下肢静脈瘤を治療すると、表面のこぶもなくなる?一緒に治療する場合と、後で判断する場合

下肢静脈瘤の表面のこぶについて、同時に治療する場合と経過をみる場合を伝える画像 下肢静脈瘤の治療法と選び方

「カテーテルで治療すると聞いたけれど、ふくらはぎのボコボコはどうなるの?」
「表面のこぶも、同じ日に治療した方がよいのでしょうか?」

逆流の原因となっている、幹にあたる血管を治療すると、表面のこぶが小さくなることはあります。ただし、幹の血管の治療だけで、すべてのこぶがなくなるとは限りません。

こぶへの処置には、切除のほか、レーザーで血管を閉じる瘤焼灼や、注射で行う硬化療法などがあります。幹の血管と同時にこぶを扱うか、後日必要な処置を追加するかは、方法や血管の状態によって考え方が異なります。

当院では、追加の硬化療法は基本的に後日行っています。この記事では、幹の血管とこぶの関係、切除以外の選択肢、そして私が硬化療法を後日考える理由と、追加治療についての臨床経験をお伝えします。

本幹の治療と、表面のこぶの治療は役割が違います

脚の血管を超音波で確認する検査のイメージ

私は診察で、足の静脈を、木を上下ひっくり返したような形にたとえて説明しています。木には幹があり、そこから枝が分かれますよね。足の静脈にも、幹にあたる血管と、そこから枝分かれした血管があります。

この幹にあたる血管を「本幹」、枝にあたる血管を「側枝」と呼びます。表面に見えるボコボコしたこぶが、枝の部分にできていることがあります。

その枝のこぶに、幹にあたる血管から血液が逆流してきていることがあります。そのため、見えているこぶだけでなく、つながっている幹の血管もエコーで確認します。

幹の血管の治療は、そこからの逆流を止めるために行います。一方、表面のこぶへの処置は、ふくらんだ枝の血管を直接扱うものです。図で見ると、この違いが分かりやすいかと思います。

伏在静脈の本幹と、表面に浮き出た枝の静脈瘤を分け、本幹の逆流を止める治療と枝への処置の役割を示す模式図
図1:本幹の逆流を止める治療と、表面に浮き出た枝の静脈を扱う処置。実際の血管のつながり方には個人差があります。

本幹を治療すると、枝の静脈にかかる負担が減り、こぶが自然に小さくなることがあります。しかし、残るこぶもあるため、「原因の治療」と「こぶへの処置」をどう組み合わせるかを考えます。参考:欧州のガイドライン(2022年)、4.6.4

本幹に行うレーザー・高周波のカテーテル治療については、こちらの記事で、方法や治療後の経過を詳しく説明しています。

表面のこぶは、必ず切除するのですか?

ふくらはぎの表面に見える静脈瘤のイメージ

これまで、表面のこぶを扱う代表的な方法として、小さな皮膚の切開から静脈瘤を取り出す「スタブアバルジョン」が行われてきました。

最近は、できるだけ皮膚を切開せずに治療する方法が広がり、枝の静脈瘤にレーザーを用いる「瘤焼灼」も選択肢になっています。日本静脈学会も2025年に、この治療についてのガイドライン追補を公表しています。参考:側枝静脈瘤に対するレーザー焼灼術の追補

瘤焼灼は、レーザー光を出す細い器具を血管の中へ入れ、熱で閉じる方法です。皮膚を切開せずに行えますが、針を刺す穿刺は必要です。

この追補が対象としているのは、本幹と同時に枝の静脈瘤を治療する必要がある場合です。すべてのこぶに同じ方法が向くわけではなく、血管の走り方や、皮膚との位置関係などをエコーで確認して適応を判断します。皮膚に近い血管を熱で治療するため、周囲の皮膚や神経を保護することも大切です。参考:追補の英語版・適応と手技

「こぶがあるから必ず切除する」と決めるのではなく、どの血管を、どの方法で扱うかを考えます。

同時に治療するか、後日にするかは、方法によっても違います

治療方法と時期について説明を受ける相談のイメージ

本幹と表面のこぶを同じ日に治療する方法もあります。一方、血管の形や位置、体調などを考え、日を分けて処置する場合もあります。

「最初の治療でこぶをどこまで扱うか」と、「後から硬化療法を追加する必要があるか」は、分けて考えます。硬化療法を後日行う方針だからといって、最初は本幹だけを治療し、表面のこぶには何も処置しないとは限らないのです。

方法と時期を合わせて説明を受けると、どの血管を処置し、どの血管の経過を見るのかが分かり、治療後の変化も理解しやすくなります。

なぜ硬化療法は、すぐに追加せず後日考えるのですか?

ふくらはぎの状態を診察で確認するイメージ

硬化療法は、静脈瘤の中へ薬を注射して血管を閉じる方法です。切開せずに行える一方、治療した場所に茶色い色が残る「色素沈着」が生じることがあります。

この色素沈着の問題もあるため、当院では、硬化療法は基本的に最初の治療とは日を分け、二期的に行っています。

本幹の治療後に小さくなるこぶもあります。残った血管が気になるからといって、すぐにすべてへ注射を追加するのではなく、経過をみて、その時点の症状やこぶの状態から必要性を考えます。

「後から硬化療法を追加する方は多いのでしょうか」と気になるかもしれません。私の臨床経験では、静脈瘤の治療後に硬化療法の追加が必要になるケースは、全体の5%弱という印象です。

また、焼灼や硬化療法で閉じた血管が、その場ですべて見えなくなるわけではありません。治療した血管がしばらく硬く触れたり、内出血が出たりすることもあり、落ち着くまでには時間がかかります。

硬化療法の効果が分かるまでの経過や、色素沈着などの注意点は、こちらの記事で説明しています。

治療を相談するときに、確認しておきたいこと

医師に気になることを相談する診察のイメージ

「こぶが残るのが気になる」「できれば処置を一度にまとめたい」「一度に広い範囲を治療するのは気が進まない」。このような希望も、説明を受けるときにそのまま伝えてよいと思います。

希望だけで方法を決めるのではなく、エコー検査で分かる血管の状態と、治療で期待できる変化を合わせて考えます。次の3点が分かると、治療後の経過も想像しやすくなります。

相談で確認したい3つのこと

  • 本幹の逆流と、気になっているこぶはどうつながっているか。
  • こぶも同時に処置するか、経過を見るか。その理由は何か。
  • 経過を見る場合、いつ、どのような症状や血管の変化を確認するか。

本幹の逆流を止める治療と、表面のこぶを扱う処置には、それぞれの役割があります。切除以外の選択肢もありますが、すべてのこぶへ一度に処置を加えるわけではありません。当院では色素沈着の問題も考え、硬化療法は基本的に後日、必要性を判断しています。

本記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。どこが気になるか、どの点を迷っているかが、うまくまとまっていなくても構いません。治療を決める前に、気になるこぶの場所や、治療後にどうなるのか知りたい点をお伝えください。

受診をご希望の方は、初診のWeb予約や、お電話でのご相談をご利用いただけます。

この記事を書いた人
春山興右

このブログでは、日々の診療の中で感じたことや、患者さんから実際によくいただく質問などをもとに書き始めました。
教科書的な内容はもちろんですが、本には書かれていない、現場で診療を続けていて初めてわかる知恵や皆さんが知りたいと感じることを、素朴に、わかりやすくお伝えしていけたらと思っています。

静脈瘤の診療は、国内外で取り組んできた医療ボランティア活動と並んで、私にとっては大切なライフワークであり、生きがいのような存在です。
ところどころ熱が入りすぎてしまったり、至らない点も多いかと思いますが、どうか温かい目でご覧いただけたら嬉しいです。

資格は、脈管専門医・指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医、皮膚科専門医、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターなどです(治療者兼当事者であり、毎日弾性ストッキングを履いています)。
よろしくお願いしますm(_ _)m

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