下肢静脈瘤の治療を専門の医師が完全ガイド

下肢静脈瘤の治療法と選び方

圧迫療法からカテーテル治療(レーザー・高周波・グルー)、費用、治療を受ける上で休薬が必要な薬、術後の過ごし方まで

下肢静脈瘤の治療と一口にいっても状態は患者さん個々によって異なります。

このため、

「放置していいのか」「本当に手術が必要なのか」「結局どれが一番いいのか」

など、大変よく相談を受けますし、実際に悩まれている方が多くいらっしゃると感じています。

このため、この記事では治療に関するトピック・全体像をできるだけわかりやすく整理して、患者さん御自身が必要な行動をとりやすくなる様まとめてみました。

出血しないか不安になっている方、どの治療法がいいか迷っている方、さらに費用や飲んでいる薬をやめなくていいのか、心配な方まで、様々な方が、この記事で全体像をつかんでもらえると幸いです。

静脈瘤の治療とは何か(全体像)

下肢静脈瘤は多くの場合「静脈の弁が弱って血液が逆流してしまう」ことが背景にあります。

治療の目的は人それぞれだと思いますが長年、静脈瘤の診療に携わってきた経験から、最もよくあるのは次の3つかと思います。

  • 症状(だるさ、むくみ、こむら返り、痛み等)を減らす
  • 皮膚炎、色素沈着、ただれ、潰瘍、出血などの皮膚症状、トラブルを改善させる
  • 血管の状態を正確に把握し、今後の見通しを踏まえて納得できる選択につなげる

ここで大事なのは 「静脈瘤の治療=すぐ手術」ではないことです。

手術が必要かどうかは見た目だけでは決まりません。症状・皮膚の変化・静脈エコーの結果を踏まえた判断の目安は、以下の記事で詳しく解説しています。

一方で、逆流の程度が一定以上になっており、日常生活に支障がある場合や出血などの合併症が起きている場合は、生活改善だけでは限界もあるため、根治治療を検討していく、ということになるかと思われます。

高血圧治療などで運動療法や食事療法を行なっても改善しない場合に投薬になるのと似ているかもしれません。

治療選びは基本的に次の順番で整理していくとよいかと思います。

  • どのタイプか(ボコボコ、網目状、クモの巣状など)
  • 逆流の原因がどこか(下肢静脈エコーで評価する)
  • 目的と価値観の整理(今の症状を改善させるだけでなく、長期的にみて再発を予防する)
  • 選択肢を比較検討(メリット、デメリット)し納得した上で主体的に治療をするか決定する

治療法を選ぶ前には、静脈エコーで逆流の場所・範囲や血栓の有無を確認します。検査の流れや分かることは、以下の記事で詳しく解説しています。

よくある誤解ですが、

  • 「どれかが絶対に一番」ということはなく、ご年齢や体の状態で最適解が変わる
  • 圧迫療法は非常に有効な治療であるものの、それだけでは根治できないことがある
  • 新しい治療が常に万能というわけでは必ずしもなく、状態により向き不向きがある

ということです。

主な治療法がどのように働くかを、先にまとめておきます。どれが自分に合うかは、症状や静脈エコーの結果、ご本人の希望を踏まえて医師と相談して決めます。[1, 2]

治療法主な働きと、選ぶときに確認すること
レーザー・高周波(血管内焼灼術)熱で逆流している静脈を閉じます。逆流の場所や血管の走り方を確認して、治療に適しているか判断します。
グルー治療(血管内塞栓術)接着剤で逆流している静脈を閉じます。熱を使わない方法ですが、血管の状態やアレルギー歴などを確認して選びます。
硬化療法静脈に薬を注射して閉じる治療です。主に枝分かれした血管や細い血管などに用いられます。
弾性ストッキングなどの圧迫療法足を圧迫して、静脈由来のだるさやむくみを和らげます。サイズ・圧・足の状態を確認して使います。静脈を閉じる治療とは役割が異なります。

必要に応じて、複数の方法を組み合わせることもあります。[2]

ここからはよくあるケースや判断に直結するテーマから各記事の要点をまとめていきます。必要があればリンクの詳細ページもご覧ください。

静脈瘤が破裂 出血したらどうする(応急処置と再発予防)

足首や膝付近の血管が浮き出ている方で、ある日ふと擦れたり、掻いたりして出血してしまうケースがあります。シャワーをしている時やぶつけてしまい起こることが多い印象があります。

慌ててしまうのは仕方がないのですが、まず大切なのは「止血の行動を取る」ことです。

一般的には静脈からの出血は足を心臓より高く上げ、圧迫することで止まりやすいとされています(血液サラサラの薬など内服されている場合は止まりにくいこともあります)。

大切なことは止血をできたとしても、そのまま放置しておくと中長期的には再出血してしまうことが多いことです。出血した部位だけ処置して終わりにするのではなく、医療機関で原因を正確に評価して、再発しないように根治治療を計画することが重要になります。

浮き出ている血管から出血しないか心配な方はぜひ、こちらの記事を参考にしてみてください。

グルー治療が一番いいの?(向き・不向きと注意点)

グルー治療は医療用の接着剤(シアノアクリレート)であり逆流の原因になる静脈を内側から閉じる治療になっています。

熱を使わないためレーザーや高周波の治療と比べて痛みや神経への影響が少ないと考えられています(これらは術者の技量が大きいため経験を積んだ専門医が施行する場合、問題になることは稀です)が、アレルギー反応などが起こることがあります。また、血管の走行によっては最適とはいえないこともよくあります。

重要なのは 「新しい治療=全員に最適、一番いい」ではないことです。血管の形や太さ、既往歴、アレルギー歴、生活スタイルで向き・不向きが変わってきます。

後悔しないためには治療についてのメリット、デメリットを理解したうえで 自分に合うかを確認するのが無難かと思います。

グルー治療について興味がある方は、こちらの記事を参考にしてみてください。

血管内焼灼術(レーザー 高周波)で後悔しない理解

血管内焼灼術は逆流の原因となる静脈をカテーテルで内側から治療する方法で、現在の標準的な治療の1つです。

レーザーと高周波のいずれでも、問題がないことが多いですが、使用する機器や特性に違いがあります。レーザーの場合は波長(例:980nmと1470nm)で術後の痛みや神経障害リスクにやや違いがあることがあり、機器選択も大切だと思います。基本的に保険認可されており、比較的新しい器械は問題がないことが多い傾向にあります。

カテーテル治療は体への侵襲が極めて小さく安全ですが、治療そのものだけでなく、術後の生活などについても一緒に理解しておくのがおすすめです。

下肢静脈瘤の治療方法について知りたい方はぜひ、こちらの記事を参考にしてみてください。

下肢静脈瘤治療の費用は?

下肢静脈瘤の治療は基本的に保険診療になります。日本は国民皆保険制度があるため、諸外先進国と比較すると患者さんの自己負担が大きく抑えられているのが特徴です。

そうはいっても費用は受診や治療の壁になってしまうことがあります。ここを曖昧なまま捉えていると、ついつい問題を先送りしてしまい病状を悪化させてしまうことがあります。一度理解しておくことが大切かと考えています。

多くの場合、手術になったとしても3〜5万円前後の自己負担に収まることが多くなっています。また、人によっては

  • 高額療養費制度(1か月の自己負担が一定額を超えた分が後から払い戻される)
  • 生命保険の給付金(日帰り手術が対象になる場合がある)

などが使える場合は自己負担がさらに下がることもあります。

体や病気にきちんと向き合うことは必要で大切ですが、現実的な費用の問題を無視することはできません。

あらかじめ 「いくらかかるか」だけでなく 「どう備えられるか」まで整理できると 次の一歩が踏み出しやすくなります。

より具体的な金額について別記事で詳しく解説しております。

下肢静脈瘤の治療を受ける時に注意すべき薬(自己判断で止めない)

治療が決まったときに 多くの方が一番不安になるのが「今飲んでいる薬はどうするのか」ということです。

一番やってはいけないのは自己判断で勝手に薬をやめてしまうことです。

むやみに中止すると、別の大きなリスク(脳梗塞や心筋梗塞など)を上げてしまうことがあります。

注意が必要な薬の例としては

  • ホルモン剤(副作用で血栓ができやすくなることがある)
  • 骨粗しょう症の治療薬の一部
  • 内服ステロイド(自己判断で中止せず、処方医と治療を担当する医師に確認してください。服用量や期間、治療内容に応じて、継続や調整を判断します)
  • 免疫抑制薬や副腎皮質ステロイド(免疫低下で化膿しやすくなることがある)

などがあります。

また よくある質問されることとして「血液サラサラの薬は止めなくていいのか」というものがあります。

カテーテル治療では通常切開をしないので中止不要とされているのですが、切開が必要な手術では一時中止することがありえます。しかしながら、カテーテルの発展により、ほとんどの手術は切開不要になっているため、切開を勧められている場合は本当に必要なのか確認した方がいいかもしれません。

ご自身でできることとしては、

  • できればお薬手帳を持参して 服用中の薬を正確に伝える
  • 切開が本当に必要か確認する

ことを押さえておけば、安全性が高まるかと思われます。

下肢静脈瘤の治療前に確認したい薬や、継続・調整の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しております。

手術後の生活

日帰り治療が増えたことで

  • 「いつから普段通りに過ごしていいのか」
  • 「運動や飲酒 入浴は大丈夫なのか」
  • 「特別なリハビリは必要なのか」

といった疑問を感じる方も少なくありません。

通常は当日から普通に歩くことができますし、仕事に支障をきたすこともほとんどなくなっています。

術後に起こりうる痛み(多くは軽度)や内出血や違和感についても事前にある程度知っておくこと落ち着いて経過を見守ることができることが多いと思います。

こちらの記事では、下肢静脈瘤手術後の生活で注意すべき点を詳しく解説しております。

下肢静脈瘤は何科を受診する(専門医の探し方)

下肢静脈瘤は「どこに相談すればいいか分からない」ことで 放置されやすい病気のひとつです。

心臓血管外科、血管外科、皮膚科、形成外科などで扱われますが施設によって扱っていない場合もありますので、事前に問い合わせた方がよいかもしれません。

また、診療科名だけで判断せず、担当医が上記の専門医資格を持っているかも一つの目安になります。日本では専門医資格がなくても診療科を標榜できるためです。

さらに「血管内焼灼術実施医」かどうか、可能であれば「血管内焼灼術指導医」かどうかも確認しておくと無難だと思います。「血管内焼灼術指導医」は申請要件として上記の専門医資格があるためです。

また、実際に多くの治療経験があるか、という実績も受診先選びでは大切なポイントになると思われます。

良い下肢静脈瘤の専門医に出会う方法についてはこちらの記事で詳しく解説しております。

弾性ストッキング 着圧ソックス(圧迫療法)

圧迫療法は 静脈由来のだるさやむくみを和らげる目的でまず検討されることの多い方法です。特に静脈瘤の程度が比較的軽い段階では有用なことがあります。

一方でサイズや圧が合っていない状態で使用を続けてしまうと、皮膚への食い込みや皮膚の障害を招くことがあり注意が必要です。重要なのは

  • 足の状態に合ったサイズを選ぶこと
  • 目的に応じた適切な圧を選ぶこと
  • 皮膚に異常が出ていないかを確認すること

です。

可能であればとくに初回は弾性ストッキング圧迫療法コンダクターに着用状態を確認してもらうと安全だと思われます。

弾性ストッキングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。


下肢静脈瘤は自分で治せる?(できること・できないこと)

「できれば自分で治したい」という気持ちは自然なことだと思います。私自身も自己でやれることをいつも行っています。ただ、下肢静脈瘤に関連するものには“生活で整えられる部分”と“医療でしか変えにくい部分”が混在しています。ここを理解していると判断がぶれにくくなるのではないか、と思われます。

できることとして、主に

  • 長時間同じ姿勢を減らす
  • ふくらはぎを動かす
  • 体重管理
  • 弾性ストッキングなどの圧迫療法

があります。これらは静脈のうっ血を減らし、だるさやむくみの軽減に役立つ可能性があると私は考えています。

一方でできないこととして“故障してしまった弁そのものを治すこと”です。

弁の故障がはっきりとしており、その程度(部位や区間)がはっきりとしている場合は残念ながら医療機関で治療を受ける方が改善への近道であることもあります。

だからこそ 「セルフケアで整える部分」だけでなく、必要なら「医療で補う部分」を理解しておくこと、症状がある場合は一度検査を検討することが適切な判断につながると思われます。

下肢静脈瘤の予防方法についてはこちらの記事で解説しております。

下肢静脈瘤の種類と治療法(脚の健康を守るために知っておきたいこと)

静脈瘤は一見似たように見えてもいくつかのタイプがあり、タイプによって適した治療が変わります。

たとえば

  • ボコボコと盛り上がる太い静脈瘤
  • 皮膚の下に網目状に広がって見えるタイプ
  • クモの巣状の細い血管

などがあります。

「どこに原因があり 何を優先して治療するべきか」で対応が異なります。

エコー検査をすることで、正確に状態を把握することで、どの治療を選ぶべきか理解しやすくなります。

静脈瘤の治療というと手術しかない、と思われがちですが、実際には状態によって最適解は変わりますし、そもそも治療が必要ないこともあります。状態に応じて適切に選択していくことが肝要になってくると思われます。

下肢静脈瘤の治療方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をチェックしてみてください。

糸ミミズ状の毛細血管 青・赤・紫の血管(硬化療法とYAGレーザー)

「ふくらはぎ、太ももの糸ミミズのような血管」「青 赤 紫の細い血管」は相談の多い状態です。

このタイプは痛みやむくみなどの症状が出ないこともあるため、治療はせずに経過を見ていただくことがあります。

一方でその背景に伏在静脈瘤など、実は太い静脈の逆流が隠れていることもあります。見た目だけで判断をしてしまい、エコー検査をすることを怠ってしまうと、ここを見落としてしまうことにつながります。

治療の前提には正確な評価が必要であり、これを踏まえた上で治療法を決めていくことが肝要になると私は考えています。

足の血管の症状で気になる部分がある、という方はこちらの記事を参考にしてみてください。

どのような場合に医療機関の受診を考えるべきか(一般的な目安)

どのくらいの症状があれば医療機関を受診すべきか、というのは多くの方が悩まれているところかと思います。一般的な目安としては次のような場合が該当するのではないかと私は考えています。

  • 出血してしまった。または足首周りの血管が薄く盛り上がっている
  • だるさ、むくみ、こむら返り、痛みなどが続いている
  • かゆみ、赤み、黒ずみ、皮膚の硬さ、ただれなどの皮膚の変化がある
  • しこり、痛み、熱感など炎症を伴っている
  • 片足だけ急に強く腫れた、痛み 息切れ 胸痛などがある(できれば早めに総合病院での評価が無難)

高齢の方も、年齢だけで治療の可否が決まるわけではありません。持病・服薬・歩行や通院状況を含めた考え方など、以下の記事で解説しています。

参考文献・出典

[1]Tan M, et al. Truncal ablation: Techniques. Phlebology. 2024;39(2):132–134. doi:10.1177/02683555231211087.

[2]Gloviczki P, et al. The 2023 Society for Vascular Surgery, American Venous Forum, and American Vein and Lymphatic Society clinical practice guidelines for the management of varicose veins of the lower extremities. Part II: Endorsed by the Society of Interventional Radiology and the Society for Vascular Medicine. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2024;12(1):101670. doi:10.1016/j.jvsv.2023.08.011.

まとめ

静脈瘤の治療はどれが一番か、ということではなく、「状態を把握・理解し適切な治療を選択する」ということが大切です。

検査はエコーであり体への侵襲もなく安全ですので、症状があり、不安に感じているようであれば、行動を起こしてみてもよいかもしれません。

また、静脈瘤の治療はほとんどの場合、緊急性もないため仮に検査で異常が見つかったとしても必ずしも急いで治療を決めなければならない、ということはないはずです。このため、即決をする必要はなく一度冷静に考えてから決めることもできます。

一人で抱え込まずにまずは現状を把握するところから始めるのが適当かと思われます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ご自身の症状だけでなく、身近な方で気になる点が思い当たる場合にも、この記事がお役に立てば幸いです。

当院で行っているカテーテル治療・硬化療法・圧迫療法の概要は、静脈瘤専門外来の「治療法について」でご確認いただけます。

なお、受診やご相談をご希望の際は、どうぞ遠慮なくお問い合わせください。

お一人おひとりの状況を踏まえ、対応させていただきます。

この記事を書いた人
春山興右

このブログでは、日々の診療の中で感じたことや、患者さんから実際によくいただく質問などをもとに書き始めました。
教科書的な内容はもちろんですが、本には書かれていない、現場で診療を続けていて初めてわかる知恵や皆さんが知りたいと感じることを、素朴に、わかりやすくお伝えしていけたらと思っています。

静脈瘤の診療は、国内外で取り組んできた医療ボランティア活動と並んで、私にとっては大切なライフワークであり、生きがいのような存在です。
ところどころ熱が入りすぎてしまったり、至らない点も多いかと思いますが、どうか温かい目でご覧いただけたら嬉しいです。

資格は、脈管専門医・指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医、皮膚科専門医、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターなどです(治療者兼当事者であり、毎日弾性ストッキングを履いています)。
よろしくお願いしますm(_ _)m

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