下肢静脈瘤の手術で後悔しないために|受ける前に確認したいこと

診察で足の静脈の図を確認する場面と、手術で後悔しないために受ける前に確認したいことの見出し 下肢静脈瘤の治療法と選び方

「静脈瘤の手術は、受けた方がよいのでしょうか?」

「手術をしてから、思っていたのと違うと感じることはないでしょうか?」

治療を勧められても、本当に自分に合うのか、迷うこともあると思います。この記事では、手術で後悔しないために、受ける前に確認しておきたいことを、できるだけわかりやすく解説します。

結論としては、「何を改善したいのか、その治療でどこまで変わる見込みなのか、治療後はどう過ごすのかを確認してから決めることが大切」ということになるかと思います。下肢静脈瘤があるからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。

手術をするかどうかは、まず何で判断する?

足の血管がボコボコしていても、症状がほとんどなく、経過を見てよい場合があります。一方で、だるさやむくみが生活の負担になっていたり、湿疹や黒ずみなどの皮膚症状があったりすれば、治療を検討することがあります。[1]

私の診察では、まず今困っていることを伺い、足の状態と、超音波検査で分かる静脈の逆流などを合わせて考えます。血管の見た目だけで、手術をするかどうかを決めるわけではありません。

「仕事が終わると足が重い」「夜中につって目が覚める」「見えているこのこぶが気になる」など、普段困っていることをそのまま伝えていただければと思います。相談の段階で、治療法まで決めておく必要はありません。

治療後に症状が残ることはある?

静脈の逆流に関係するだるさやむくみ、痛みなどは、治療による改善が期待できます。ただ、足の症状には筋肉や神経など別の原因が重なっていることもあり、静脈瘤を治療すれば、気になっていることがすべてなくなるとは限りません。[1]

例えば、むくみと痛みの両方があっても、どちらも同じ原因とは決まらないということです。治療を受ける前に、「今の症状のうち、どれに改善が期待できますか。残る可能性があるのは、どの症状ですか」と聞いてみると、見通しを整理しやすいと思います。

手術をしても、表面のこぶが残るのはなぜ?

表面に見えるこぶと、逆流の原因になっている血管は、同じ場所とは限りません。足の静脈には幹にあたる血管と、そこから枝分かれした血管があり、見えているこぶが枝の部分にできていることがあります。幹の治療で枝にかかる負担が減り、こぶが小さくなることもありますが、残ったこぶへの処置を別に考える場合もあります。[2]

そのため、「手術をする」と聞いたときは、どの血管を治療する予定なのかも確認しておくとよいと思います。気になる場所を指して、「ここも同じ日に処置しますか。それとも、小さくなるか経過を見てから考えますか」と聞いてみてください。

こぶへの処置を同時に行うか、後で判断するかは、足の状態や希望を踏まえて考えます。見えている血管が残った、ということだけで、治療がうまくいかなかったと判断することはできません。予定していた治療範囲と、その後の経過を合わせて確認することが大切です。

手術のデメリットや術後の負担は、どこまで確認する?

下肢静脈瘤の治療には複数の方法があり、注意点も異なります。レーザー・高周波では治療後につっぱり感や違和感が出ることがあり、グルーでは接着剤へのアレルギー、硬化療法では茶色い色が残る色素沈着などに注意します。自分に予定されている方法について、よい点と注意点の両方を確認しておくとよいと思います。[1,2]

手術後の内出血やつっぱり感は、時間とともに軽くなることがあります。起こり得る変化や注意点は、治療する場所や方法によって異なります。予定している治療の通常の経過と、医療機関へ連絡する目安を確認しておくとよいと思います。[2]

痛みについては、私の診療経験では、レーザー・高周波の手術後も、ほとんどの方はあまり痛みを感じずに過ごされています。当院では麻酔の注射に非常に細い針を使っており、静脈麻酔を併用することがあります。ただし、痛みの感じ方や治療する範囲には個人差があります。

麻酔の方法と術後の痛みは、こちらの記事で詳しく説明しています。手術の痛みが気になって決められない方は、参考にしてみてください。

下肢静脈瘤の手術は痛い?麻酔と術後の痛みについて
下肢静脈瘤の手術の痛みが気になる方へ。レーザー・高周波治療の麻酔、術後の痛みと日常生活について、専門の医師が診療経験も交えて解説します。

再発したら、手術の失敗ということ?

治療後に再び血管が目立つ原因には、治療した静脈が再び開くこと、初回の治療後に逆流が残っていること、別の静脈に新しい逆流が起こることなどがあります。同じ「再発」でも、どの血管に何が起きているかによって、原因や対応が異なります。[2]

「治療したのに症状が残った」「また血管が目立ってきた」ときには、過去にどのような治療を受けたかも含めて、現在の静脈の状態を確認します。再発や症状が残ることを、すべて初回手術の問題と決めつけることはできません。原因に応じて、追加の治療を考える場合も、経過を見る場合もあります。[2]

手術を受ける前には、「治療後はどのように状態を確認しますか。症状が残ったり、再び気になったりしたら、どこに相談すればよいですか」と聞いておくと、治療後の相談先も分かります。

費用と仕事の予定も、治療を選ぶ材料です

治療法の名前だけでなく、片足か両足か、気になるこぶへの処置をどうするか、初診や検査・術後の診察に何回通う見込みかも確認しておきましょう。費用は治療内容や自己負担割合によって変わるため、「説明された費用には、どこまで含まれていますか」と聞くと、予定を立てやすくなります。

レーザーや高周波の治療後は歩いて帰宅でき、家事や仕事、普段の歩行など、激しい運動を伴わない日常生活は基本的に手術後から行えます。ただし、治療する範囲や仕事の内容、足の状態によって調整が必要なこともあります。

立ち続ける時間が長い、重い物を運ぶ、通勤に時間がかかるなど、仕事内容も具体的に伝えていただければと思います。旅行や運動の予定がある場合も、治療日を決める前に相談しておくとよいでしょう。

治療法ごとの違いや費用、治療当日の時間については、こちらの記事で全体像をまとめています。方法を比べながら考えたい方は、あわせてご覧ください。

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下肢静脈瘤の治療の全体像を専門の医師が解説。レーザー、高周波、グルー、硬化療法、弾性ストッキングなど治療法の違いと選び方、エコー検査や受診先の選び方、術後の注意点や費用の目安まで医師がわかりやすく解説。

迷っている段階でも、説明を聞いてから考えられます

手術で後悔しないためには、難しい医学知識を覚えておくよりも、自分が気になっていることと、治療で変わる見込みを確かめることが大切だと思います。診察では、次のことから聞いてみてもよいでしょう。

  • 今の私の状態は、治療を考えた方がよいのでしょうか。経過を見る選択もありますか。
  • どの症状や血管に、どの程度の改善が期待できますか。
  • 今回はどこを治療し、残った症状やこぶはどう考えますか。
  • 術後の過ごし方、通院、費用は、私の仕事や予定に合っていますか。

聞きたいことを全部まとめてから受診する必要はありません。「手術を勧められたけれど迷っている」「痛みが心配」「まだ受けるか決めていない」と、そのままお話しいただいて構いません。

説明を聞いても迷いが残る場合は、一度持ち帰って考えたり、別の医師に意見を聞いたりすることもできます。最初に受けた診断や説明を否定するということではなく、ご自身が納得して選ぶための方法です。

当院でも、足の状態を確認し、治療が必要かどうかからご相談いただけます。初診の流れ、検査や費用、予約方法は、こちらにまとめています。

初めて受診される方へ
パレスクリニックの下肢静脈瘤専門外来を初めて受診する方へ。診察・超音波検査の流れ、紹介状、費用、アクセスをご案内します。手術を前提とせず、治療の必要性から確認します。

参考文献・出典

[1]De Maeseneer MG, et al. Editor’s Choice – European Society for Vascular Surgery (ESVS) 2022 Clinical Practice Guidelines on the Management of Chronic Venous Disease of the Lower Limbs. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2022;63(2):184–267. doi:10.1016/j.ejvs.2021.12.024. 原文

[2]Gloviczki P, et al. The 2023 Society for Vascular Surgery, American Venous Forum, and American Vein and Lymphatic Society clinical practice guidelines for the management of varicose veins of the lower extremities. Part II. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2024;12(1):101670. doi:10.1016/j.jvsv.2023.08.011. 原文

この記事を書いた人
春山興右

このブログでは、日々の診療の中で感じたことや、患者さんから実際によくいただく質問などをもとに書き始めました。
教科書的な内容はもちろんですが、本には書かれていない、現場で診療を続けていて初めてわかる知恵や皆さんが知りたいと感じることを、素朴に、わかりやすくお伝えしていけたらと思っています。

静脈瘤の診療は、国内外で取り組んできた医療ボランティア活動と並んで、私にとっては大切なライフワークであり、生きがいのような存在です。
ところどころ熱が入りすぎてしまったり、至らない点も多いかと思いますが、どうか温かい目でご覧いただけたら嬉しいです。

資格は、脈管専門医・指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医、皮膚科専門医、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターなどです(治療者兼当事者であり、毎日弾性ストッキングを履いています)。
よろしくお願いしますm(_ _)m

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