができて命に関わるのではないか」
こうした不安を感じておられる方は少なくありません。
可能性は0ではありませんが、下肢静脈瘤そのものが、深部静脈血栓症(DVT)の直接的な原因になることは多くありません。
一方で、静脈瘤がある方に、浅い静脈に血栓ができる「血栓性静脈炎」は時々起こることがあります。
これは、触ると痛い、赤く腫れる、硬く感じるといった症状を伴うことがありますが、それほど危険な病態ではありません。
大切なのは、「血栓」という言葉をひとまとめにして考えすぎないことです。
血栓は「どこにできたか」で状態や危険性が全く異なります。
下肢静脈瘤で起こる血栓のリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しております。
動脈と静脈の違い(壊死 切断の不安を整理)

足の血管の病気というと、「壊死や切断につながるのではないか」と不安になる方も少なくありません。
この部分は、実はとても誤解が起きやすいポイントです。
血管には大きく分けて動脈と静脈があります。
動脈は、心臓から全身へ血液を送り出す役割を担っており、静脈は、体の末端から心臓へ血液を戻す役割をしています。
下肢静脈瘤は、このうち静脈側の病気です。
動脈の病気では、血流が途絶えることで強い痛みや壊死につながることがありますが、
静脈瘤では、血液が心臓へ戻りにくくなり、血液がたまりやすくなることで、だるさやむくみ、皮膚トラブルが中心になります。
そのため、静脈瘤があるからといって、切断に直結するような状態になることは通常ありません。
動脈と静脈の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しております。
静脈瘤の種類と治療法(予防でできることの限界)

下肢静脈瘤にはいくつかのタイプがあり、同じように見える「静脈瘤」でも、逆流が起きている静脈の場所や範囲によって、治療方針は変わってくることがあります。
「治療が必要かどうか」「必要な場合にどの方法を選ぶか」
は、見た目だけでは判断できないことがあり、正確な評価はエコー検査が必要になってきます。
検査を行っていない段階で「手術をするしかない」と思っている方も時々おられますが、逆流が起きている血管の部位や範囲によっては必ずしも治療は必要ではありません。状態によっては日常生活の工夫やセルフケアが、大切になってくると私は考えています。
一方で、逆流の場所や範囲によっては、生活の工夫だけでは、症状の改善に限界があることも事実です。
このような場合は御本人の「努力が足りない」という話ではなく、病態の問題であることがほとんどだと思います。
このため、症状が続くときや、セルフケアを続けても楽にならない時は、一度エコー検査を検討してもいいかもしれません。
静脈瘤の治療は、
「早い方がよい」「全員が必要」というものではありません。
自分のタイプと状況を知ったうえで、必要なタイミングで選択していく、ということになろうかと思います。
下肢静脈瘤の治療方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
再発が不安な方へ

下肢静脈瘤の治療を検討している方や過去に治療を受けた方で
「再発するのではないか」という不安に思っておられる方も少なくありません。
一口に「再発」といっても性質の異なるいくつかのパターンがあると思います。臨床的によく経験するのは以下の3種類です。
1.初回治療の対象となった静脈とは別の静脈に、新たに逆流が生じるケース
下肢静脈には複数のルートがあり、最初は問題のなかった静脈でも、時間の経過や体質、生活背景の影響で負担がかかり、後から静脈瘤として目立ってくることがあります。
2.初回治療時の評価や治療範囲が不十分だったケース
逆流の原因となっている静脈を正確に把握できていないと、一時的に見た目や症状が落ち着いても、時間が経って再び症状が出てきてしまうことがあります。
3.過去に行われていた再発しやすい治療法が影響しているケース
治療法の進歩により、現在では再発リスクを抑えやすい方法が選択できるようになっていますが、以前に受けた治療の内容によっては、再発という形で問題が表面化することがあります。
このように、「再発」といっても、原因も意味合いも異なる複数の状況が含まれています。再発を感じたときに大切なのは、まずはエコー検査を行い、どのタイプの再発に当てはまるのかを落ち着いて確認することが肝要だと思います。
再発という言葉だけが一人歩きしがちですが、正確に評価をすることで、落ち着いて対応がしやすくなると思います。
下肢静脈瘤の再発リスクについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
下肢静脈瘤は職業病?(立ち仕事 座り仕事と対策)

臨床の現場ではこのように感じている方は少なくないと感じています。
実際、立ち仕事や座り仕事が続くと、足の静脈に負担がかかりやすく、だるさやむくみといった症状が出やすくなることがあると思います。
これは、特定の職業が悪いというよりも、同じ姿勢が長く続き、足を動かす時間が少なくなることが関係しています。足の静脈は、歩いたり動いたりすることで血液を心臓に戻していますが、立ちっぱなしや座りっぱなしの状態が続くと、この流れが滞りやすくなります。
そのため、販売業や調理、医療 介護、デスクワークなど、仕事内容が違っていても、
「一日の中で足を動かす時間が少ない」という共通点があると、症状が出やすくなります。
対応としては、「可能な範囲でこまめに足を動かすこと」が肝要だと思いますが、現実的には仕事でなかなか難しいという場合もあるため、私は弾性ストッキングを取り入れてみるのもいいのではないか、と私は考えています。
また、対策や工夫をしても、なかんか症状が改善しない場合は医療機関の受診を検討するのがよいと思います。
自分が下肢静脈瘤になりやすい人なのか知りたい方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
男性の足のむくみ(性別関係なく静脈瘤になるのか)

足のむくみや静脈瘤は「女性に多いもの」という印象を持たれがちですが、実際には性別に関係なく起こります。しかし男性はやや発症率は下がる傾向にあります。
遺伝的な素因はあっても、男性は妊娠しないこと、足の筋力が比較的保たれている傾向があること、などが要因ではないかと私は考えています。
また、女性の方がスカートを履くことが多いからか、見た目を気にしやすいことも関係しているかもしれません。
このような背景から、変化があっても見過ごされやすい傾向があります。
大切なのは、「男性だから大丈夫」と決めつけず、むくみやだるさがいつ どんな場面で出ているのかを一度思い直してみてもいいかもしれません。
一人で抱え込んでしまうこともあるため、ご家族やご友人などのサポートがあると受診のきっかけになりやすいかと思います。
男性で足のむくみが気になる方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
何科を受診する(専門医はどこにいる)

下肢静脈瘤は「どこに相談すればいいか分からない」ことで 放置されやすい病気のひとつです。
地域や病院によって扱っている診療科が異なりますが、一般的には心臓血管外科、血管外科、皮膚科、形成外科などがあります。施設によっては扱っていない場合もありますので、事前に問い合わせた方がよいかもしれません。
また、診療科名だけで判断するより、担当医が上記の専門医資格を持っているかも一つの目安になります。日本では専門医資格がなくても診療科を標榜できてしまうためです。
さらに「血管内焼灼術実施医」かどうか、可能であれば「血管内焼灼術指導医」かどうかも確認しておくとより無難だと思います。指導医は申請要件として上記の専門医資格があるためです。
そして最も大切なこととして実際に多くの治療経験があるか、という実績も受診先選びでは大切なポイントになると思われます。「静脈エコーを含めて評価できるか」「静脈の病気を日常的に診ているか」を確認できるとよりよい選択につながるのではないかと私は考えています。
下肢静脈瘤の専門医を見つける方法については、こちらの記事を参考にしてみてください。
どのような場合に医療機関の受診を考えるべきか

どのくらいの症状があれば医療機関を受診すべきか、というのは多くの方が悩まれているところかと思います。一般的な目安としては次のような場合が該当するのではないかと私は考えています。
静脈瘤は「心配はしているものの様子見が続く」ことがしばしばある疾患です。症状が続いてしまっている場合やセルフケアをしても改善がないような場合、まずはエコー検査で現状を把握することがよいのではないか、と思われます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
ここまで、下肢静脈瘤について原因 仕組み 症状 放置した場合の変化 予防やセルフケア
そして受診を考える目安など整理してきました。
下肢静脈瘤は、「放っておくとすぐにどうかなってしまう病気」ではありません。
一方で、「あまりにも長期間放置しておくと生活に支障がでてしまう」こともあります。
ほとんどの場合、この間にある状態だからこそ、なかなか判断が難しいのではないかと思います。
実際、「生活の工夫で楽になる部分」と「医療機関で評価・治療をした方がよい部分」が
混在していることがよくあります。だからこそ、今の状態を一度、正確に把握しておくことが、大切になってくるのではないか、と私は考えています。
ご自身の症状だけでなく、身近な方の足のだるさやむくみについて考える際にも、
このページが判断の助けになれば幸いです。
なお、受診やご相談をご希望の際は、どうぞ遠慮なくお問い合わせください。
お一人おひとりの状況を踏まえ、対応いたします。













