「下肢静脈瘤は、飲み薬で治せますか?」
「浮き出た血管に塗る薬はありますか?」
診察では、このようなご質問をよくいただきます。
下肢静脈瘤に伴うむくみや重だるさ、痛み、かゆみなどは、薬によって和らぐことがあります。ただし、現在一般に使われている飲み薬や塗り薬は、働きが弱くなった静脈弁を元に戻したり、すでに浮き出た血管を消したりするものではありません。
大切なのは、「つらい症状を和らげること」と「静脈の逆流や浮き出た血管そのものに対処すること」を分けて考えることです。
一方で、静脈瘤があるからといって、すぐに治療が必要とは限りません。症状が軽く、日常生活に困っていなければ、薬や弾性ストッキング、生活上の工夫で様子を見られることもあります。
この記事では、飲み薬、塗り薬、市販薬、漢方薬やサプリメントで期待できることと、静脈瘤そのものへの治療との違いを分かりやすく整理します。
薬でできることと、静脈瘤そのものへの治療は異なります

下肢静脈瘤は、脚の静脈にある弁の働きが弱くなり、血液が下向きに逆流することなどによって起こります。静脈に圧がかかると、血管が浮き出たり、脚にむくみや重だるさを感じたりするようになります。
薬やそのほかの対策には、それぞれ異なる役割があります。
薬で症状が落ち着くことには十分な意味があります。ただし、症状が軽くなったことと、静脈の逆流がなくなったことは同じではありません。
また、静脈の逆流が見つかっても、症状や皮膚の変化が少なく、治療を急がなくてよい場合もあります。どこまで対処するかは、静脈の状態だけでなく、現在の困りごとやご希望も含めて考えます。
飲み薬で和らぐ可能性がある症状

日本にも、脚のむくみに使われる一般用医薬品があります
日本では、軽度の静脈還流障害による脚のむくみと、それに伴うだるさ、重さ、疲れ、つっぱり感、痛みの改善を効能とする一般用医薬品が承認されています。セイヨウトチノキ種子エキスを有効成分とする製品がその一例です。
ただし、こうした薬は症状を和らげるためのもので、浮き出た静脈瘤を消したり、静脈弁の働きを元に戻したりする薬ではありません。
また、「むくみ」「血流」「血行」と表示された商品が、すべて下肢静脈瘤に適しているわけではありません。医薬品とサプリメントでも、確認されている効能や品質管理の仕組みが異なります。
市販薬を利用する場合は、現在の添付文書で効能、対象年齢、使用できない条件などを確認しておくことが大切です。持病や服用中の薬がある場合は、購入時に薬剤師へ相談すると安心です。
欧州などでは「静脈作動薬」が使われています
欧州など一部の国や地域では、慢性静脈疾患による脚のむくみ、重さ、痛み、こむら返りなどを和らげる目的で、「静脈作動薬」と呼ばれる薬や成分が使われています。
症状が軽くなる可能性はありますが、効果の程度は薬剤や研究によって差があります。また、海外で使われている成分が、日本でも同じ効能の医薬品として承認されているとは限りません。
これらも主な目的は症状を和らげることであり、静脈弁の働きを元に戻したり、浮き出た血管を消したりする治療ではありません。
痛み止め、利尿薬、血液を固まりにくくする薬は役割が異なります
痛み止めで脚の痛みが軽くなることはあります。ただし、脚の痛みには筋肉、関節、神経、皮膚など、静脈瘤以外の原因もあります。薬が効いたかどうかだけで、痛みの原因が下肢静脈瘤だったとは判断できません。
利尿薬は、体内の余分な水分を尿として出すための薬です。心臓や腎臓などの病気に伴うむくみに使われることがありますが、静脈の血液が戻りにくいことで起こるむくみに、必ず使う薬ではありません。
抗凝固薬や抗血小板薬など、いわゆる「血液をサラサラにする薬」も、通常の下肢静脈瘤を治すための薬ではありません。別の病気のために処方されている場合は、自己判断で中止しないことが大切です。
下肢静脈瘤の治療を考える際に、服用中の薬をどのように扱うかについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
塗り薬や湿布で改善できること

塗り薬や湿布は、皮膚や筋肉などに現れている症状に合わせて使われます。
たとえば、保湿剤は乾燥を和らげ、炎症を抑える塗り薬は湿疹やかゆみの改善に役立つことがあります。消炎鎮痛成分を含む塗り薬や湿布は、筋肉や関節の痛みを軽くする目的で使われます。
下肢静脈瘤に伴う皮膚炎でも、塗り薬によって赤みやかゆみが落ち着くことがあります。ただし、皮膚の症状が改善しても、その背景にある静脈のうっ滞まで解消したとは限りません。
皮膚の上から薬を塗ることで、静脈弁の働きが元に戻ったり、浮き出た血管が消えたりするわけではありません。塗り薬は「何の症状を和らげるために使うのか」を分けて考えると分かりやすくなります。
漢方薬やサプリメントはどう考える?

漢方薬の中には、症状や体質に応じて、むくみなどに使われるものがあります。体に合えば症状が軽くなることはありますが、下肢静脈瘤の静脈弁を元に戻したり、逆流している静脈をなくしたりする効果が確認されているわけではありません。
漢方薬にも副作用や飲み合わせがあります。「自然由来だから、誰にでも安全」とは限りません。持病がある方やほかの薬を服用している方は、医師や薬剤師に確認しておくと安心です。
サプリメントは、医薬品と同じ効果が確認されているとは限りません。海外の診療ガイドラインに登場する植物由来の成分と、国内で販売されているサプリメントでは、成分量や品質、医薬品として承認されている効能が異なることもあります。
市販薬や漢方薬は、効能・効果や体質が合う場合には、症状を和らげる選択肢になります。一方、サプリメントは医薬品と同じ効果が確認されているとは限らないため、分けて考える必要があります。
弾性ストッキングや生活上の工夫にも役割があります

弾性ストッキングは脚の外から血液の戻りを助けます
弾性ストッキングは、脚を段階的に圧迫し、静脈の血液が心臓へ戻るのを助けます。下肢静脈瘤に伴うむくみや重だるさを和らげる方法の一つです。
薬と弾性ストッキングは、どちらか一方が優れているというより、働き方が異なります。症状や皮膚の状態、使いやすさに応じて選び、併用することもあります。
ただし、圧は強いほどよいわけではありません。サイズや圧が合わないと、痛みやずれにつながることがあります。
弾性ストッキングと着圧ソックスの選び方・正しい使い方は、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
無理のない範囲で脚を動かすことも大切です
歩行や足首の曲げ伸ばしは、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用を使い、脚の血液が戻るのを助けます。
こうした工夫で症状が軽くなることがあります。すでに起きている静脈の逆流を直接なくす方法ではありませんが、脚を楽に保つために続けやすい対策です。
浮き出た血管や静脈の逆流に対処する治療

診察と下肢静脈エコーで症状に関係する静脈の逆流が確認され、静脈瘤そのものへの治療を考える場合には、次のような方法があります。
硬化療法は、市販薬で症状を和らげる方法とは異なり、医療機関で硬化剤を静脈内に注入し、静脈瘤を閉じる治療です。
グルー治療も静脈内から血管を閉じる治療ですが、硬化剤ではなく医療用接着材を使います。血管内焼灼術では、レーザーや高周波の熱によって、逆流している静脈を閉じます。
どの治療が合うかは、血管の太さや位置、逆流の範囲、症状、皮膚の状態などによって異なります。
治療法の詳しい違いは、以下の記事でもまとめていますので、参考にしてください。
静脈瘤がある方全員に、これらの治療が必要なわけではありません。症状がほとんどなく、皮膚の変化もなければ、経過を見られることもあります。治療が選択肢になった場合も、急いで決める必要はありません。
薬で様子を見てよいか迷ったときは

薬や生活上の工夫で症状が落ち着き、日常生活に困っていなければ、すぐに治療を決める必要はありません。
一方、次のような状態が続き、薬を続けるか、静脈瘤への治療を考えるか迷う場合は、一度静脈の状態を確認しておくと判断しやすくなることがあります。
見た目だけでは、症状に関係する逆流があるか、どの静脈に問題があるか分からないこともあります。下肢静脈エコーでは、静脈の血流や逆流の有無を確認できます。
今後どのように付き合っていくか整理したいときは、医療機関への相談を検討してもよいでしょう。検査を受けたからといって、その場で治療を決める必要はありません。
よくある質問
薬を飲み続ければ、浮き出た血管は消えますか?
飲み薬で、むくみや重さ、痛みなどが軽くなることはあります。ただし、静脈弁の働きを元に戻したり、すでに浮き出た血管を消したりするものではありません。
見た目の血管が気になる場合は、血管の太さや逆流の有無によって、硬化療法などの治療を検討することがあります。
市販薬や漢方薬を試してから受診してもよいですか?
症状や体質が効能・効果に合い、添付文書上使用できる方であれば、市販薬や漢方薬を試すことも選択肢の一つです。持病や服用中の薬がある場合は、購入時に薬剤師へ確認すると安心です。
症状が続く場合や皮膚の変化がある場合は、市販薬を替えながら長く様子を見る前に、一度原因を確認してみてもよいかもしれません。検査を受けても、その場で治療を決める必要はありません。
薬と弾性ストッキングは、どちらがよいですか?
役割が異なるため、一律にどちらがよいとはいえません。
飲み薬は症状に応じて使い、弾性ストッキングは脚の外から静脈の血液が戻るのを助けます。症状や皮膚の状態、続けやすさに応じて選び、併用することもあります。
まとめ
下肢静脈瘤に対する薬は、「効く」「効かない」の二つだけでは分けられません。
飲み薬、市販薬、漢方薬、塗り薬によって、むくみ、重さ、痛み、かゆみなどが和らぐことはあります。一方で、これらの薬は通常、静脈弁の働きを元に戻したり、逆流している静脈や浮き出た血管をなくしたりするものではありません。
弾性ストッキングや歩行、足首の運動にも、症状を楽にする役割があります。それぞれが何のための方法なのかを分けて考えると、自分に合った選択がしやすくなります。
薬で様子を見てよいのか、静脈瘤への治療を考えた方がよいのか迷う場合は、一度静脈の状態を確認してみてもよいかもしれません。
当院では、診察と下肢静脈エコーをもとに、治療が必要かどうかを一緒に整理します。治療が必要でない場合もありますし、治療が選択肢になっても、その場で決める必要はありません。ご希望や生活状況に合わせて考えていきます。
薬で様子を見てよいか迷っている方へ
症状が生活に影響している、皮膚に変化がある、薬だけで様子を見てよいか判断しにくいという場合は、自己判断で長く悩みすぎず、必要に応じてご相談ください。
診察では、症状と生活への影響を確認し、必要に応じて下肢静脈エコーで静脈の逆流や血栓の有無を確認します。検査結果とご希望をもとに、経過観察を含めて今後の選択肢を一緒に整理します。





