陰部や足の付け根の血管がふくらむのは静脈瘤?相談先と妊娠・産後の考え方

陰部・足の付け根の静脈瘤について、相談先と妊娠・産後の考え方を伝えるアイキャッチ 下肢静脈瘤かもと思ったら

「陰部に血管のようなふくらみがある」
「足の付け根や太ももの裏に、曲がりくねった血管が見える」

ふくらはぎなら静脈瘤を思い浮かべても、このような場所では、何科に相談したらよいか迷うこともあると思います。

静脈瘤は、陰部や足の付け根、太ももの裏にもできることがあります。ただし、血管が見える場所だけでは、原因も治療法も決まりません。陰部の腫れやしこりが、すべて静脈瘤というわけでもありません。

この記事では、女性の陰部周辺や足に見られる静脈瘤について説明します。相談先、妊娠・産後の経過、検査で確認することを、順に整理してみたいと思います。

陰部と太ももの裏の血管は、同じ静脈瘤なのですか?

太ももの内側・裏側の静脈瘤を表した説明用のAI生成画像
説明用イメージ

女性の陰部周辺やそこから発生している静脈瘤を、陰部静脈瘤と呼んでいます。足の付け根や太ももの裏には、足の代表的な静脈とは別の経路から血液が流れ込み、静脈瘤ができることもあります。

付け根に近い太もも内側の静脈瘤を表した説明用のAI生成画像
説明用イメージ

これらがつながっている場合もありますが、太ももの裏に血管が見えるだけで、陰部静脈瘤と判断することはできません。[1]

子宮の周りには、血液を心臓へ戻す静脈が網のように広がっています。これらは腟の周りや外陰部の静脈ともつながっています。つまり、外から見える陰部の血管だけで、静脈のつながりが終わっているわけではないんですね。[4]

下の図は、骨盤内と陰部・太もも裏の静脈のつながりを示した模式図です。

子宮周辺の骨盤内静脈と、陰部・臀部・太もも裏の静脈のつながりを示す解剖模式図

骨盤側で静脈の逆流が起こると、陰部へつながる経路を通じて外陰部周辺の血管がふくらむことがあります。この陰部周辺の静脈は、足の付け根や太ももの内側・裏側の静脈ともつながっています。[4]

もう一つ、お尻を経由する経路もあります。骨盤の側方にある出口を通る静脈と、お尻・太もも裏の静脈とのつながりを通じて、逆流が太もも裏へ伝わる場合があります。そのため、太ももの裏に見える静脈瘤でも、陰部周辺を経由するものと、お尻側を経由するものがあります。[5][6]

ただし、陰部や太もも裏の静脈瘤が、すべて骨盤の中からの逆流でできるわけではありません。足側の静脈からの逆流が関係する場合もあります。見えている血管の場所だけで原因を決めず、どの静脈につながり、どちらから逆流しているのかを確認することが大切かと思います。[3]

何科に相談すればよいのでしょうか?

症状について医師に相談する様子のイメージ

陰部の腫れやしこりが気になり、血管なのか分からない場合は、婦人科が相談先の一つになります。妊娠中であれば、まず産婦人科の主治医にお話しいただくのがよいかと思います。

一方、陰部や足の付け根、太ももに血管が浮き出ている場合は、静脈瘤を診療する血管外科や静脈瘤の専門外来も相談先になります。

ご自身で病名を決めてから相談する必要はありません。「ここがふくらんでいる」「この時間に重く感じる」という、気になっていることが相談の出発点になります。

妊娠中にできた場合、出産後はどうなりますか?

妊娠中の女性が座って脚を気にしている様子

妊娠をきっかけに、陰部や足の血管が目立つことがあります。妊娠中は、通常、静脈瘤への処置よりも、圧迫などで症状を和らげながら経過を見る方法が中心です。

陰部の症状には、ふくらはぎ用の着圧ソックスだけで同じように対応できるとは限りません。症状の場所に合う圧迫方法を、産婦人科の主治医と相談しながら考えます。

出産後に血管が目立ちにくくなることもあるため、妊娠中に見えた血管を、そのまますべて治療するわけではありません。出産後の変化を見ながら、残る症状や血管については検討することがあります。[3]

妊娠中の足のむくみや弾性ストッキングについては、別の記事で詳しくまとめています。足全体の症状も気になる方は、あわせて参考にしてみてください。

診察では、血管のつながりと症状を確認します

脚の血管を超音波で確認する検査のイメージ
脚の血管を超音波で確認する検査のイメージ

一般に、診察では症状の場所や経過を伺い、超音波検査で血管のつながりや血液の流れを確認します。見えている血管だけでは、どこから血液が流れ込んでいるかは分かりません。[1]

下腹部の痛みが続く場合などには、婦人科の病気も含めて、骨盤内を調べる必要があるかを考えます。[2]

私の診療では、硬化療法で対応できることが多いです

脚の症状について医師と相談する様子のイメージ

私が診療している陰部静脈瘤では、治療が必要な場合、硬化療法で対応できることがほとんどです。

硬化療法は、静脈瘤の中に薬を注射して治療する方法です。血管の状態を確認したうえで、治療の必要性や方法を考えます。[1]

硬化療法について具体的に知りたい方へ、治療の流れや色素沈着などの注意点を別の記事にまとめています。

陰部や足の付け根の血管は、相談先に迷いやすいテーマかと思います。まずは、静脈瘤なのか、どこからの血流が関係しているのかを確かめ、その方に合う対応を考えることになります。血管が見えることと、処置が必要なことは、分けて考えてよいと思います。

本記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

足の静脈瘤の治療全体について知りたい方には、各治療の違いや費用、受診の考え方をまとめた記事もあります。


出典

[1] SVS・AVF・AVLS 2023 Part II:1.4.2、1.5.5

[2] 日本静脈学会国際委員会訳・患者向け文書:PDF p6「骨盤内静脈障害」

[3] ESVS 2022:7.2、7.4、8.2.2

[4] Gavrilov 2017:Vulvar varicosities: diagnosis, treatment, and prevention

[5] Meissner et al. 2021:AVLS International Working Group report(骨盤外への静脈交通)

[6] Barros et al. 2024:A Comprehensive Ultrasound Approach to Lower Limb Varicose Veins and Abdominal-Pelvic Connections

この記事を書いた人
春山興右

このブログでは、日々の診療の中で感じたことや、患者さんから実際によくいただく質問などをもとに書き始めました。
教科書的な内容はもちろんですが、本には書かれていない、現場で診療を続けていて初めてわかる知恵や皆さんが知りたいと感じることを、素朴に、わかりやすくお伝えしていけたらと思っています。

静脈瘤の診療は、国内外で取り組んできた医療ボランティア活動と並んで、私にとっては大切なライフワークであり、生きがいのような存在です。
ところどころ熱が入りすぎてしまったり、至らない点も多いかと思いますが、どうか温かい目でご覧いただけたら嬉しいです。

資格は、脈管専門医・指導医、下肢静脈瘤血管内焼灼術 実施医・指導医、皮膚科専門医、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターなどです(治療者兼当事者であり、毎日弾性ストッキングを履いています)。
よろしくお願いしますm(_ _)m

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